『18年目の再会。』JOY-POPS(村越弘明+土屋公平)35th Anniversary Tourライブレポート【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第15回

ライブレポート | 2018.05.11 20:00

3月に行なわれた村越弘明のデビュー35周年ライブの翌日、ザ・ストリート・スライダーズのデビュー35周年企画として、村越のスライダーズ時代の相棒だった土屋公平との伝説のユニット、JOY-POPSの全国ツアーが突然発表された。

スライダーズファンだった僕ら誰もが、こんな日が来るなんて想像もしていなかった。
村越弘明はソロやユニットやバンドなどでずっと精力的な活動を続けているし、土屋公平も麗蘭やソロや様々なアーティストのギタリストなどで大活躍中だし、そもそもこの「伝説の二人」は18年間もの長い間、一度も二人で一緒に演奏をしていないのだ。
ただ、ここ最近の村越のツインギターによる全国ツアーや、スライダーズ以来のツインギターバンドでのライブツアーなど、何かほんの少しだが「ひょっとしたら、ひょっとするのかも…。」と、ホントわずかだが夢のような予感を感じさせる瞬間があった。
でもやはり「いや、そんな事はありえない。」そう誰もが思っていた。
それが突然、本当に現実になった。しかも単発公演ではなく、いきなり全国ツアーだ。日本中の新旧のファン達が、この目でその「伝説の二人」を目撃するチャンスが18年の時を経て突如やってきたのだ。

ツアー2日目となる渋谷クアトロに僕は行った。
まだどこか半信半疑だった僕は、会場に入ってまずステージを見て確かめたい事が二つあった。ひとつは「椅子がないか」という事と、もうひとつは「譜面台がないか」という事だった。
そんな事どうでもいいと思うだろうが、どうでもよくないのだ。
JOY-POPSは二人のアコースティックギターがメインのユニットだったが、アグレッシブで派手でとにかくカッコよかった。それから幾ら長い年月が流れようとも、この二人には椅子に座ったまま譜面台を見ながらの演奏なんてまだしてほしくないと僕は勝手に思っていた。
ステージを見たら、椅子も譜面台もなく、いくつものギターと二つのマイクスタンドだけが立っていた。
僕はそれを見て「よし」と言った。半信半疑だった気持ちが確信へと変わった。
僕は「イケる」と口に出して言った。

BGMが大きくなり客電が消え、地鳴りのような大歓声の中、二人がステージに現れた。村越弘明と土屋公平。「伝説の二人」が本当にその姿を現した。
客席からの「ハリー!」といういつもの歓声の合間に「蘭丸~!」「公平~!」という歓声が沢山あがる光景を見ているだけで僕はもう泣きそうになっていた。
村越はアコギ、公平はフルアコギターをおもむろに抱え、JOY-POPSでよく披露していたスライダーズナンバーでライブは始まった。
意図的にかどうかはわからないが、村越にはスライダーズ解散以降まだやっていない事がひとつだけあった。それは「コーラスを入れる」という事だった。
この夜、それを待ち望んでいたファンはきっと凄く多かったと思う。公平がサビで村越とハモる第一声が聞こえた瞬間、会場全体が大歓声に包まれ、18年間止まっていた時計が目の前で突然動き出したかのような、何とも言えない感動的な空気に包まれた。
それは2018年の今この現代に、村越と公平が再び僕らの目の前に本当にいるのだという事を実感した瞬間だった。

アコギとフルアコギター編成で、往年のスライダーズナンバーが次々と披露されていく。アコースティックだとその楽曲と歌詞の素晴らしさと、村越の声の凄さが更に際立つ。そしてそこに公平のギターが入ると、不思議な魔法のような化学反応が起きる。やはり「この二人は特別なのだ」という事を改めて再確認させられる。

そして、二人がギターをエレキギターに持ち替え、二人の歪んだギターの音が重なった瞬間、再び会場に大歓声が巻き起こった。スライダーズの最大の魅力とも云われたツインギターマジックサウンドがそこに蘇ったからだ。
スライダーズを「ツインギターがリズムを引っ張ってる不思議なバンド」と評する人がいたが、まさにJOY-POPSはたった二つのギターしか鳴っていないという事が信じられないほど音が分厚く、二つのギターだけでリズミカルにロールしていくのだ。それは懐かしさや思い出に浸ろうとする僕らの足元をすくうかのように、会場全体を強引にうねらせ、超満員の客席を一気に揺れ踊らせ始めた。
これなのだ。やはりこの二人の一番ヤバいとこは、この二人でしか出せないマジックのようなこのロックンロールグルーヴなのだ。

二人の絡み合うギターと村越の歌声と公平のコーラス。そして僕ら往年のスライダーズファンも一度も見た事のなかった二人のMCでの楽しそうなかけあいまであり、夢のような時間が過ぎていった。
もうひとつ、僕が今回のデビュー35周年企画ライブに密かに期待していたのは、スライダーズ以外の曲もぜひ聞きたいという事だった。
せっかく伝説の二人のコンビが奇跡の再会を果たしたのだから、カバーでもソロ曲でもいいから、今の二人が新たに奏でる曲が聞きたかったのだ。
そしたら途中で、村越のソロ曲が二人で演奏され(しかも一番聞きたかった曲だった!)、会場が盛り上がる中で、なんと村越と公平が「それぞれ作ってきた」と言っていきなり新曲を披露したのだ。
その2曲は本当に素晴らしい新曲だった。村越の作ってきた新曲には「新しい風が吹く」「小さな革命が起きる」というような未来に向いた歌詞がいくつも散りばめられていた。公平の新曲は村越と二人でずっとハモって唄い続ける曲で「最高にホットなオンナのコ」というようなロックンロールな歌詞が連発されるすごくカッコいい曲だった。
決してノスタルジーではない。JOY-POPSが長い時を経て突如よみがえり、そしてここから先に更に進化しようとしているという事が、僕が一人のファンとしてもこの日何よりも嬉しかった瞬間だった。

最後までスライダーズの新旧の代表曲からコアな曲まで惜しみなく披露され続け、アンコールをふくめ20曲以上の楽曲が演奏され、この記念すべき夢のようなライブは終了した。長く止まっていた時間や不安を一瞬にして全部ブッ飛ばしてしまった感動的な素晴らしいライブだった。僕は後方の関係者ゾーン近くで見ていたのだが、終わって会場の照明がついて周りを見たら、僕と同世代の有名ミュージシャンや著名人が沢山来ていた。みんな10代の若者のような眼差しになっていた。そこに集まったお客さん達もみんながこの記念すべき奇跡の再会ライブに終わった後も興奮さめやらぬという感じだった。

8月まで続くこのJOY-POPSの全国ツアーだが、当然だがSOLD OUTの続出で、フジロック出演までも決定し、追加公演もいくつか決定した。
まだまだ何が起きるかわからない。

二人の今回の「再会」が「再開」になるのかも知れないと思いながら、僕は今ひとりでドキドキしている。

公演情報

DISK GARAGE公演

35th Anniversary Tour “Wrecking Ball” 追加公演

2018年4月25日(水) 浜松 窓枠
2018年4月28日(土)渋谷 CLUB QUATTRO
2018年5月4日(祝)富山 SUMMER KNIGHT
2018年5月5日(祝) 長野 LIVE HOUSE J
2018年5月12日(土) 新潟 studio NEXS
2018年5月13日(日) 仙台 darwin
2018年5月17日(木) 名古屋 CLUB QUATTRO
2018年5月25日(金) 米子 AZTiC laughs
2018年5月26日(土) 京都 磔磔
2018年5月27日(日) 高松 オリーブホール
2018年6月2日(土) 沖縄 桜坂劇場 ホールB
2018年6月9日(土) 仙台 Rensa [追加公演]
2018年6月10日(日) 福島・いわき THE QUEEN
2018年6月13日(水) 広島 CLUB QUATTRO
2018年6月15日(金) 大分 BRICK BLOCK
2018年6月16日(土)17日(日) 福岡 Gate’s7
2018年6月19日(火) 熊本 ぺいあのPLUS
2018年6月20日(水) 福岡 Gate’s 7 [追加公演]
2018年6月27日(水) 大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2018年6月28日(木) 大阪・心斎橋 BIG CAT [追加公演]
2018年6月29日(金) 三重・松阪 M’AXA
2018年7月6日(金) 札幌 KRAPS HALL
2018年7月8日(日) 青森 Quarter
2018年7月22日(日) ヒューリックホール東京(有楽町) [追加公演]
出演:村越“HARRY”弘明(Vocal & Guitar) / 土屋公平(Guitar & Vocal)

チケット一般発売日:2018年3月24日(土)
※6/28大阪、7/22東京のみ⇒2018年5月26日(土)

FUJI ROCK FESTIVAL’18

2018年7月28日(日) 新潟県湯沢町苗場スキー場

チケット一般発売日:2018年6月2日(土)

オハラ☆ブレイク ‘18夏

2018年8月3日(金)4日(土)5日(日) 猪苗代湖畔 天神浜

チケット一般発売日:2018年5月20日(日)

PROFILE

横山シンスケ

渋谷のイベントライブハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・チーフプロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサーや店長。ライター、司会、外部企画もやってます。自分でも驚いたが、ライブで披露されたスライダーズの曲はほぼ全部歌詞もおぼえてて全部そらで唄えた。

  • 横山シンスケ

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    横山シンスケ

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