高い技術を背景に、お金をかけて緻密にふざけるのがエンタメ
うん、未だに好きじゃないですよ(笑)。いやもちろん、嫌いではないけども、仕事にするなら、人生で2番目くらいに好きなものがいいと思うんですよ。愛が濃すぎると見えなくなるものがあるから、ちょっと離れて。例えば東京での動員が1000人だったとして、それって友達と親戚の数でしょう? “表現”を名乗るんだったら、最低でも1000人オーバーを目指さなきゃいけない。演劇が大好きだと「いや、俺たちのやってることは面白いから動員が少なくてもいいのだ」ってなるところを、「1000人超えないことには誰にも何も伝わってないのと同じ」って目線が持てるのはやっぱり、いちばん好きではないからだと思います。
今いちばんお金をかけてるのは音楽ですね。データベースを構築している時間が楽しいし、最近、故郷の松山に念願のロック・バー「エピタフ」もオープンしましたし。まあもっと言えば、いちばん好きなのはドラクエなんだけどね(笑)。ドラクエは私の人生です。
もしかしたら、もう芝居は観ないかもね。今だって、観に行くと最初の15分くらいは「終わって楽屋に行った時に何を言おうかな」って考えるから真剣に観るけど、大体ネタが拾えたと思ったらお休みタイムに入ったりしますから(笑)。「観たよ」っていうアリバイ証明を作って、楽屋で役者と話して縁をつなげることが私の仕事なんです。
『髑髏城の七人』は、1年2か月公演をして55万人の方に観ていただきましたけど、大手新聞社に劇評はひとつも出ませんでしたからね。でも私は別に、その状況を変えたいと思っているわけではないんですよ。評論家の先生方が、エンタメ性の高い演劇は演劇ではないとおっしゃるなら、ああそうですかと言うしかない(笑)。ただ、案外高度なことをやってるんですよ、それにはお金がかかるし、そのお金を集めるためにはそれなりに大変なこともありますよっていう、事実は事実としてちゃんと発信したいなと。
それと、芸術性を追求したいから商業的にはしたくない、でもお金は必要だから国から助成金はもらうという団体に対しては、「税金だって分かってるのか?」と言いたくなりますね。新感線も助成金をもらっていた時期はあるけど、3年ほどで自分たちでやっていけるようになって卒業しました。だって、誰に頼まれたわけでもなく、やりたくてやってるんですから。
「とにかく、それ税金ですよ」って、それは本当に100万回言いたいですね(笑)。
いやいや、そんなことは全く。だって、私のようになるにはまず、幼なじみに売れる劇作家がいなきゃいけないでしょ? そんな人いないから、何の参考にもならない(笑)。私が演劇プロデューサーになれたのは、相当な運と縁に恵まれたからだと思ってます。この本を書いたのはあくまで自分のためで、覚えているうちに書いておきたかったから。もちろん結果として、面白く読めたと言ってもらえたら嬉しいけど、面白くなかったと言われても別に気にしないですね。だって俺、自分に向けて書いたんだからって(笑)。
うーん…ま、「それそれ! 新感線はやっぱりそれやってくれないと」っていうやつですよ。これを聞いて思い浮かべるものは人それぞれでしょうけど、今はそれくらいで。きちっとしたテクニックを背景に、お金をかけて、緻密にふざける。何にせよ、そういう贅沢なエンターテインメントにはするつもりですから、楽しみにしていてください。
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