20周年のときにthe pillowsは日本武道館公演に臨み、チケットは発売してわずか10分でソールドアウトとなった。あれから10年。最新作『REBROADCAST』をリリースした時期、山中さわおは取材で「大きな花火を打ち上げるという意味においては、30周年が最後。だからリアルに終わる前にちゃんとバンド人生の物語とそれに携わった人への感謝を大きい声で歌っておきたい」と語った。そして30周年のアニバーサリーとして、2019年10月17日(木)、横浜アリーナのステージに立つ。
【第5回】
2009年:「the pillows 20th Anniversary LATE BLOOMER SERIES 06“LOSTMAN GO TO BUDOKAN”」
2019年:「the pillows 30th Anniversary Thank you,my highlight vol.5“LOSTMAN GO TO YOKOHAMA ARENA”」
「横浜アリーナは久しぶりに大きな勝負に出る、緊張してもその緊張に打ち勝つライブをやらなければならない」
──2009年に結成20周年として初めて日本武道館のステージに立ちましたけど、まず武道館を9月16日にやるということがどんな経緯で決まったのか、自分たちはそれをどう受け止めて、実際にやってみてどうだったのかをおきかせいただけますか。
山中さわお(vo,g)2009年か。その2年前の2007年にマネージャーが『20周年に武道館やりましょう』と提案してきたんです。メンバーは『何を言ってるのかな?頭オカシイのかな?』と思ったけどね(笑)。今って武道館、誰でもやってるじゃん。だから2007年のオレたちの戸惑いはわかってもらえないんだけど、当時は大スターがやるところだったの、あそこは。オレたちは別にテレビにも出てないし、フェスはちょいちょい呼ばれてたけど、「ARABAKI ROCK FEST.」くらいだよね、フェスのトリとかやったのは。オレたちは普段ツアーをZeppでやっているくらいで武道館は自分には一生関係のないところだと思っていたから。でもそのときにマネージャーが『いや、ここでやらなければいつやるんですか。ここから2年後までに絶対僕らでそこまで持っていきます!』って心強い、強気な台詞を言ったんです。彼とは25年くらい付き合ってるんだけどそんな強気は2回くらいしかない(笑)。普段はだいたい弱気な『無理でしょう!』とか、オレのテンションだだ下がりになることしか言わないんだけど(笑)。で、他人事だったかな、なんか。『知らねえよ、入んねえよ、人なんて。借金抱えんじゃないの?』みたいな、そんなことばっか言ってたかな、メンバーは(笑)。『恥かきたくないなー』みたいな。
──だけど実際に蓋を開けてみたら即日完売だったじゃないですか(笑)
山中さわおそうだね、10分で完売。
──ディスクガレージさんがぴあに『売り切れちゃったのでステージが見えるギリギリまで売ります』っておっしゃってきたくらいに(笑)。
山中さわおびっくりしました。だいたい自分がなにかアクションを起こすときに、ほとんどのことが“自分の期待よりも下”でやってきたバンドだから。だけど自分の期待を上回った出来事っていうのがこれまでに4回あって。1回目はトリビュート・アルバム『シンクロナイズド・ロッカーズ』を出してもらえたこと。もう1回は全箇所ソールドアウトのアメリカ・ツアー。そして3つ目は武道館が売り切れた。しかも余裕で売り切れたっていう。ちなみに4つ目は今年、映画「王様になれ」が完成したっていうこと。自分の期待を遥かに上回ることっていうのは、なかなか少ないけど、武道館はびっくりした。まぁ嬉しかったですよ。
良いライブっていうのは大きい会場か小さい会場かなんてどうでもよくて、ライブハウスだって良いライブはできる。だけどやはり数の論理で自分の存在証明をしなければならないときっていうのがあって、それは音楽業界も音楽を知らない人が多いし、音楽ファンが音楽業界を作っている訳ではないという悲しい側面がある。“武道館即完した”っていうと急にその数の論理でthe pillowsを認める人が出てくる。一部メディアもいつもロビーで頭下げていたのがエレベーターまで見送りに来たからね、武道館先輩のおかげで(笑)。だから1回くらいは数の論理で業界人の横っ面張ってやりたい気持ちはあったので、“やってやったぞ!”っていうのはあったかな。でもステージはあとから思うと緊張していて、余裕がない面もあった。自分の小者っぷりが人に見られるのはとっても嫌なので、基本的には“普段はやっぱりライブハウスがいいな”とは思ったけど、でも勝負に出なきゃなんないときがあるので。
──もう少し横浜アリーナの話を伺いたいんですけど。マネージャーさんからの話のときは無関係だとさえ思った武道館という大きな勝負に出て、完売という形で結果を出したthe pillowsが、今回30周年で横浜アリーナを選択したその経緯を詳しく教えて下さい。
山中さわおオレは『アニバーサリーを張り切ってやるなら張り切ってやろうぜ。やらないんだったらやらないよ』っていうぐらいの感じだった。で、事務所が『やりましょうよ』っていうから、じゃあ武道館じゃダメだなと思ったかな。武道館より大きいところでやりたいと思った。やっぱり武道館はチケットが10分で売り切れたので、観たくても観られなかった人が存在するんですよ。今回それは嫌だなって思った。前回は売り切れて嬉しかったけど、今回は売り切れない会場でやる、と。自分の都合で来なかった人はまぁどうでもいいとして、ほんとに来る情熱があるのに、物理的にソールドアウトで来られないという人はゼロにしたいっていう気持ちがあります。だからとっても大きい会場にしたい。とにかく武道館より大きいところでやりたい、なぜならば現役感のあるロック・バンドとしての40周年はないかなと思ったので、今の自分たちの肉体的コンディションを考えたときに、全然不真面目な集団なので、全然ケアもしないし、酒も辞めないし。アニバーサリーの派手な花火を打ち上げるのは今回が最後だろうと思ったので、観たい人は全員観られるように。チケットが売り切れてないのに“行っとけばよかったな”っていうヤツのことは知らん。でもとにかく売り切れないところでやりたいっていう、そういうちょっと“謎の美学”がありました(笑)。
──確かに武道館は行きたくても行けない人が大量に出てしまった。その10年後にさわおさんが落とし前をつけようとしてくれるところが“BUSTERSとの10年越しの約束”というか、素敵だなと思いました。横浜アリーナでthe pillowsが積み上げてきた魅力の集大成をしっかりと目に焼き付けたいと思います。
山中さわお横浜アリーナはまた久しぶりに大きな勝負に出る。余裕でステージに出るんじゃなくて緊張してもその緊張に打ち勝つライブをやらなければならない。ずっとダラダラしてたら人生メリハリがないから。“今やらなくていつやるんだ”っていう話ですよ、30周年は。
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