センチメンタルな12曲を集めた2ndアルバム『12センチ』から1年ぶりとなるニューアルバム『Rinkle-Rinkle』を完成させた山崎あおい。昨年9月にリリースしたミニアルバム『ピンヒールベイビー』では、“女子から女性へ”という変化と新たなジャンルに挑戦するというテーマに掲げていた彼女。新作は“12か月をテーマにしたラブソング集”となっているが、それはあくまで結果であって、目的ではない。「変なこだわりを捨てて作った」という3rdアルバムは、テーマやコンセプトを設けなかったからこそ、彼女のシンガーソングライターとしての本質的な部分により迫った1枚となったようだ。
──ニューアルバムには新曲が12曲収録されていますが、制作前はどんな作品にしたいと考えてました?
最初は全然何も考えてなかったんですよね。ミニアルバムの制作が忙しかったので、とにかく頑張って曲を作らなくちゃっていう感じで作っていって。ミニアルバムの流れで鍵盤で作ってみることもあったし、中学生の時のように電車の中で作るっていうのもあった。だから、アルバムの全体像を考えるよりも、ひらすら曲を作っていったら、自然とラブソングが多くなっていて。しかも、選んだ後で、たまたま12か月、それぞれの月に当てはまる曲になったって気づいた感じだったんですよね。
──テーマありきじゃないんですね。でも、逆に統一感というか、山崎あおいらしさが出てる感じがしました。全体的に明るい曲調だけどせつない曲が多くて。
そうですね。ちょっと切ないくらいのところに曲が集まった気がしてますね。ものすごく暗い曲でもなく、ものすごく明るい曲でもない。ちょっと切ないくらいの気持ちを歌って残していきたいなっていうのが、自分が音楽をやっている上でのテーマなので、それに沿ったものができたかなと思います。
──リード曲「さくらさくら」も、まさに山崎あおいらしい、王道のバラードになってます。
ちょうど大学を卒業する時期でもあるので、自分の人生を長く見た時のポイントとしても、今の自分の気持ちをそのまんま曲にしたいなと思って。
──今の気持ちというのは?
卒業する友達や好きな人を見送る側の曲になってるんですけど、最近、大人になっていくみんなに置いてかれてるような気がしてて。だからこそ、泣きながら<さよなら>って言っちゃうと本当にさよならになっちゃうので、なかったことにしたいというか(笑)。できるだけ普通の顔をして、また会いたいなっていう気持ちを歌ってます。
──春の曲で終わるアルバムが完成して、何か気づいたことはあります?
タイトルにもつながるんですけど、すごく祈ってる女の子が多いなって思ったんですよね。1曲目の『Before→After』だったら、髪を切って、君が振り向いてくれますようにって祈っているし、野球部の人を歌った『サイレン』では、好きな人の夏がまだ終わりませんようにって願ってる。そういう主人公が多いので、アルバムのタイトルもおまじないっぽく繰り返す感じにして。造語なんですけど、リンクルリンクルって繰り返すことで、幸せになれますようにっていう思いを込めてます。
──そして、ツアーも決定してます。
今回のアルバムには『ナンパボーイ』っていう曲も入ってますけど、ライブで盛り上がる曲を入れようというよりは、ライブで聴きいってもらえるような曲を歌いたいなと思ってたんですね。だから、ツアーもライブハウスっぽい楽しい部分は残しつつ、シンガーソングライターとしての私を見てもらいたいなと思ってて。私が一番誇れる場所である曲づくりの部分、どういう曲を書いているのかが伝わるライブにしたいなと思います。
インタビュー/永堀アツオ