Psycho le Cému presents 姫路シラサギROCK FES 2026
2026年3月28日(土)29日(日) アクリエひめじ大ホール
DAY1 出演:Psycho le Cému / 氣志團 / PENICILLIN / lynch. / キズ
DAY2 出演:Psycho le Cému / Plastic Tree / NIGHTMARE / 0.1gの誤算 / ENVii GABRIELLA
「桜の咲く頃に会いましょう」
昨年5月に初開催された『姫路シラサギROCK FES』で再会を約束したとおり、桜が咲き誇る3月28、29日に、姫路アクリエ大ホールにて、『姫路シラサギROCK FES 2026』が行われた。主催者であるPsycho le Cémuをはじめ、個性豊かな充実したステージと姫路を思う気持ちにあふれた、熱く温かい二日間の模様をお届けする。
Psycho le Cémuと言えば、ロックバンドの枠にとどまることなくさまざまなパフォーマンスを見せることでも知られた存在だが、そんな彼らが主催するフェスのオープニングを飾るのは、彼らのお芝居。神の国、姫路に集った神々(Psycho le Cémuメンバー)が口にするのは、白鷺城の異名を持つ世界文化遺産の姫路城について。そう、このフェスのネーミングはもちろん姫路城にちなんでいるのだ。
DAISHIの力強い開幕宣言から「夢風車」が始まると、「白鷺城下町を~」という歌詞にも、このフェスや姫路という地元への熱い思いを改めて確認する。アウトロで幕が下りてくるのに連れ、楽器陣の姿は見えなくなっていく。と、立ち位置が前過ぎたのか、DAISHIひとりがステージに取り残される結果に。会場は笑いに包まれ、のっけから笑いをとってくるとはさすがと思ったのだが、実は本当にうっかりしていたらしい(笑)。
バイクのエンジン音から始まった氣志團の40分間のステージは、自分たちの個性をぎゅぎゅっと詰め込んだ、果汁100%ジュースのような濃くて美味しい時間だった。「汚れなきクソ野郎ども」では威勢のよい和太鼓が、そして「One Night Carnival」ではPsycho le Cémuの5人が特攻服で登場。MCでは、巨大なプラカードを掲げてチケット購入サイトのQRコードを見せると、この時間に限り撮影OKとして、デビュー25周年記念の全国ツアーを宣伝するなど、一瞬たりとも飽きさせないどころか、目も耳も大忙しにさせるワクワクの時間が続いた。
さらに、Psycho le Cémuとはデビュー前からの中で影響を受けたと語りつつ、彼らが『氣志團万博』を主催している経験から、その大変さを理解したうえで応援したいと語る綾小路翔からは、これぞ漢気とでも呼びたい生き様が伝わってくるようだった。そんな真っ直ぐな姿勢は、自分たちの表現にも体現され、隅々まで徹底されたプロフェッショナルなステージになっているのだろう。それはパフォーマンスだけでなく、音楽、ロックバンドとしての演奏においてでもだ。楽器陣のサウンドに耳を傾ければ、その研ぎ澄まされたカッコよさを堪能できるのだから。40分よりももっとずっと楽しませてもらったような、満足度の高いステージだった。
単純にふたつに分けることが許されるなら、氣志團が陽キャであるのに対し、こちらは陰キャと言ってもいいかもしれない。続くは、キズの登場。ステージに現れるメンバーを観客が拍手で迎え入れたが、張り詰めるような緊張感が会場全体を支配していく。ピアノの調べから、来夢の歌声が重なって始まった「鬼」。自在に強弱をつけた歌声は、会場を圧倒するように響き渡る。物理的にも印象的にも仄暗く、重苦しい空気が漂っていた。そんな閉塞感さえ漂っていた空間に、変化を生じさせたのは「黒い雨」。曲の展開に連れてステージに光が差すと、まるで救いがもたらされたかのように感じられた。
後半は畳みかけるように、ハードでアグレッシブなナンバーを投下。「声を聴かせてくれ」「悔い残すなよ」と、荒々しく言葉を投げつけ、彼ららしいやり方で観客とコミュニケーションをとっていく。「R/E/D/」では、吐き捨てるような歌声とラップに続き、観客に声を求めると、声をあげるという、人間にとって原初的な行動が解放感をもたらしてくれるからか、会場全体に血が通っていったような気がした。終始、特異な存在感を放っていたが、最後にこぼれた笑顔からは、このフェスを楽しんだことがしっかりと伝わって来た。
続くPENICILLINまでの3バンドは、昨年からの連続出演組。出演を快諾してくれるバンドが多いのは、昨年が大成功だった証でもあるだろう。Psycho le Cémuの大先輩でもあるPENICILLINは、ステージに姿を現した佇まいから、演奏はもちろんMCまで、何から何まで余裕たっぷりで、その姿勢がとにかくカッコよかった。特に千聖のプレイひとつひとつや何気ない仕草には、思わず目を奪われた。そんな大人っぽい魅力とは裏腹に、HAKUEIは無邪気に共演バンドの名前をいじった天然モード全開のMCを発動。そのギャップもまた、彼らの魅力なのかも。
昨年リリースされた「阿修羅 青年期」をはじめ新旧の楽曲、さまざまな曲調を織り交ぜたセットリストには、もちろん「ロマンス」も。いわずと知れた名曲に、会場中が沸き立つ。最後「FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE」ではseek(Psycho le Cému)も飛び出し、派手なステージングとコーラスで、PENICILLINとは異なる色を添えてみせた。きっちりと隙のない空気を保ちつつ、MCでそれを緩めるなど、ベテランらしい巧みなライヴ展開で、自然体でキャリアを見せつけた彼ら。今年、結成33周年となるが、シーンの先頭を担う存在として、これからも突き進んでいってほしい。
『姫路シラサギROCK FES』初登場となるlynch.。緊張感をたたえた物々しいSEに対し熱い手拍子が発生、メンバーが姿を現すと熱狂的な歓声が沸き起こり、熱いライヴが始まることを予感させる。シンプルながら黒づくめの衣装を身に包んだ5人の存在感は、ただ立っているだけでさすがの迫力だ。「GALLOWS」から幕を開けると、メロディアスな歌とシャウトを巧みに織り交ぜたヴォーカリゼーションと、冷徹なまでに正確無比なプレイから繰り出されるサウンドといった、彼らならではの美しさをじっくりと味わわせてくれた。
20年ほど前からお世話になっていたという姫路に帰ってきて、大きな会場でライヴができる歓びを口にする葉月。最近の傾向として、姫路がツアーに組み込まれることは少なくなっているかもしれないが、Psycho le Cémuをはじめ個性豊かなバンドを輩出してきた姫路という土地に特別な感情を抱いているバンドマンは少なくないはずだ。そこでライヴができるという意味でも、このフェスの果たす役割は大きい。AYA(Psycho le Cému)を加えて「MIRRORS」をプレイした後は、リリース後に初めて演奏したのが姫路だったという「ADORE」で締めくくったことからも、関係性の長いPsycho le Cémuに対する、lynch.からのリスペクトがおおいに感じられるライヴとなった。最後に満足げな笑顔を見せた葉月。久しぶりの姫路のライヴを思い切り楽しんだ様子だった。
一日目のトリを飾るのは、もちろんPsycho le Cému。最高指揮官YURAサマがナーガ(蛇神)の毒におかされ、神々の世界が危機に瀕しているシーンのお芝居から「BLADE DANCE」でライヴがスタート。5人のダンスにDAISHIのラップと、Psycho le Cémuらしい幅の広さは、次の「シャクティシャクティアスティ」でさらに広がる。エキゾチックなサウンドですっかり異国ムードになったところで一転、「お前たちに贈ります」と、デビュー曲「愛の唄」から、彼らの魅力のひとつである歌を真っ直ぐに聴かせる曲を続けていく。なかでも「FANTASIA〜恋の幻想曲〜」は、ここ数年のライヴで耳にしたなかでもピカ一の出来栄えと言ってもいいほどで、ぐっと心を打った実感があった。
曲に浸り、歌に酔いしれた会場へ、「かかってこい!」とseekが吠えたところで後半戦。ギアを入れ直して突き進み、「ノスフェラトゥ」では葉月(lynch.)が加わる。カラフルなPsycho le Cémuのメンバーに対し、黒一点とも言いたい存在が光った。「Murderer・Death・Kill」では、seekがステージから降りると、通路を駆け回り、観客と絡み、からだ全体でフェスを盛り上げ、味わい尽くしていた。殺伐とするほどの荒々しい空気を、コロナ禍を乗り越え、彼らが再び歩み始めたときに生まれた大切な楽曲「アカツキ」が包み込んでいく。
最後に届けられたのは、昨年『姫路シラサギROCK FES』を開催するにあたり、特別な思いを込めてつくり上げられた「シラサギ」。その曲が、昨年同様、seekの母校である姫路南・海稜高等学校のコーラス部のメンバーとともに丁寧に届けられた。さらに今年は、そのステージに姫路市のイメージキャラクターである「しろまるひめ」も登場。真っ白で真ん丸の可愛いルックス(頭上には姫路城も!)と動きでしっかり存在をアピールし、さらに最後には氣志團の綾小路翔の姿も。伸びやかなメロディがさわやかなコーラスとともに会場を満たし、心温まる感動的なフィナーレで、充実した一日目を締めくくった。
翌29日も、まずはPsycho le Cémuのお芝居から。続く「夢風車」では見様見真似でダンスを踊るPsycho le Cémuファン以外の観客も多く、出演者によって客席の雰囲気が変わるのを実感した。そこへトップバッターを務めたのは、0.1gの誤算。キャリア豊富なほかの出演バンドの中では、若手と言ってもいいだろう。そんな違いを味方につけた緑川裕宇のライヴ運びが見事で、DAISHI(Psycho le Cému)を迎えた「絶望メンブレガール」では先輩に容赦なく、「2ステップって知ってる?」「やってみろ、50歳!」と言い放ち、MCでNIGHTMAREのセットリストについて触れたかと思うと、バンギャの観客に、自分もヴィジュアル系を知っていると猛アピール。ハチャメチャな一方、きっちり準備してきたのだろうと真面目ささえうかがえるだけに、その人柄には好感しかない。
「ここは高田馬場AREAだ」と叫んで始まった「2008年高田馬場AREA」では、緑川がステージを降りると、まさに広いホールを小さなライヴハウスに変えてしまおうとする。その姿勢は最後までとどまらず、「21gの感傷」でついに2階席へ。しかも通路にとどまらず、客席の間までも傍若無人に通り抜け、その思い切りのよさ(おそらくはきちんと計画していたのだろうけれど)には驚かされた。最後「有害メンヘラドール」では、広い会場一面に土下座ヘドバンが繰り広げられ、強引なまでに自分たちの空間に仕立て上げ、堂々と自分たちの存在を知らしめた。
続くENVii GABRIELLAは、音楽をメインとしたオネェの総合エンターテイメントとして、YouTubeをはじめ、ライヴ活動を展開している。二日間のフェスにおいて、唯一バンドではない出演者だが、昨年の『姫路シラサギROCK FES』でも、バンギャの皆さんにその魅力はおおいに刺さったはず。転換中のサウンドチェックから軽妙なトークで会場を沸かせ、期待感を高めたところで、4つ打ちのダンスサウンドでスタート。「豪華ネェサン」が始まったかと思うと、「ちょっと待った!」と音楽を止め、「こんなノリじゃない」と名詞代わりのハッピーな楽曲を止め、攻めた曲で仕切り直し。気づいたらエンガブの世界に引き込まれていて、なんだか楽しそうとウキウキしてしまう。
楽しさや面白さだけではなく、伸びやかで艶のある歌声や、ピンヒールで繰り広げられるキレキレのダンスといった、エンターテインメントとしてのクオリティも素晴らしい。さらに、4月8日にリリースの「私はオバさんになってる」を、Lida、YURAサマ(Psycho le Cému)を迎えて披露。これは森高千里の「私がオバさんになっても」へのオマージュでありつつ、“オバさん”という言葉を誉め言葉としてつくった歌。若いことに価値がおかれがちな社会なだけに、こういったポジティブなメッセージを投げかける点も、ENVii GABRIELLAの大きな魅力だと思う。キラキラと光り輝く世界に、たくさんのパワーを受け取った。
眩しい光が少しずつ薄闇に沈んでいくかのように感じられたのは、次の出演バンドがPlastic Treeだから。そんな独特の色が彼らにはある。「イロゴト」が始まった途端、有村竜太朗のどこか危なげで儚げな声を耳にし、改めてその唯一無二の個性を味わった。その繊細さと、切り裂くようなギターと飾り気も無駄もないベースとの絶妙なバランスが、Plastic Treeの個性と魅力をつくり上げているのだろう。「ただいま」と久しぶりの姫路でのライヴを喜び、招いてくれたPsycho le Cémuへのお礼を口にする竜太朗。
「サイレントノイズ」では、曲の入りを間違える珍しいシーンがあったが、それまでもがロックバンド然としたカッコよさに映るのは、まるで焦りが感じられない佇まいと、表現することに対して地に足がついているからではないだろうか。続く「マイム」では、seek(Psycho le Cému)が登場。なんと言っても彼のステージネームは、Plastic Treeが1997年にリリースしたアルバム『Hide and Seek』からつけたもの。そんな特別なバンドと地元で共にステージに立てたことは、最上の喜びだったはず。静から動へ、メンバーも観客も会場の空気までもが変化し、最後は「メランコリック」。感情があふれて、零れ落ちるような声で歌い上げていた竜太朗は、「イベント、楽しんでってね」と優しい声をふわふわと残して行った。
SEが鳴り、NIGHTMAREの5人がステージに姿を現すと、ひと際大きな歓声が起こった。それもそのはず、5人の衣装は真っ赤な特攻服。思いがけない姿にファンのテンションが上がるのも当然だ。そんななか「BOYS BE SUSPICIOUS」でライヴはスタート。観客を激しく煽るYOMIを筆頭に、どのメンバーも悠然とステージに立ち、堂々とした姿を見せつけるよう。昨年25周年を迎え、11月9日には日本武道館でのライヴを成功におさめたキャリアと実力は本物だ。「仙台貨物ではありません」と始めたMCでは、去年はスケジュールの都合で出演できず、ようやく『姫路シラサギROCK FES』に出演できたと喜びを語った。
「the WORLD」「アルミナ」「レゾンデートル」と、アニメのタイアップで広く知られた曲を立て続けに投下。これで盛り上がらないはずはない。数々のヒット曲を持っているのは、もちろん第一線で活躍してきた証だが、それ以上に演奏やステージング、見せ方など、どこをとっても完成度が高く、その実力の確かさを感じた。「惰性ブギー」では、特攻服姿のLida(Psycho le Cému)が参加し、お立ち台で咲人と並んでプレイする貴重な姿も。実は、姫路でのライヴは長いバンド活動のなかでも初めてだとか。こういったことが、姫路でフェスを開催する意義のひとつになるに違いない。
二日間にわたったフェスの最後は、もちろんPsycho le Cémuのライヴで締めくくられる。地球に迫っている隕石アクリエを、会場に集まる人たちのパワーではねのけたという昨年のストーリーから、地球に落ちた隕石の破片が生んだ憎悪がナーガ(蛇神)に力を与え、最高指揮官YURAサマはその毒におかされているという。つまりここで、一日目のお芝居とつながるわけだ。そんなナレーションから、「想い出歩記」でライヴはスタート。過去を振り返る穏やかな調べが、いきなり5人のメンバー紹介とソロ回しへ。そんな展開から、「インドラの矢」「妄想グラフィティー」と突っ走っていく。
ここで、次期最高指揮官であるDAISHI、Lida、AYA、seekの四人の神様が、ナーガと戦おうとするお芝居が展開されるが、この物語がどうなるのか、ナーガを倒すことはできるのか、ナーガの毒におかされたYURAサマは助かるのか、まだまだ謎は続いていくようだ。そして、この神様たちの世界観を投影している楽曲「シャクティシャクティアスティ」。ダンスの振り付けをしたENVii GABRIELLAのHIDEKiSMとKamusも登場、華麗なダンスを披露した。なかなか複雑な振りではあるが、初見の観客も含め大勢が踊ろうとしているのも印象的だった。その後、seekのおなじみ「かかってこい!」のMCからは、ひたすら激しく盛り上げていく。「LOVE IS DEAD」で、YOMI(NIGHTMARE)が登場。DAISHIと並んで歌う姿は、背格好が近いせいもあるのか、兄弟かユニットかそんな雰囲気が漂う。同時に、YOMIの歌声の存在感を改めて感じられるシーンでもあった。
そしてDAISHIが静かに語り始める。結成して26年、彼らにはかなえられていない夢があるという。あと少しで手が届きそうだった武道館で、みんなに最高の景色を見せたい。というのが、現在彼らが追い求めている夢だ。武道館を目指すバンドは多くいるだろうが、Psycho le Cémuはその目前まで一度はたどり着いたという点が大きく異なっている。だからこそ彼らが夢をつかもうとする意志は固い。そんな想いを「君がいる世界」に託して、夢を一緒にかなえていくファンに贈ってくれた。
第二回目となるフェスの最後を飾るのは、「シラサギ」。このフェスのテーマソングであり、Psycho le Cémuの故郷への思いを詰め込んだ楽曲だ。昨年、前日に続いて登場したコーラス部のメンバーも少しずつ慣れてきたのか、その場を楽しんでいる様子が微笑ましく、愛らしい「しろまるひめ」と共に、ステージ全体からハッピーな空気が漂い、観客も自然に笑顔がこぼれたことだろう。姫路から始まったバンド人生の思い出といまも続いている夢、そしてその先の明るい未来と、美しいパノラマが広がり、Psycho le Cémuの明るい前途を確信できたような気がする。
『姫路シラサギROCK FES 2026』を開催するにあたっては、人知れないさまざまな苦労があったに違いない。それでもPsycho le Cémuは挑戦を続けている。その先に、きっと日本武道館という大きなステージが待っていることだろう。彼らには、たくさんのファンと、この二日間に出演したアーティスト仲間たちがいる。そんな仲間たちと一緒に彼らがつくり上げた夢のような時間を振り返りつつ、姫路を後にした。新幹線のホームから、姫路城が見えていた。











































