なすお☆ "初ホール” ワンマンライブ2025
2025年11月24日(月振休) 大手町三井ホール
開演前、影アナでなすお☆が観客へとフレンドリーに呼び掛けて声出しの練習などを促すと、そのまま“なすお☆王国”の模様を描いた絵本風のオープニングムービーに突入し、そこから飛び出したように彼女が王様風の衣装でステージへと登場する。ピアノアレンジの「star line」を1コーラスをたおやかに歌い上げると、「死ンデルラ」で一気に雰囲気を変えて会場を沸かした。コール&レスポンスの後は、展開の多いポップソング「シネマティックパレード」へ。楽曲の持つきらびやかな世界をさらに明るく照らすようなボーカルが、会場をあたたかく包んだ。
男の子目線の恋心を歌った「王子様症候群」で観客とともにタオルを回し、キュートかつ頼もしさを感じさせる歌声を響かせた後は、「いままでYouTubeで歌ってきた曲や、この10年で作ってきた大切なオリジナル曲、大好きな音楽をいっぱい届けたいと思います」と高らかに宣言し、衣装チェンジをして2023年に公開した「転生林檎(白雪姫目線替え歌)」を歌唱する。緊迫感のあるミステリアスなボーカルで観客を歌詞の世界に引き込むと、ステージバックのモニターに絵本が映し出され、初期オリジナル曲の「うそつきピエロ」へ。絵本と紙芝居をブレンドしたミュージックビデオの再解釈とも言える演出と、ひたむきな気持ちが伝わる歌声に、観客も優しくペンライトを左右に揺らした。
MCでファンと会話をしながら和気あいあいとした空気を作ると、「学校に行けなくなったときの歌」と前置きをして「せんせい、あのね。」を歌い出す。当時の自分を憑依させるように、幼さと切なさを感じさせる声で歌詞に綴られた心情を生々しく彩った。
幕間映像内の終盤に、彼女の公式キャラクター・なすさんが「この後なすお☆の友達が来るみたい」「あたたかい目でお迎えしてあげてな」と観客に呼び掛けると、ステージにスタンバイしていたとくみくすがエレアコを弾き始める。彼の奏でる幻想的な音色に乗せて衣装チェンジをしたなすお☆が登場し、とくみくすのアコースティックアレンジで「星屑レクイエム」と「ヴィラン」を披露した。やわらかい音色とオクターブユニゾンが響いた前者と、激しいカッティングやがなりを用いたボーカルで迫力を出した後者。両極端の趣の表現で観客の心を揺さぶった。
なすお☆は、2018年にとくみくすと初のコラボ動画を撮影したことを振り返り、「今も仲が良くて音楽活動を続けている仲間は、活動が長くなればなるほど少なくなっていって。だから10周年記念ワンマンの今日は、とっくん(とくみくす)のギターで歌いたかった」と続ける。とくみくすも「うれしい~!」と言葉とギターで喜びをあらわにした。
観客から歌ってほしい曲を募り、その場で披露する「即興リクエストコーナー」ではDa-iCEの「I wonder」、Kanariaの「KING」のサビのカバーを披露し、YouTubeに歌唱動画をアップした楽曲をつないだスペシャルメドレーでとくみくすとのコラボコーナーの締めくくる。カバー曲をベースに、クリスマスソングやASOBI同盟の楽曲、替え歌カバーとバラエティに富んだ内容で観客を楽しませた。
とくみくすがステージから去り、単身残ったなすお☆は最新オリジナル曲「人狼ゲームの歌」、TVアニメのオープニングテーマ「メリーゴーランドタイム」「ハニージェットコースター」とアッパーでパワフルな楽曲をたたみかけて会場を大いに沸かし、観客も全力のコールでそれに応える。終盤では歌いながらサインボールを投げ込み、華々しい空間が広がった。
ラスト1曲の前に、彼女は「あるものを読み上げたい」と話し、10年前の自分に宛てた手紙を取り出す。そこに書かれていたのは、なかなか努力が実を結ばない当時の状況に対する激励の内容だった。「もうちょっとだけ頑張ったらすごいことが起きるよ」「いまはたくさん笑えているし、いまも歌が大好きだし、目の前に大切な人たちがこんなにたくさんいるよ。だからもう少しだけ頑張ってみてほしい。だからわたしももう少しだけ頑張るね」と過去の自分に呼び掛けると、「star line」を歌い出す。歌を続けてきた人間、歌うことを諦めなかった人間の芯の強さが漲る歌声で、歌い終わると同時に拳を掲げたシーンも非常にシンボリックだった。
アンコールを求める観客の「ハニージェットコースター」の合唱に導かれるようにステージに再びなすお☆が登場すると、バックの暗幕が開き、ガラス壁の向こうに東京の夜景が広がる。それを背景にしてコンデンサーマイクの前で歌うという演出で、「115万キロのフィルム(10年後ver.替え歌)」のアコースティックアレンジカバーを届けた。YouTubeのカバー動画と実際のライブステージ、東京という街の3つの要素が合わさった環境は、10周年ならではのプレミアムな光景だった。
「CQCQ」のアコースティックアレンジカバーの後に記念写真撮影に入ると、「はい、チーズ!」の掛け声をきっかけに「はい、チーズ!」のイントロが流れ、なすお☆も「もっともっとみんなの近くで写真撮るよ!」と同曲を歌いながら客席を移動し、ファンたちとともに次々と自撮りをする。ラスサビ前にステージへ戻るとそこでも自撮りを続け、観客と自身の笑顔の写真を次々と収めた。
最後に「この11月24日も、みんなのおかげで特別な1日になりました」「これからもなんてことない日常をみんなと記念日に変えていけたらいいなと思っています」と観客に感謝を告げると、10年間ワンマンライブで歌い続けてきた「キャンバス」でこの日に幕を下ろす。背景のスクリーンには過去10年間の映像や写真が次々と映し出され、彼女自身も10年間を大切に辿りながら抱きしめるように歌い、壮大なラストを作り出した。なすお☆がYouTubeで発信してきた10年間の歴史を詰め込んだ初のホールワンマン。2026年の彼女は、新たなフェーズに突入した王国へと我々を招き入れてくれることだろう。
SET LIST
01. star line〜piano ver.〜
02. 死ンデルラ
03. シネマティックパレード
04. 王子様症候群
05. 転生林檎
06. うそつきピエロ
07. せんせい、あのね。
08. 星屑レクイエム
09. ヴィラン
10. スペシャルメドレー
11. 人狼ゲームの歌
12. メリーゴーランドタイム
13. ハニージェットコースター
14. star line
ENCORE
01. 115万キロのフィルム(10年後ver.替え歌)
02. CQCQ
03. はい、チーズ!
04. キャンバス



















