DracoVirgo 2nd LIVE TOUR
2018年7月29日(日) duo MUSIC EXCHANGE
2018年2月26日 渋谷WWWを皮切りに、待望のファーストコンタクトとなるライヴツアーをスタートさせ、待ち焦がれた多くのファンたちを唸らせたDracoVirgo(ドラコヴァーゴ)。
そんな彼らが、7月29日、東京の渋谷に在るduo MUSIC EXCHANGEで2ndツアーの幕を開けた。
天井から無国籍なランタンが吊るされ、DracoVirgoを象徴するイラストが施された幻想世界と現実世界が交差する異空間に誘い込むとても不思議なその場所は、ライヴ会場というよりは、“ここにしかない特別な居場所”である。
客席の後ろから、MAAKIIIのソロプロジェクト作『兎に角、ジェネシス!!!!!』のLP盤を持った案内人は、オーディエンスをDracoVirgoの世界に誘うが如く、フロアからステージに上がると、オーガンジーに包まれたSASSY、mACKAz、MAAKIIIのベールを取り、MAAKIIIが手に持っていたDracoVirgoのLP盤と合せてDJ Massの元へと届けた。
まさしく、この演出はDracoVirgo誕生を意味するものである。
【DracoVirgoは、DJ Massの参加と、mACKAz、SASSYとの奇跡の再会、そして参加により、MAAKIIIがソロプロジェクトとして届けてきた音が劇的進化を遂げたバンドプロジェクトであること】
を証明するものなのだ。
切なげなピアノイントロで静かに始まる「清簾なるHeretics」を1曲目にMAAKIIIが声を伸ばした。引き込まれる瞬間。言葉を失うほどに美しい時。mACKAzとSASSYが音を加えると、3人は完全に息を吹き返したように音を奏で、声を張った。迫り来る躍動が満ち溢れる中、オーディエンスは右手を高く掲げながら、その音に身を委ねた。
MAAKIIIが上に羽織っていた黒い着物の様な衣裳を脱ぎ捨て「超感覚的知覚」へと繋げると、さらにライヴは勢いを増していった。
重厚かつ派手なドラミングが魅力のSASSYと、人並みはずれたリズム感とスキルの持ち主でもあるmACKAzのアタック感の強いベースプレイの応酬は圧巻。そんな轟音の中でも打ち消されることのないパワーを持つMAAKIIIの歌唱も実に素晴しい。
印象的だったのは、軽やかに跳ねるサウンド感と、言葉遊びが特徴的な「DASH!脱出!奪取!」で魅せたMAAKIIIのキュートかつ、脱力感のある艶っぽいボーカルセンス。様々な声色を操り、いくつもの表情があるサウンドの中で歌い躍るMAAKIIIの存在感は絶対的であり、MAAKIIIだからこその華やかさを生み出せる、唯一無二なエンターテインメントを感じさせた。
ディープなサウンド感がリードする「kIRA◯kIRA」では、声質まで変化させ、ダークさと抜けのある爽快なサビを見事に歌いこなしていたMAAKIII。そんなMAAKIIIを突き動かすのは、mACKAzとSASSYが放つ息の合ったサウンドである。そう思わせるのは、阿吽の呼吸を感じさせる3人のフィット感だろう。
この日のライヴは2回のINSTRUMENTAL(インスト)コーナーが設けられ、ライヴの構成に動きを付けていたのだが、そこで魅せたmACKAzとSASSYの、それぞれのロックルーツを感じさせるパワフルなプレイにも、オーディエンスは多いに盛り上がっていた。MAAKIIIという存在がステージからはけた状態で行われるINSTRUMENTALコーナーでは、まったく違った景色が挟み込まれることから、ライヴのフックにもなっている様にも思えた。
MAAKIIIのオリジナル楽曲では、キュートさが全面に押し出されていたダンス曲「××××」は、見事にDracoVirgoの“顔”というべきリード曲になっていた印象を受けた。一聴したときから、耳に残り、日常生活の中でも、無意識に口ずさんでしまうこの曲の中毒性は、かなり強力である。
ライヴ後半戦で届けられたインダストリアルなスチームパンク「hanaichimonme」では、光と影、陰と陽といった相反する世界を融合させたDracoVirgoの新境地を見せつけた彼ら。“花一匁”という日本的な遊びを歌詞の中に用い、オーディエンスとの掛け合いでライヴを盛り上げていく。ノスタルジックながらも、“ひとりではない”“ひとりにはしない”という聴き手への深いメッセージ性を宿して描かれている歌詞にはMAAKIIIがDracoVirgoを通して伝えていきたい“想い”が込められている気がしてならなかった。
ライヴ終盤には、ラストに向けて「ココニオイデヨ」「いーじゃんっ!」といったサンバ、レゲエテイストが香る夏らしいナンバーで盛り上げ、「SPAAAAAAAAAARK!!!」でオーディエンスと一体になってジャンプし、この日の最後に選んでいたスリリングなハードロックナンバー「阿弥陀の糸」で締めくくったのだった。
“狙い定めた標的のど真ん中 ギラリ研ぎたての矢印が光る 逃げはしないさ 打ち抜かれて 仰け反る”
人生の選択を迫られた瞬間、それがたとえ定めとは異なる選択だとしても、ひたすら前を向いて突進んでいきたい。そんな強い想いを感じさせる「阿弥陀の糸」の歌詞も、まさしく、今、何処にも無い、まだ誰も足を踏み入れたことのない新たな地を突進んでいるDracoVirgoというバンドの人生そのものの強い叫びであったように感じた。
音楽だけではなく、そのサウンドと声が響く空間演出も含め、彼らは、まだそれを何と呼ぶのかも決まっていない、まだこの世の何処にも無いジャンルを“DracoVirgo”という個性にしていくことになるだろう。
そんな彼らに期待したい。