MUD FRIENDS 2000~2025
2025年11月13日(木)Zepp DiverCity(TOKYO)
出演者 : MUCC / Psycho le Cému / Waive
97年結成のMUCCと99年結成のPsycho le Cému。そして、00年結成のWaive。同じ時代を共に闘ってきた戦友であり、しのぎを削りあってきた盟友であり、苦楽を共にして泥水もすすってきた泥友である3組が、四半世紀の時を経て再び邂逅。『MUD FRIENDS 2000~2025』がZepp Diver Cityにて、華々しく開催された。
【邂逅:思いがけず出会うこと、巡り合うこと】という言葉をあえて使ったのは、この時代にこの3組が同じステージに揃うことが決して当たり前じゃないから。2018年には『MUD FRIENDS 2000~2018』と名付けたツアーを開催し、強い絆を確かめ合った3組だったが、その時のWaiveはあくまでも“解散中”。
その後、2023年に再結成を発表したWaiveは、それと同時に2026年1月4日の日本武道館公演をもって解散することを発表。そして、武道館での解散ライブを目前に控えた現在。「Waiveを送り出す最後のイベントを『MUD FRIENDS』にしたい」という想いがあって、このイベントの開催を決定したとseek(Psycho le Cému)が語っていたが。
Waiveだけでなく、決して順風満帆な時ばかりでなかったMUCCやPsycho le Cémuが、あれから25年経った現在も現役バリバリで活動してることも含めて。この状況、このタイミングでなければ実現しなかったであろうこの夜は、まさに邂逅であり奇跡。7年ぶりに実現した、そんな奇跡の夜をレポートする。
開演時間になり客電が落ちると、仄暗いステージにメンバーが登場。真紅のバックライトに照らされて、メンバーのシルエットだけが映し出される中、ミヤ(Gt)の掻き鳴らすギターに大きな歓声が上がり。OPナンバーとなる「アカ」で宴の幕を開けたのはMUCC。深淵に突き落とすようなサウンドに逹瑯(Vo)の悲痛な歌声が映えるこの曲で観客の心をガッチリ掴むと、間髪入れず始まった曲は「スイミン」。
けたたましいドラムで始まり、YUKKE(Ba)のベースが重低音を響かせると、ミヤのエッジィなギターが斬りつける。逹瑯のボーカルも感情豊かに響き、仄暗いままのステージで、歌と演奏のみで楽曲世界を構築していった序盤戦。初期楽曲が続き、00年頃の気持ちや空気感を再現するようにも見えるが、確かな表現力と強靭なバンドサウンドで鳴らされる楽曲の重厚さや説得力はあの頃と明らかに異なる。
「今日は懐かしい曲多いよ。古い曲多いけど、ついてこいよ!」
逹瑯が宣言して、始まった曲は「娼婦」。激しくドラマチックに展開する楽曲に、大いに歌い踊り暴れる観客。「愛の唄」で妖しく淫靡な雰囲気を醸して会場の空気を変えると、早くもライブは後半戦へ。「みんなで最高の一日にしましょう。お前らも含めてMUD FRIENDSだと思ってます」と逹瑯が短い挨拶を挟んで、「前へ」で再びブチアゲると泥友である観客から大合唱が起きる。
「トップバッターのMUCCです! 全部出してくれて構わない。どうせWaiveが長いMCして、体力回復出来るから」と笑わせた「蘭鋳」で、「全部ちょうだい!」と煽って最高潮の盛り上がりを生むと、ラストは最新型のMUCCを見せる「Daydream Believer」。<夢ばかり見ていたはずさ>と歌うまるで美しい映画みたいなエンディングは、この特別な夜に最適で感動的でさえあった。
続いての登場はWaive。ステージに登場したメンバーが定位置に着くと、一瞬の静寂から始まった曲は、1stデモ収録曲であり、全ての始まりの曲と言える「spanner」。田澤孝介(Vo)の伸びやかで透明感ある歌声、貮方孝司(Gt)と高井淳(Ba)の力強く丁寧な演奏、杉本善徳(Gt)の感傷的なギターソロと、圧巻のステージで観客を魅了。演奏後、1曲目から拍手が鳴り止まないフロアを眺めた田澤が、感慨深げな表情を浮かべる。
ようやく拍手が鳴り止むと、「『MUD FRIENDS 2000~2025』にようこそお越し下さいました!」と挨拶し、「今日は大切な腐れ縁、親友・泥友に囲まれて、素敵な時間をみなさんと共に過ごしたいと思ってます。良き思い出になるように、最後まで楽しんでいって下さい」と告げた田澤。イベントに先駆けて行ったニコ生の番組で、互いに演って欲しい曲をリクエストした話題に触れると、「MUCCの『スイミン』は僕のリクエストです」と明かして。「我々もリクエストに応えまして、仕方なく組み込ませていただきます」と披露した曲は、この日から会場特別先行発売されたLAST EP『The SUN』収録の「爆」。
わずか4秒で終わるショートチューン「爆」でド肝を抜くと、歓声が上がるフロアにいたずらな笑顔を浮かべた田澤。「みんな元気?Waiveが解散に向けて活動してる間、どこ行っとったん?」と話し始めた杉本は「来年1月4日、日本武道館のチケットをまだ買ってない人?」と観客に挙手させて、「ざっと合計して100人くらいおったから、今日は100枚売れました!」と巧みなトークでチケット購入を促す。逹瑯の予言通りの長いMCと笑いで観客の体力を回復させると、「言葉で伝えられることは全部伝えたんで、あとは音で!後半戦、ぶっ飛ばして行きます!!」と重厚なイントロから「火花」を放つ。
会場中が拳を突き上げた「火花」から、タオル回しで一体感が生まれた新曲「燦-sun-」と続いた後半戦。解散を目前に控えるも、「燦-sun-」の前向きな歌詞や勢いと気迫に満ちたステージから悲壮感は皆無。このままずっと続いていくんじゃねぇか?と思わせる熱いライブだが、燃え尽きる直前に明るさを増すロウソクの炎のようにも感じて。だからこそ武道館を見逃すわけにいかないと思ったし、この日のライブが観れて良かったと思った。
ヘヴィなリフで始まる「Sad.」でバンドの激しい側面を見せると、ラスト「いつか」へ。軽快なビートに乗せて、まだ見ぬ未来への希望を高らかに歌うこの曲。<この道のゴールは 見えなくていい 答えなどないから熱くなれる>といった歌詞が説得力を増して響き、聴く者に勇気と力を与えてくれた。

トリに登場したのは、仰々しいSEとプロローグから、物語の始まりを告げる「想い出歩記」で幕が上がるや、会場を自身の世界に包みこんだPsycho le Cému。壮大な演奏とDAISHI(Vo)の感傷的な歌声で楽曲世界を丁寧に紡いでいくと、物語のテーマやコンセプトが見えるメンバー、じゃなかった、神々たちの紹介を挟んで。「Psycho le Cémuの世界へようこそ!」と、「アカツキ」でライブを本格スタートする。
強い歌力と存在感で観る者を惹き付けるDAISHIのボーカルや、楽器隊の華やかな衣装やパフォーマンスに目がいきがちだが。ダイナミックかつ正確なYURAサマ(Dr)のドラム、アグレッシブで男気あるseek(Ba)のベースプレイ、Lida(Gt)とAYA(Gt)のテクニカルなプレイや美しいギターアンサンブルといった、演奏スキルの高さも圧巻。「このまま飛ばして行くぞ!」と始まった「聖~excalibur~剣」の力強い歌声と高い演奏力で魅了すると会場中が手振りを合わせ、「最高の夜にしようぜ!」とDAISHIが告げる。
次期最高指揮官を決める“四天神”が揃った演劇パートでは、YUKKE(MUCC)と貮方孝司(Waive)もゲスト参加。ここでしか見れない展開で観客を喜ばせた後は、魔神ナーガを討伐すべく「シャクティ シャクティ アスティ」で愛を歌い、マントラを唱え、YURAサマとAYAが華麗に舞う。続く「MOON PRISONER」で掛け声を合わせて共闘心を見せる観客に、「死ぬ気で行こうぜ!全員まとめてかかって来い!!」とseekが発破をかけると、フロアに強烈な熱気が上がって。「Murder・Death・Kill」と続く攻めのセトリに観客が最高潮の盛り上がりを見せる中、ライブは終盤戦へ突入。
「僕たちPsycho le Cémuはメンバー変わらず、26年間ずっと一緒にバンドやってきています。そんな僕たちも、僕の事件でバンドの活動を止める時期がありました。僕がこうやってステージに立ててるのも、僕のことを許してくれたメンバーのおかげだと思います」
ライブ終盤にMCでバンドの歴史を振り返り、しみじみ語り始めたDAISHI。
「僕がバンドを止めるまで、Psycho le Cémuは飛ぶ鳥を落とす勢いでしたが。活動休止が決まって、数年の月日が流れて。もう一度バンドを再開した時には、MUCCは武道館を何度も出来る大きなバンドになっていました。そして来年の1月4日、Waiveが武道館に立ちます。僕たちにももう少しで手の届きそうな夢の場所、日本武道館があったんですが。僕たちはまだ武道館でやることが出来てません。でも僕たちPsycho le Cémuはメンバーと話し合って、日本武道館をやることを決意しました。『MUD FRIENDS』の中では一番最後になりますが、その時はぜひ泥友として、僕たちの日本武道館に会いに来て下さい」
四半世紀を共にした泥友たちに奮い立たされ、自身も日本武道館のステージに立つと力強く宣言するDAISHIに、会場中から大きな拍手が起きる。さらに「本当に20何年間、インディーズの頃から同期として一緒にやってるバンドなんていないんですよ」と泥友たちの存在の大きさを語ると、「今日が最後になるかもしれません。ただ、僕たちがいる世界は君がいる世界です」と話し、始まったラストナンバーは「君がいる世界」。
仲間への想い、未来への希望、そしてこの会場にいる一人ひとりへの感謝。様々な想いを込めたDAISHIの歌に、気持ちを受け取った観客が歌声を合わせる。その美しすぎる光景にDAISHIが「みんな愛してるよ!」と気持ちいっぱいに叫び、ライブを締めくくった。
ライブ終了後、「『MUD FRIENDS』本当にありがとう!」と観客への感謝を告げたseek。「この25年、一緒に歩んできた俺たち13人、MUD FRIENDS。本当にいろんなことがありました。Waiveが解散を決めました。本当は解散なんかして欲しくないです。でも、俺らが活動を止めた時も、MUCCとWaiveはヴィジュアル系のステージに立ち続けて。俺たちが自分たちで這い上がっていける見守り方をしてくれたのが、MUD FRIENDSの仲間です」と泥友たちへの熱い想いと感謝を語ると、「解散を決めたWaiveが武道館というケジメの場所を自分たちで作ったのは、本当にバンドマンとして憧れの選択です。そこで、この『MUD FRIENDS 2000〜2025』という場所で、Waiveを送り出したいという気持ちをメンバー一人ひとりに伝えて。そのメンバーの気持ちがみんなに届いたから、みんながWaiveを見送りに来てくれたんだと思います。本当にありがとうございました!」と、イベント開催の意味と意義を改めて伝える。
さらに「2018年は写真だけは撮ったんですけど、全員で曲を演奏するシーンを見ていただけなかったので。今回、どうしてもみんなに見て欲しくて」とMUCCとWaiveのメンバーを呼び込んで。「でも、俺たちにはもう一人の友達がいます。こいつがいなけりゃ、Waiveを送り出せんやんけ!」と呼び込んだのは、2021年にMUCCを脱退したSATOち!大歓声に迎えられて登場したSATOちは、「こんな機会を作ってくれて、本当にありがとうございます。一緒に出れて本当に幸せです!」と喜びを語ると、13人で記念撮影をした後、筋肉隆々の上半身を見せつけながらドラムにスタンバイ。
「最後、みんなで暴れて帰りましょう!全員で踊れ!!」と田澤が叫び、13人編成のセッションで派手やかに賑やかに始まった曲は、Waiveの「ガーリッシュマインド」。みんなでマイクや楽器を回し、歌声を重ねて手振りを合わせて。ステージ狭しと13人が入り乱れ、とにかく自由に楽しく歌い弾き踊った泥友たちのセッション。「ありったけの声、下さい!」の田澤の煽りに観客も掛け声を合わせて拳を掲げて。終わりの見えないリフレインに、会場中が楽しく歌い踊る! いま振り返れば青春だったと言えるあの時代から、長い年月が経って。それぞれに紆余曲折もありながら、再び邂逅した3組だが。子供のように無邪気にはしゃぎ、自然と笑顔が溢れるこの瞬間もまた、まぎれもない青春なのだろう。
ラストは、「じゃあラストもう一発、今日一番デカい声で吠えてくれ!いいか?一瞬で終わるからな」という田澤の振りで、<BOMB!>と「爆」を合わせてフィニッシュ。<まだ見ぬ未来へと駆け抜けてく>と「いつか」がエンディングSEで流れる中、「本当に残り少ない時間ですけど、最後の最後までしっかり駆け抜けたいと思います」と意気込みを語った田澤は「絶対、武道館来いよ!」と力強く告げてステージを去った。まだ見ぬ未来へと駆け抜けていく、MUD FRIENDSたちの青春はまだまだ終わらない――。
そして、何度も繰り返しになるが。Waiveの解散ライブとなる『Waive LAST GIG「燦」』は1月4日(日)日本武道館にて開催。さらにWaiveの解散ライブを直前に控えた12月26日(金)には、渋谷PLEASURE PLEASUREにてMUD FRIENDS総出演のトークライブ『MUD FRIENDS TALK』の開催も決定。武道館ワンマンに向けての壮行会と言えるこの日も、楽しい一日になることは間違いナシ。チケットは完売となっているが、ゲットできたラッキーな方は泥友の一員として楽しんでほしい。
SET LIST
●MUCC
01. アカ
02. スイミン
03. 娼婦
04. 愛の唄
05. 前へ
06. 蘭鋳
07. Daydream Believer
●Waive
01. spanner
02. 爆
03. 火花
04. 燦-sun-
05. Sad.
06. いつか
●Psycho le Cému
01. 想い出歩記
02. アカツキ
03. 聖~excalibur~剣
04. シャクティ シャクティ アスティ
05. MOON PRISONER
06. Murder・Death・Kill
07. 君がいる世界
●SESSION
01. ガーリッシュマインド
02.爆






















