後攻は「BIGMAMA」、堂々とステージに登場!
そして、後攻はBIGMAMA。堂々とステージに登場する姿に貫禄さえ感じさせる中、Bucket Banquet Bis(Dr)のカウントで、安井英人(Ba)の野太いベースから始まった1曲目は「現文|虎視眈々と」。研ぎ澄まされた感覚、感情の全てを解き放つように、勢いよく始まったOPナンバーで観客の心をガッチリ掴むと、柿沼広也(Gt/Vo)のギターと東出真緒(Vn/Key/Cho)のバイオリンが激しく美しいアンサンブルで魅せた「CPX 」、ギターイントロに大きな歓声が起き、掛け声と手拍子で一体感が生まれた「秘密」と、容赦ない攻めのセトリでど頭からブチアゲる。
「数学|RULER」の壮大な歌と演奏でしっかり聴かせると、「どうか最後まで、決められたルールの中で。あなたが一番楽しいと思う方法でお付き合い下さい」と短いMCを挟んだ金井の弾き語りで、「物理 | Time is like a Jet coaster」が始まる。ジェットコースターのような疾走感ある楽曲に、フロアの熱はふたたび急上昇。「最後の一口」、「地理 | Nowhere Now here」と続いて気付いたことは、ここまで半分以上の曲がアルバム『Tokyo Emotional Gakuen』の収録曲であることと、それらがこれまでのライブ定番曲に全く引けを取らないライブチューンにブラッシュアップされてることだった。
僕の大好きな曲で、俄然テンション上がった「Strawberry Feels」に続く「倫理|ロジカルモンスター」は、イントロのアレンジや照明を効果的に使った演出に虚をつかれて、なんの曲が始まったか分からなかったほどだったり。リリースツアーから追試の対バンツアー、さらに留年のワンマンツアーと徹底的に復習を繰り返すことで、確実に自分の血肉となった新曲たちがBIGMAMAをさらに強靭にしていることは間違いないし。この新曲たちが今後、出演するフェスやイベントでも強力な武器として大活躍することだろう。
ライブも後半となり、「ダイヤモンドリング(2035/09/02)」から、柿沼がボーカルを取る「歴史 | History Maker」と続き、「17 (until the day I die)」へ。ライブ定番曲も混じえながら、新曲でクライマックスを作る構成に興奮していると、<変えられるのは自分の一手 色褪せぬ青春に宣戦布告を>のフレーズにハッとする。武道館という大きな目標を掲げてモチベーションも高く、バンドの状態は抜群。“青春”と呼ぶ、バンドにとって何度目かの黄金時代をひた走っているBIGMAMA。しかし、その状況を作ったのは、他ならぬ自分たち自身。『COMPLETE TOUR』から、『Tokyo Emotional Gakuen』の制作を経てツアーへ。休む間もなく次の一手を打ち続け、色褪せぬ青春に宣戦布告し続ることで、自ら状況を変えているのだ。
ラストは「荒狂曲“シンセカイ”」で最高潮の盛り上がりを生むと、「まだライブハウスでしかやってない新曲なんですけどいいですか?」と、新曲「化学 | Utsu2」を披露。え? まだ追加教科があったの?? そんなのいつの間に作ってたの!? と驚いたBIGMAMAの最新型を見せると、「この続きは母の日で!」と金井が告げ、なきごととの対バンは終演。『Tokyo Emotional Gakuen』に転入してくれた可愛い後輩に、容赦ないライブを叩き付けた彼らに終演後、僕が伝えた感想は「……大人げない!」だった。だって、あまりにも凄まじいライブだったんだもん(笑)。
ライブ終わったらど~する?
そして会場である渋谷QUATTROを出ると、「ライブ終わったらど~する?」と渋谷駅とは反対側の“奥渋谷”と呼ばれる方面へ歩き始めた僕。ひとり飲みにはちょうど良い、雰囲気のある小さなお店が並ぶこのエリアを歩き、ライブの余韻に浸りながら、カウンターで一杯やろうと選んだお店は「あばらや別館」。週末で賑わっているお店に「一人いいですか?」とふらり入って、まずは瓶ビールと“名物”と書かれたどて煮を注文。キャッシュオンシステムで、注文と同時にテーブルに置かれたザルにお金を入れて、お店の人に渡して注文を待つシステムも明朗かつ楽しい。
若い女の子に仕事帰りらしき人たち、外国人と雑多なお客さんが集まるお店のカウンタでひとり乾杯して。旨味がギュッと詰まった濃厚などて煮をいただきながら、美味しくビールを飲んで。ちょっと小腹が空いたな、なんてハムカツも頼んだりして、今日のライブを振り返る俺。すっかりおじさんになって、終電に乗ってあなたに会いに行くなんて、キュンキュンする恋とは無縁だけど。なきごと聴いてやっぱり女の子って可愛いなと思って、隣で呑んでるカップルに若さを羨んでみたり。俺は自分を変える一手を打って、色褪せない青春に宣戦布告出来てるのか? と思ってみたり。答えのない自問自答を繰り返しながら、一人呑みする俺。
ビールを飲み干して注文したのは、りんご+レモン+はちみつを漬け込んだブランデーを割った、お店名物の“あばらやハイボール”。夜22時とハイボール。死にたくなるほど辛いこともなければ、会えなくて寂しい君はいないけど。生きてることを正当化したくて、「色々あるけど、これでいいのだ」と自己肯定するために、今夜もハイボールを呑む。そんな夜、なきごとやBIGMAMAの音楽が寄り添ってくれていることが本当に心強いし、嬉しい。
そしてあばらやさんを出て、駅に向かう俺。結局、終電まで呑んじゃって、思いがけず楽しい夜になったのだが。それはまた別のお話――。