兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第2回 [2月の巻]

コラム | 2018.03.02 18:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、観たライブすべてひとことレポする連載の第2回、2018年2月編です。
苗場、広島、福岡と、東京圏以外で観る機会の多い月でした。ではどうぞ。

2月4日(日) 鶴 vs フラワーカンパニーズ @下北沢CLUB Que

『フラカン24年目の上京記念日!&祝鶴15周年』というタイトルの対バン。3月10日赤坂BLITZのツアーファイナルを控えているフラカンは、名古屋から上京してきた日である2月4日に必ず記念日ライブをやっていて、今年はCLUB Queで鶴と対バンという形になった、とのこと。
3月31日赤坂BLITZ・4月7日大阪心斎橋BIGCATで15周年記念ワンマンを控えている鶴は、CLUB Queからオファーがあったので受けた、とのこと。秋野温曰く、フラカンとは昔地方で対バン一度やったきりで、またやりたくて各地のライブハウスとかに「フラカン呼ぶ時、鶴も呼んでください」と声をかけていた、そしたら声をかけていなかったCLUB Queから話があったそうです。
秋野もグレートマエカワも「前からまた一緒にやりたかった」「やっと実現した」みたいなことを言って、今日のこの対バンを喜んでいたが、鈴木圭介は「でも鶴、リハスタが一緒で、しょっちゅう会うんだよね。だから全然新鮮味がない」と、まったく言う必要のないMCをしておられました。
先攻は鶴、後攻はフラカン、それぞれ1時間くらいずつ。どちらもシンプルでストレートでギミックなし、剥き身のバンド・サウンドで勝負するような、とてもいいライブでした。
鶴は「本音の本音」、フラカンは「ライトを消して走れ」と、懐かしい曲もやってくれた。

2月6日(火) 鈴木実貴子ズ @新代田FEVER

という、名古屋のバンドを観に行った。4バンド出る中の2つ目だった。ボーカルとアコースティック・ギターの鈴木実貴子とドラムのズ(とMCで名乗っていた。ギャグかと思ったが、あとで公式サイトのブログを見たら本当だった)の2ピース・バンド。
強烈だった。日々自分を苛む疑問や煩悶や逡巡や鬱屈などなどを、言葉が100%ヒアリングできる唱法ではっきりくっきりでっかく聴き手に投げつける、そんな歌が並んでいく。「固唾を飲んで聴く」というのが近い感じ。
竹原ピストル、MOROHA、ハルカトミユキ、初期SIONなどを連想した。音楽的には全然違うが(歌ものだし)、言葉のめったやたらな鋭さはそれらのレベルなのだと思う。また観たい。
「30になっても40になってもこんな気持ちのままなのかな」みたいな内容の歌詞の曲があった、ということは20代なのでしょう、見た目も若そうだったし。「50近くになってもそのままですよ」と聴きながら思った、ということは、歌の世界に完全に巻き込まれていたのでしょう。

2月7日(水) 松任谷由実 @苗場プリンスホテル ブリザーリュウム

ずるい。自分たちはおカネ払って必死にチケットを取ってるのに、関係者招待で行きやがって。というようなことを友人知人に言われることがある。その気持ちもわかるが、でも、じゃああなたもそういう仕事すればいいじゃん。と、シンプルに片付けることにしているのだが、この日ばかりは「はい、そのとおりです! すみません! 私なんぞがすみません!」という気持ちになりました。
松任谷由実、今年で38年目になる『SURF&SNOW』苗場プリンスホテル、終了後にレーベルが発信するニュースレポの依頼が。毎年2週間くらいの開催、よっぽどのコアファンしかチケット入手不可能なこのライブ。
ユーミンのライブなんて、代々木第一体育館とかの大会場でしか観たことないわけで、え、俺? マジで? いいんですか?
と思いましたが、いいとおっしゃるので行って来ました。観ました。
至福とはまさにこのこと、と思いました。
基本的にこういうオフィシャルレポって、記名なしでOK、文章を抜粋とか編集とかされてもOK、という前提なのですが、エンタメステーションの記事、そのままアップしてくれているので貼っておきます。
https://entertainmentstation.jp/news/182031

2月8日(木) 石塚英彦プレゼンツ『まいう~ロックフェス』 @表参道GROUND

石塚英彦が毎年誕生日(2月6日)の時期に行っているライブ・イベント。に、なんで私が行ったのかというと、フラワーカンパニーズのグレートマエカワが、昨年、彼と三宅伸治と一緒に「オーバーオールズ」というバンドを組んで(要はトレードマークがオーバーオールな人同士ってこと)名古屋でライブをやったのですね。それに続いてこの日もオーバーオールズで出ずっぱりだというので、「観に来ない?」と連絡をくれたのでした。
石塚+三宅+グレート、そしてドラムは石ちゃんの息子さん(普通にプロのレベルでした)のオーバーオールズは、基本的に出ずっぱり。プラス、ズクナシの3人がコーラス隊で加わったり、まいうーHORNS(MAKOTO・たなせゆうや)の2人が参加したり。
オープニング・アクトのamourのあと、オーバーオールズ登場。まずメンバーだけでやって(もちろんメインボーカルは石塚英彦、三宅伸治も歌う)そのあとオーバーオールズをバックにゲストの松本明子や山崎まさよしが歌い、飛び入りゲストでウルフルケイスケも登場。という、とても豪華な一夜でした。なお石ちゃん、アンコールでフラカンの「恋をしましょう」を歌いました。

2月9日(金) OBLIVION DUST @赤坂BLITZ

デビュー20周年記念ということで20本のツアーを行った(このバンドがこんな本数のツアーをやるのは初めて)OBLIVION DUST、そのファイナル。
解散したり、再結成したり、でも再結成後も個々の活動が忙しくて(ギターK.A.ZのVAMPSとか)実質的にまた休止状態になる時期があったりしても、ファンが離れない、ツアーをやればこうして集まって来て熱狂する、その理由がよおくわかるライブだった、今回も。
ものすごい出音、おそろしいグルーヴ、とにかく。技術の高さ、楽器の設定、PAの調整とかももちろん重要なんだけど、あきらかにそれだけではどうにもならない、この「すっげえ音だなあ」と唖然とさせられるこの感じ、やはりこのバンドのライブでしか味わえない。で、そんないかつい音の上で自在に歌うKEN LLOYDのボーカルも。

  • 兵庫慎司

    TEXT・PHOTO

    兵庫慎司

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