兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第111回[2022年7月後半・『イノマーロックフェスティバル』、神はサイコロを振らない、電気グルーヴ、THE SPELLBOUND、空想委員会、ピーズ、の6本を観ました]編

コラム | 2022.08.19 19:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、半月の間に観たすべてのライブの短いレポを書いてアップしていく連載の111回目、2022年7月後半編です。なお、普段は、配信で観たライブも書くルールにしているのですが、7月29日(金)〜31日(日)のフジロック・フェスティバルのYouTubeでの配信は、自宅にいたり外出したりしながら、観たり、観なかったり、また観たり、という状態だったので、レポの範疇外にしました。

7月16日(土)12:00 『イノマーロックフェスティバル』@東京ガーデンシアター

 ガンで闘病の末に亡くなって2年半が経つオナニーマシーンのイノマー、その意志を受け継ぐ一夜限りのロック・フェスティバル、として開催されたのがこのイベント。銀杏BOYZ、ピーズ、氣志團、Hump Back、ガガガSP、四星球、空気階段、サンボマスター、江頭2:50、以上のイノマーと親交のあったアーティストたちが出演。で、トリがオナニーマシーン。
 トップの銀杏BOYZは、峯田和伸が「イノマーさん、観ててな、最後まで」と言ってから、弾き語りで1曲目の「光」を歌い始めた。ピーズはオナニーマシーンの「恋する童貞」を、氣志團は「オナニーマシーンのテーマ」をカバーした。オナニーマシーンとのスプリットアルバム『放課後の性春』(2003年)でメジャーデビューしたサンボマスターは、初めてオナマシと対バンした時にラストに演奏したという「そのぬくもりに用がある」をプレイした。空気階段はガチで1本コントをやって、それがすばらしかった。と、それぞれのアクトが、それぞれのやりかたで、亡きイノマーへ思いを捧げた、楽しくも感動的なイベントだったのだが。
 最後にとんでもないオチが待っていた。トリのオナニーマシーンは、イノマー(ボーカル&ベース)以外のふたり=ギターのオノチンとドラムのガンガンによるライブで、まずそのふたりだけで2曲、江頭2:50が加わって1曲、ピーズのはること大木温之がベース&銀杏BOYZ峯田和伸がボーカルで1曲、最後に出演者全員で1曲──という段取りだったようなのだが。
 オノチン、泥酔状態。ステージに出て来ても、床に寝転がったりウロウロしたりして、全然演奏が始まらないわ、なんとか2曲終わって江頭2:50が登場しても、次の曲に行こうとしなくて、エガちゃんに「俺につっこませるな!」と叫ばれるわ、はる&峯田が出て来ても、同じく曲に入らないわ……という、史上稀に見るグダグダぷり。しかも、この、でっかい東京ガーデンシアターのステージで。
 出演者たち、困り果てていたし、中には「あ、マジで怒ってる」とわかる人までいた。怒るよそりゃ。まあ、涙涙で感動に包まれて終わってたまるか! という意味では、オナニーマシーンらしかったのかもしれません。MCのフジジュンさん、お疲れさまでした(私、イノマーさんとは面識ないままだったけど、フジジュンさんは知人です)。

7月17日(日)17:00 神はサイコロを振らない@LINE CUBE SHIBUYA

 『神はサイコロを振らないLive Tour 2022「事象の地平線」』のファイナル、LINE CUBE SHIBUYA2デイズの2日目。このDI:GA ONLINEにレポを書きました。ぜひ。
神はサイコロを振らない 最大規模のツアー終幕!デビュー2周年記念日にLINE CUBE SHIBUYAで感謝を伝える

7月19日(火)19:00 電気グルーヴ@リキッドルーム

 コロナ禍前は……いや、より正確に言うと、ピエール瀧の逮捕前は、毎年この時期に行われることが恒例になっていた、リキッドルームでのワンマン。今年は、電気グルーヴのファンクラブ「DENKI GROOVE CUSTOMER CLUB」、通称DGCCの会員限定ライブとしての開催になった。MCで石野卓球が「リキッドは4年ぶり、パクられたから」と言うと、それを受けてピエール瀧、「執行猶予も明けまして」。みんな大拍手。
 この時期の電気のリキッド、夏フェスシーズンの直前だけど、そのプレライブとして行うのではなく、フェスでは決してやらないような曲をずらっと並べてくれるのが、毎回のうれしい恒例。今年はこんなセットリストでした。
1いちご娘はひとりっ子 2プエルトリコのひとりっ子 3東京チンギスハーン 4ズーディザイア 5ポケットカウボーイ 6電気グルーヴ25周年の歌(駅前で先に待っとるばい) 7新幹線 8愛のクライネメロディー 9スコーピオン 10Fake It! 11スマイルレス スマイル 12HOMEBASE(※新曲、映画『野球部に花束を』主題歌) 13ガリガリ君 14The Big Shirts 15少年ヤング 16猫夏 17ユーフォリック/UFOholic EN(18)ママケーキ
 なお、アンコールは、ギターの吉田聡が「燃える!バルセロナ」のイントロを弾き、卓球&瀧が「スペシャルゲスト!」とさんざんオーディエンスをあおり、「日出郎―!」と呼び込んだら、まりん(砂原良徳)が登場して「ママケーキ」を歌い始める、オーディエンス一同、大びっくり&大喜び、というものでした。まりん、電気の25周年の時の『塗糞祭』(2014年11月8日、Zepp Tokyo)にも出ていたけど、リキッドルームでの電気のライブでこれをやったのは、2008年4月1日以来だと思う。

7月20日(水)19:00 THE SPELLBOUND@Zepp Haneda

 2月23日にリリースされたファースト・アルバム『THE SPELLBOUND』を携えての、初めてのツアー4本(仙台・大阪・名古屋・東京)のファイナル。アルバム収録の11曲の中から「MUSIC」以外の10曲と、BOOM BOOM SATELLITESの「FOGBOUND」と「LAYYOUR HANDS ON ME」、THE NOVEMBERSの「HALRELUJA」、以上の13曲がプレイされた。
 約1時間45分。ステージから放たれる音と光を浴びて恍惚としていたら、あっという間に終わってしまった。このバンドのライブ、1年前のフジロックで初めて観て以降、何度か体験してきたが、耳とか脳だけじゃなくて、身体全体が音と光で洗われているような感覚に陥る、いつも。
 ざっくり言うと、クラブ・ミュージックの範疇にも入る音楽性だけど、酒飲んでハイになって踊りたい、というよりも、シラフでちゃんと対峙したい気持ちになる。最初に観たフジロックは、アルコール類NGの年だったが、たぶんそれが理由ではないと思う。
次に観れるのは8月19日(金)の幕張メッセ『SONICMANIA』。

7月29 日(金)18:30 空想委員会@下北沢シャングリラ

 デビュー10周年ツアーであり、再始動後初のアルバムのリリース・ツアーでもある『世渡り下手の伝え方ツアー』。昨年12月28日(火)東京・渋谷GUILTYを皮切りに、7カ月かけて15本回ったファイナルがこの日。ここ下北沢シャングリラは、2019年4月1日に、空想委員会が活動休止ツアーの最終公演を行った場所で(当時は下北沢ガーデンだった)、そのライブの感触がとても良かったので、メンバーに再始動しようと言われた時も「ああ、いいよ」と言えた、と、三浦隆一は話していた。このインタビューです。
遂に全開で動き始めた三浦隆一!空想委員会の活動休止から現在までを、たっぷりと語る!
 当然ながらまだお客さんはマスク必須&声出し禁止だが、そのことが気にならないくらい、終始、いい……「ヴァイブス」という言葉を自分が使うのは恥ずかしいが、でもそんな、今ここにいるだけでニコニコしてしまうような空気だった、この日のシャングリラ。二度のアンコールを含め全22曲、ニューアルバムからの曲は5曲ぐらいで、歴代の代表曲を中心にしたセットリストにしていたのも、正解だったと思う。
 後半のMCで三浦は、「空想委員会は日本武道館を目指します」と宣言した。で、来年、今回と同じ場所で同じ本数のツアーを組んでいることと、それを成功させるために各地で多数のフリーライブを行うことを、オーディエンスに告げた。いずれも、詳細はまだ発表になっていないが、楽しみ。
 あと、一回目のアンコールで歌われた、ニューアルバム収録の「will」という曲。「夜が来るのが怖くて 残り何回なのかな/朝が来るのが嬉しくて 残り何回なのかな」って、すげえ歌詞だなあ、と思う。こういうところが侮れない、三浦隆一。

7月31日(日)18:00 ピーズ@新宿紅布

 6月8日(日)豊洲PITの結成35周年ライブが終わった後も、対バンやワンマンでライブが途切れない新体制ピーズ(対バンに誘われたり、ハコに頼まれたりするんだと思う)、この日は新宿紅布でワンマン。紅布の19周年お祝い月間の初日として企画されたライブである。
 で。曲数、この日はぴったり30曲だったので、やや抑えめだったと言えましょう。最近のピーズ、ワンマンとなると、35曲とか38曲とか、普通にやるバンドになっているので。
 あと、(これまでも何度も書いたけど)最近のピーズ、ライブ本編はボリュームを抑えめにして丁寧に演奏する、そして最後の何曲かだけ、爆音にしてプレイする、というのも恒例になっている。この日は、アンコールに応えて再登場して、「フォーリン」「プリリヤン」「体にやさしいパンク」の3曲をプレイした後の、「ニューマシン」「Yeah」「生きのばし」が、爆音モードでした。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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