ROTH BART BARON "10th ANNIVERSARY"〜BEAR NIGHT 5〜
2024年8月4日(日) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
バンドは、三船雅也(Vo/Gt)のほか、西池達也(Key)、西田修大(Gt)、竹内悠馬(Trp)、大田垣正信(Trb)、KOTETSU(Trb/Gt)、Ryu[Ryu Matsuyama](Key)、Zak Croxall(Ba)、工藤明(Dr)の9人編成。
そしてゲストで、崎山蒼志、YONCE(Suchmos・Hedigan’s)、塩塚モエカ(羊文学)、Salyuが出演。開場〜開演までのオープニングDJを水野蒼生が務めた。過去の開催時と同じように、会場の装飾やアートワーク、グッズ販売等は、ROTH BART BARONのコミュニティ“PALACE”のメンバーたちが担う。
座席は、記念グッズ付きの「VIP・指定席」以外は、「1階自由席」「2階自由席」「3階自由席」「学生エリア自由席」となっており、「学生エリア自由席」は1,100円という破格の設定。さらにVIP席以外は「保護者同伴につき中学生以下1名同行無料」であることも、今回の「BEAR NIGHT 5」の特色である、と言える。
3回目の『BEAR NIGHT』出演となるDJ水野蒼生の、クラシックを主体としてリミックス等も入れていく、なんとも不可思議だが着々と場の空気を作っていくプレイが、ドヴォルザークの「交響曲第9番『新世界より』」で終わると、そのムードを受け継ぐように、荘厳な「MΣ」で、ROTH BART BARONのステージがスタートする。
三船雅也が弾くエッジイかつ軽やかなギター・リフに、ハンドクラップでオーディエンスが追随した「BLOW」、オリジナル音源以上にダンサブルな「TAICO SONG」、三船雅也の歌と鍵盤とホーンが賛美歌のような響きを形作る「ひかりの螺旋」などの7曲が、前半のブロックで演奏される。
そして「ROTH BART BARONです、よろしくお願いします。ご来場ありがとうございます」という三船雅也の挨拶をはさんで、工藤明のドラムで「極彩|IGL(S)」が始まると、最初のゲストの崎山蒼志が、いつもの青いオベイションを手に登場。先に三船雅也、次に崎山蒼志が歌う、「絶やすな」「逃げるな」「恐れるな」のリフレインが、美しく広がっていく。
次は崎山蒼志の最新のヒット曲「燈」。この曲をROTH BART BARONが演奏するとこうなる、という新鮮さと、まるでふたりでひとりのように崎山蒼志と三船雅也の歌が溶け合うさまに、オーディエンスが魅入られているのがわかる。
歌を終え、ハイタッチ気味に三船雅也と握手して崎山蒼志が去ると、次曲のイントロが始まってから現れたのはYONCE。曲はROTH BART BARONの「ATOM」、Aメロからまるで彼自身の曲のような声の通りっぷりである。YONCEに出演をオファーした時、「『ATOM』をやりたい」と彼がリクエストしたことを、曲終わりのMCで三船雅也が明かした。
そして、「これ、YONCEにお土産でもらいました」と、ギターアンプの上に置いてあったテディベアを手に取ってみせる。YONCEはイギリスに行ったそうで、「イギリスと言えばテディベアだな、そういえば『BEAR NIGHT』だな」と思って、これを買った、とのこと。
もう1曲は、今年1月にHedigan’sがリリースした「論理はロンリー」。三船雅也の声が、フェイクを付けたりユニゾンになったりハモったりしながら、YONCEの歌う主旋律に寄り添っていく。去り際にYONCE、自分の着ている「BEAR NIGHT 5」のTシャツをアピール。
次のゲスト、塩塚モエカは、ギターなしでハンドマイクという、普段は見られないスタイル。しかも曲は羊文学の「1999」。オーディエンス、「おおっ」とどよめく。頭から1コーラス終わるまで塩塚モエカが歌い、間奏をはさんで三船雅也にスイッチ、後半はメンバーたちも参加して分厚いコーラスを聴かせる。曲の最後は塩塚モエカがジャンプして締めた。御船雅也曰く、彼女の出演が決まった時、バンドメンバー全員一致で「『1999』だ!」となった、とのこと。
2曲目は、「彼女を呼ぼうという前に、この曲が生まれて。『この声の音域は塩塚モエカだな』と」。つまり、この曲を歌ってもらいたくてゲスト出演をオファーしたという新曲を、本邦初公開する。「Crystal」というタイトルの、雄大な響きの楽曲で、確かに塩塚モエカの声にずっぱまりだが、三船雅也の声にもマッチしている。
ここまでの3人は、演奏が始まるとスッと出て来たが、最後のSalyuは「『BEAR NIGHT』最後のゲストを呼びたいと思います。Salyu」と、三船雅也が紹介してからの登場。
曲は、ROTH BART BARONとのコラボライブ企画『HOWL SESSION』2021年10月10日・11日にCOTTON CLUBで、Salyuを招いてセッションした「HERO」と、Salyuが2015年に発表した「THE RAIN」。「HERO」がまるでSalyuの曲のように、「THE RAIN」がまるでROTH BART BARONの曲のように響く、マジカルな時間だった。歌い終えたSalyuは、三船雅也とハグしてからステージを去る。
そこから、ROTH BART BARONの楽曲の中でもっともアップテンポで華やかな部類に入る「Closer」、RyuとKOTETSUもリードボーカルをとって大歓声を浴びた「赤と青」、壮大なサウンドスケープがLINE CUBE SHIBUYAを包んだ「BLUE SOULS」、この日ここまででいちばんオーディエンスを踊らせた、そして歌わせたダンス・チューン「MOON JUMPER」(三船雅也、マラカスを振りながら歌う)の4曲で、本編が終了する。
アンコールの1曲目は、三船雅也が足元の機材を操作し、しばしSEを奏でてから立ち上がり、スタンドマイク・ギターなしで歌った「けもののなまえ」。2曲目は「陽炎が 囁いたせいで 君の声が 聞こえなくなったんだ/君の姿が 見えなくなったんだ」のリフレインが耳に強く残る「陽炎」。
その2曲を終えて三船雅也は、今日がこれまでの『BEAR NIGHT』で過去最大の動員になったことを報告し、お礼を言う。「5年もできたのはすごいよ、ありがとうね」。
そして、今年デビューから10周年を迎えた、最初のアルバム『氷河期』の曲をやるツアーを来年行うことを発表した。10年前は、東日本大震災の後で、街が凍ってしまったようだと思って『氷河期』というタイトルを付けた、でも今は「氷河期、溶けたな」と思う、その世界で『氷河期』の歌がどんなふうに響くのか、というツアーをやろうと思う──と三船雅也。
“PALACE”のメンバーへの感謝の言葉を経て、「気合い入れてやるよ。みんなも最後に力を振り絞って、スカスカになって帰ってくれ。歌うぞ」と言うやいなや歌に入ったのは「鳳と凰」。
三船雅也とオーディエンスによる「♪ラーラーラーラーララーラー」のシンガロングが、高らかなホーンを合図にバンドの音が加わっても、曲の途中で客電が点いてホール全体が明るくなっても、最後に演奏が三船雅也のアコースティック・ギター1本になっても、ずっと続いていくさまは、何かもう、圧巻だった。最後はこの曲だろうな、と予想ができていても、その予想を超えていくような。というか、予想できようができまいが、関係ないような。
最後にメンバーを紹介し、ゲストの4人とDJの水野蒼生を呼び込み、14人で手をつないで一礼。5回目の『BEAR NIGHT』は終了した。
SET LIST
01.MΣ
02.BLOW
03.Ghost Hunt
04.TAICO SONG
05.KAZE
06.Innocence
07.ひかりの螺旋
08.極彩|IGL(S) feat. 崎山蒼志
09.燈 feat. 崎山蒼志
10.ATOM feat. YONCE
11.論理はロンリー feat. YONCE
12.1999 feat. 塩塚モエカ
13.Crystal feat. 塩塚モエカ < 新曲 >
14.HERO feat. Salyu
15.THE RAIN feat. Salyu
16.Closer
17.赤と青 feat. Ryu & KOTETSU
18.BLUE SOULS
19.MOON JUMPER
ENCORE
01.けもののなまえ
02.陽炎
03.鳳と凰