兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第178回[2025年1月後半・ホルモンや「さるハゲフェス」の松尾スズキや「真心フォーク村」等の7本を観ました]編

コラム | 2025.02.27 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライターである兵庫慎司が、生で観たすべてのライブ(基本的に音楽、時々音楽以外=演劇やプロレスやお笑いなど)のレポを書いて半月に一回アップする連載の、178回目=2025年1月後半編です。7本も見に行って、レポとかの仕事があったのは2本だけ、というところに、なんというか、ちょっと、「そうかあ……」と思います。

1月17日(金)19:00 マキシマム ザ ホルモン @ CLUB CITTA’

わりと突然行われることが決まった印象の、ツアーとかではなく、これ1本のみの『新春ホルモンワンマンライブ“メンカタコテリズン”』。と思ったら、終わって半月ぐらい経ってから、仙台と名古屋も発表された。今回も「楽屋ログインボーナスチャンスゲーム」とか、「ヅラカテゴリー&生還者Tシャツ所持者限定先行リザーブ!!」(当該の人はチケットの先行抽選に申し込みできる)とかの、いろんな企画あり。
フェスやイベントの時とはあきらかに異なる、普段やらないレア曲いっぱいやります!という趣旨のライブであることが、観てわかった。という点でまずうれしいが、もうひとつうれしかったのが、そうやってレア曲をいっぱいやったことがおそらく原因で、ホルモンって進化しているんだなあ、というのがよくわかる内容になっていたこと。どのレア曲にも「今のホルモンがやるとこうなります」という新しさがある。
アレンジし直しているから、経験値によって演奏がうまくなっているから、というのはもちろんあるが、それらだけが理由ではない気がした。楽器を演奏する時、ステージに上がる時の、気構えとか、感覚とか、思想とか自体が、進化しているというか。
ホルモン、フルアルバムは、もう12年近く出していない。そろそろ聴きたいなあと思っていたが、まあ、これはこれでいいのかも。新曲は何曲も出しているわけだし、こうしてちゃんと進化しているわけだし。というようなことまで、観ながら考えたりした。

1月18日(土)16:00 しりあがり寿presents新春!(有)さるハゲロックフェスティバル』 @ 新宿ロフト

毎年この時期に、新宿ロフトの2つのステージを使ってオールナイトで行われている、しりあがり寿プレゼンツのフェスがこれ。『さるハゲフェス』という名称なのは、しりあがり寿の会社が「有限会社さるやまハゲの助」だからです。
だいぶ長いこと続いているし(今年で17回目)、知っている人が何人も出ていたりするのに、なぜか行ったことがない。一度体験してみたい。と思っていたところ、今年は松尾スズキが出演することを知り、「今年だ、今年しかない!」というわけで、チケットを買った。ただ、翌日の予定があって、朝まで観るのは無理、終電で帰宅するスケジュール。
松尾スズキの出番は、23:00から20分間。TEAM紅卍の松尾スズキの相方である河井克夫(パーカッション)と、ギター、ベースの3人編成のバンドで、歌とMC(すべてちゃんと台本があるやつ)が、松尾スズキと、ゲスト=猫のホテルの佐藤真弓とツイン。
今年のこのフェスのサブタイトルが、『あなたとわたしの温泉郷』なので、温泉関係の曲を3曲歌った。温泉関係の曲って何。CMソングです、「ハトヤホテル」と「びわ湖温泉 紅葉」と「ホテル三日月」の。
歌詞が書き足されていたり、途中からほぼ違う曲になったり、しまいには曲ですらなくなったりして、もう大笑いだった。プラス、曲間や曲中でのMCというか、セリフのやりとりも、さらに大笑い。行ってよかった、つくづく。こんなの観れる機会、そうそうないし。

1月23日(木)18:30 Hump Back ゲスト:ハルカミライ @ KT Zepp Yokohama

Hump Back、メンバー3人揃って産休→3人揃って無事出産、の期間の1年半の休止を経て、2024年12月18日(水)心斎橋BRONZEワンマンからライブ活動再開、それに続いての関東エリアでの一発目が、この日。『Hump Back presents "第一回超婦手刀" (「チョップチョップ」と読むそうです)〜約束のアイツ編〜』というタイトルで、対バンはハルカミライ。
ハルカミライが、50分で17曲の、怒濤のような勢いのステージをやったあとに、Hump Backが登場。本編15曲、アンコール2曲で、こちらも17曲(尺は1時間半くらい)。その歌いっぷりにも、演奏にも、MCにも表れていたが、もうとにかくライブがやれることがうれしくてたまらない感じ。
Hump Backの場合、バンドが活動休止する時のあらゆる理由の中で、もっともハッピーな類いだったのでは、と思うが、たとえそうであったとしても、バンドでライブをやれないことが、本当につらかったようだ。そうかあ。
2024年の10月13日から12月18日まで、期間限定で各サブスクで配信された新曲「明るい葬式」のほかに、もう1曲新曲をやった。おそらく、3月26日リリースのニューアルバムからの曲。人の親になった己の心情をそのまま歌う、とてもリアルな曲だった。

1月26日(日)18:00 穴井仁吉/百々和宏/ヤマジカズヒデ/クハラカズユキ/細海魚/ゲスト:苣木寛之(THE MODS)@下北沢CLUB Que

ザ・ロッカーズ、ザ・ルースターズ、ザ・ウィラード等に在籍してきたベーシスト、穴井仁吉の66歳を祝うイベント。時々活動しているバンド=モモヤマアナQ(百々和宏/ヤマジカズヒデ/穴井仁吉/クハラカズユキ)に、キーボード細海魚が加わったメンツで、ボーカルは、百々だったり、ヤマジだったり、穴井が歌ったり、というフォーメーション。
曲は、ロックンロールやブルースのスタンダード・ナンバー、ザ・ロッカーズ、ザ・ルースターズ、サンハウスもしくはシーナ&ロケッツあるいはザ・ロケッツ=要は鮎川誠関係のバンドの曲。どうでしょう。楽しくないわけないでしょ、そんなの。
特にうれしかったし、驚いたのが、ザ・ルースターズの「Venus」をやったこと。6人編成の時期の、『φ』というアルバムの1曲目である。この時期のザ・ルースターズ、ファンの間では賛否両論あったが、僕は大好きで、何度も何度も聴いたアルバムなのです。
なんでこの曲を選んだんだろう。初期の「恋をしようよ」等をやったのはわかるし、穴井仁吉が弾いているラスト・アルバム『FOUR PIECES』の曲をやったとしても、それもわかるけど(やらなかったけど)。不思議だがうれしい。ヤマジカズヒデが歌いました。
そしてもうひとつのサプライズは、後半にゲストとして登場し、「C’mon Everybody」と「ビールス・カプセル」を歌ったTHE MODSの苣木寛之が、「なんの曲でもやるよ、THE MODSの曲でもいいよ、と言ったら、これをリクエストされました」と、次に歌ったのが「TWO PUNKS」だったこと。「うわあ!」と声が出た、思わず。

1月28日(火)19:00 小山田壮平Band、おとぼけビ~バ~ @ Spotify O-WEST

小山田壮平プレゼンツのイベント『ダンニャバード』で、おとぼけビ~バ~を迎えて行われた。このDI:GA ONLINEにレポを書きました。
小山田壮平の企画イベントで、おとぼけビ~バ~が大激走。異色と必然が生み出した「ダンニャバード」な空間

1月30日(木)19:00 真心フォーク村 @めぐろパーシモンホール

真心ブラザーズがゲストを迎えて行うアコースティック・イベントで、今回はアイナ・ジ・エンド、曽我部恵一、仲野太賀が出演。
リアルサウンドにレポを書きました。
真心ブラザーズと素晴らしき歌 アイナ・ジ・エンド、曽我部恵一、仲野太賀と作った極上の『フォーク村』

1月31日(金)18:30 次世代pre.NEXT GENERATION LIVE 2025 @ 新宿LOFT

Creepy Nuts、ハンブレッダーズ、羊文学などが所属するソニー・ミュージック内のマネージメント、株式会社次世代の新人プレゼンイベント。ただし、関係者オンリーではなく、一般にもチケットを売っているやつ。
ロフトのステージ2つを交互に使って、Black Leech、板歯目、Chim Chap、Kanna、メとメ、インナージャーニー、カラコルムの山々、Apesの8アクトが出演した。
全部観たが、特に強烈だったのが、板歯目。ライブ観たの、たぶん2023年の4月以来だと思うが(この時です≫ 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第132回[2023年4月は数が多いので3回に分けた、その後半編・エレファントカシマシのツアーファイナルやARABAKIなどの5本を観ました]編)、その後ベースが脱退して、サポートになっていた。で、そのサポートの彼まで含めて、もう魅力の塊、でたらめにかっこいい。歌詞、メロディ、声の質、ギターのフレージング、ドラムとベース、弱いところが一個もない。
その後、公式YouTubeを観たりして追っているが、この日の3週間前のライブ映像では、別のベーシストが弾いていた。そっちは女性で、その子もいい。なんなんだろう、このバンド。
あと、メとメという名古屋の3ピース・バンド。知人が好きだそうで、おすすめされていたので観たら、これもとてもよかった。奇をてらったところは何もないし、ただ普通にやっているだけなんだろうけど、ソングライティング力に何かがある感じ。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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