「日本の銀杏好きの集まり」
2017年10月13日(金) 日本武道館
Report/兵庫慎司
Photo/高田梓
峯田和伸、GOING STEADY・銀杏BOYZ合わせて音楽活動スタートから20周年になる今年、2017年の10月13日金曜日に行われた、全キャリア通して初の日本武道館ワンマン『日本の銀杏好きの集まり』。
当然チケットはソールドアウト、舞台両脇斜め後方の席までびっしり埋まっている。ステージ中央ちょっと右寄りにはソファーが置かれ、左のソデにはブランコが設置されている。
開演予定時刻ぴったりに客電が落ち、ライブ会場で収録されてきた銀杏BOYZのファンたちの姿がビジョンに映し出される。彼ら彼女らが銀杏BOYZへの思いや自分のことを次々と語ったあと、岡山健二(Dr./classicus)がひとりでドラムを叩き始める。
続いて加藤綾太(Gt./2)、藤原寛(Ba./AL)、山本幹宗(Gt.)の順で配置につき、思い思いに音を放ち、その爆音の渦の中に峯田が現れて「ハロー、マイ・フレンド!」と四回叫び、「そこにいるんだろう!そこにいるんだろう!そこにいるんだろう!」と三回叫んでから1曲目「エンジェルベイビー」になだれこむ──。
という形で幕を開けたこの日のステージは、本編18曲アンコール3曲で全21曲、3時間4分に及んだ。
GOING STEADY時代からやっている曲。2005年に2枚同時リリースされた銀杏BOYZのファースト・アルバムの曲。それ以降にシングル・リリースされた曲。シングル・リリースのあとセカンド・アルバムに収録された曲。「円光」や「新訳 銀河鉄道の夜」のようにリメイクされた曲。今年出たシングル三部作「エンジェルベイビー」「骨」「恋は永遠」。「骨」のカップリングであるクリープハイプのカバー「二十九、三十」。「BABY BABY」や「人間」や「光」といった、銀杏BOYZにとって重要な指針であり続けている曲──。
という、キャリア全時代からピックアップしたセットリスト、その選曲に、ここ最近峯田がよく口にしている「どまんなかをやりたい」という意志がそのまま表れていた。
2曲やったところで峯田、「今日も日の丸下がってんだべ?こっからは見えないけど」と、いついかなる時も武道館の天井から吊り下げられている日本国旗を意識したあと、「2017年10月13日金曜日、今日だけは銀杏BOYZが、この国を背負って、日本国旗のもと、歌わせてもらいます」と宣言。続く3曲目「若者たち」をマイクをくわえたりしつつ歌い終わったところで、左右のスタンドを見上げた顔がビジョンに大映しになったが、すでに汗とヨダレと鼻水でグッシャグシャだった。
1997年にバンドを始めたこと、その年の11月に高円寺GEARでGOING STEADYとして初ライブをやったこと。それからいろんなことがあって、今日という日を迎えたこと。一回もメジャーに行かず、わがまま放題で好きなことだけやってきて、妥協もしたし悔し涙も流したかもしんねえが、今日という日のためにすべて悔しいことがあったんじゃないかなと、今、思っていること。
4曲でこんなボロボロになっているバンドは他にいないと思う、でも自分は最初からそうだ、ほかのバンドは42.195キロを完走する走り方でやってるけど自分はそうしたくなかった、100メートルを全力疾走する走り方をしたかった、その結果途中でぶっ倒れてまわりに抜かされ、みんながゴールして行く中倒れっぱなしで空を見上げながら、また立ち上がって走ってまた倒れ、いまだにゴールに着いていない、でもこの走り方で42.195キロ走れると思っている。距離なんて関係ねえ、42.195キロを一瞬で俺のものにしてやると思って始めたバンドが銀杏BOYZであること──。
などを、言葉にしていく峯田。「どうかその負けっぷりを見届けてください」と言いかけて、「まだ負けてねえ!空を見てるだけ」と訂正した。今日のチケットはすぐ売り切れたらしいと告げた時は、「大したもんだ、銀杏BOYZ」とポソッと付け足したりもした。
そして、「生まれてきてよかったと思った日はないけど、生きててよかったなと思う日はあって。今日みたいな日です」と、断言した。
6曲目「骨」のイントロでは、「オーイェイェイ!」と、普段はやらないコール&レスポンスを客席に求めた。次の「円光」では大きなシンガロングが武道館を包んだ。歌いながら峯田、何度もマイクを頭にゴツン!と叩きつける。
自分は「幸せになったら銀杏のライブなんて来ないでください」と言ってきた。でも考えてみたら、彼女もいなくて仕事もなくて孤独だっていう悲しさと、仕事があって恋人もいて子供も生まれて幸せなはずなのに、どうしても湧き上がってくるむなしさ、悲しさと、どっちがはたしてきついんでしょうか。今年で40になりますけどまったく満たされないです、多少おカネも入ってきたけど全然満たされない、それは俺が20歳の頃と変わってないからで、俺みたいな人間はこうしてやっていくしかない、だから観に来てください──。
という話から、アメリカのフェス銃撃事件のことに触れ、「I DON’T WANNA DIE FOREVER」を歌う。
「おそらく自分のバンド人生でいちばん数多く歌ってきた」14曲目の「BABY BABY」の前には、「村井くん、アビちゃん、チンくん、浅井くん、斎藤正樹、どうもありがとう」と、やめていったメンバーとマネージャーにお礼を言い、この曲を作った時のことを回想した。そして、曲の途中で歌いながらブランコに乗った。
「新訳 銀河鉄道の夜」を歌う前にも、長いMC。「今年で40になりますけど、生きてきて今年がいちばん楽しかったです」という言葉から、自分にとってターニングポイントになったことが3回ある、という話。
1回目は高校3年の時にクラスメイトからライブで歌ってくれと頼まれて「やる」と即答した時。2回目は高校卒業間近に斎藤正樹とグリーン・デイを観に東京へ行って、帰りに公園のブランコで「俺将来バンドやるわ」と言い、斎藤正樹が「じゃあ俺マネージャーやっからよ」と言った時。そして3回目は、今日。1曲目を歌った瞬間に、あなたたちから「来てくれてありがとう」と言われた気がした、歌えって言われた気がした、自分にとって大きな日になった、たぶん忘れないと思う──。
「味をしめてしまったみたいなので、来年また武道館でやります。すいません、嘘です。こればっかりは俺だけで決められない」。
でも、ウェンブリー・アリーナや国立競技場でもやりたい、来年またCDを作ってライブをやりたい、という言葉に続き、「光」を声の限りに歌う峯田、途中で何度も腹にマイクを突き刺す。
じっと聴いていたフロアもスタンドもはじけるようにジャンプした「NO FUTURE NO CRY」を経て、ライブ全体のエンディング・テーマのような「僕たちは世界を変えることができない」で、叙情的に本編がしめくくられる。
アンコールは峯田ひとりでアコースティック・ギター弾き語りの「人間」でスタート。峯田の声、ライブ前半よりも嗄れている。
続いて、アカペラで一節歌ってから、いや、絶叫してから始まった「ぽあだむ」。そして、峯田が最後の力をふりしぼり、「息も絶え絶え」とはまさにこのことな状態で歌いきった「もしも君が泣くならば」で、全編が終了した。
ビジョンにアップになった、歌い終えた峯田の表情、泣いているように見えた。武道館を包む終演のSEは、RCサクセションの「スローバラード」だった。
お客が熱狂しすぎて危険な状態になり、峯田がクールダウンを呼びかけながら行われた、2001年5月18日のGOING STEADY代々木公園フリー・ライブ『東京初期衝動』。
峯田が全裸になって書類送検された2005年8月7日の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のステージ。
峯田がローションまみれになってフロアに飛び込み、バーカウンターまで到達した渋谷クラブクアトロ(たぶん2007年の12月)。
東日本大震災直後に行った『スメルズ・ライク・ア・ヴァージン・ツアー』、フロアからもステージからもツバが飛び交い、峯田が懸垂の要領で2F席に上がった2011年6月27日の水戸ライトハウス。
それらの、自分が体験してきたライブに比べると、大会場で、客席イスありのこの日本武道館は、もっとも過激さに欠けるステージだったのだろう。峯田、一度もステージを下りて客席に乱入しなかったし。あの峯田がだ。
そんな、おとなしい、「らしくない」とか「牙を抜かれた」という言い方すらできそうなステージが、これまで自分が観た峯田和伸のライブの中で、あきらかに、掛け値なしに、もっともすばらしかった。という事実に、いちばん感動した。
SET LIST
01. エンジェルベイビー
02. まだ見ぬ明日に
03. 若者たち
04. 駆け抜けて性春
05. べろちゅー
06. 骨
07. 円光
08. 二十九、三十
09. 夢で逢えたら
10. ナイトライダー
11. トラッシュ
12. I DON’T WANNA DIE FOREVER
13. 恋は永遠
14. BABY BABY
15. 新訳 銀河鉄道の夜
16. 光
17. NO FUTURE NO CRY
18. 僕たちは世界を変えることができない
EN
19. 人間
20. ぽあだむ
21. もしも君が泣くならば
PRESENT
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