兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第163回[2024年6月前半・デスペ自主興行、宮本浩次、くるり、やついフェス1日目などの6本を観ました]編

コラム | 2024.07.02 18:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター、兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブのレポを月二回ペースでアップしていく連載の164回目=2024年6月前半編です。6月1日から15日までの間で6本、そのうち3本がワンマンで1本が対バンで1本がフェスで1本がプロレス。で、6本のうち3本はすでに単独でレポを書いたやつ、になりました。

6月2日(日)17:00 Base Ball Bear @ Zepp Shinjuku(TOKYO)

新しいミニアルバム『天使だったじゃないか』のリリース・ツアー、全17公演のファイナル。ギターとベースとドラムと歌で音楽を作るロック・バンドの理想形、というのは、いろんな形があるし、いろんなケースがあるが、このライブを観て、確実にその中のひとつだと思った、今のBase Ball Bearは。
DI:GA ONLINEにレポを書きましたので、未読の方はぜひ。
Base Ball Bear、超満員のオーディエンスと共に『天使だったじゃないか』TOURを完走

6月7日(金)19:00ヒカシュー / おとぼけビ~バ~ @ 渋谷La.mama

La.mamaブッキングの対バンイベント。すごい組み合わせだなあ、さすがLa.mama、と思ったが、正直、心配にもなった。ファン層が合いそうにないじゃないですか、だって。ジャンルも音楽性も世代もパフォーマンスのしかたも、何もかもが違う2組だし。オルタナティブな存在であることが、共通点といえば共通点かもしれないけど。
なので、先攻のおとぼけビ~バ~が終わったら帰るお客とか、逆におとぼけビ~バ~が終わる頃に来るお客とか、そういう人が多いと、ちょっとなんか、あれだなあ。と思っていたのだが。
杞憂もいいところでした。ヒカシューのファン(と思しき年齢層の方々)も、おとぼけビ~バ~でがんがん盛り上がっているし、おとぼけビ~バ~目当てと思しきオーディエンスたちも、ヒカシューに歓声を飛ばしまくっているし。
おとぼけビ~バ~のよよよしえ(ギター)、前半のMCで、年齢層高め、男性多めなフロアに向けて、「お集まりのジジイのみなさん、元気ですかー!」と挨拶してから「ジジイ is waiting for my reaction」をぶちかます。
さらに後半のMCではよよよしえさん、「今日、朝ほぼ始発の新幹線乗って、お昼13時から50歳のおじさんとインタビューして、おじさんが読むような雑誌の表紙を飾ることになって。ジジイと話してばっかで疲れてんのマジで。で、ライブハウス来たらまたジジイでさあ」。
思わず俯いてしまった。私です、50歳じゃなくて55歳ですが。KAMINOGEという雑誌で、7月5日に発売です。
こちらです。≫ KAMINOGE
それから、ヒカシューの巻上公一はJASRACの理事、ということで、「あなたとの恋、歌にしてJASRAC」も演奏。自分たちの出番の後半で、ちゃんとそれをMCで拾う回収する巻上公一もさすが。
なお、ヒカシューのライブ、恥ずかしながら初めて観ました。昨年45周年を迎えたそうで、ヒカシュー大好きだというあっこりんりんが「こんなに新しいことを45年も前からやっていたのか」みたいなことをMCで言っていたが、確かにそのとおりだった。すごいラジカル。

6月10日(月)17:30『DESPE-invitacional』supported by ROLLING CRADLE @ 後楽園ホール/NJPW WORLD

エル・デスペラード(以下デスペ)・プレゼンツの興行。デスペが招待状を送った選手たちが団体の垣根を超えて出場する、という趣旨で、出場選手もカードも事前発表なし。超満員札止めで、NJPW WORLDでPPV(ペイパービュー)で有料生配信もあり。
第0試合からメインイベントまでの全7試合、「うわ、この選手呼ぶ!?」「え、この選手をこの選手と闘わせる!?」というサプライズだらけ。試合内容も「こう展開する!?」「こんな方法で笑わせる!?」という驚きだらけで、すべての試合がめちゃくちゃおもしろかった。
デスペの、プロデューサーとしてのクリエイティビティに、それはもう感銘を受けた、すべての試合において。前述の、おとぼけビ~バ~が表紙のKAMINOGEというプロレス雑誌、僕は連載コラムを持っているんだけど、そこにこの興行のことを書いたくらいです、興奮のあまり。
出場選手やカードや試合内容等を、もっと詳しく知りたい方がいるかもしれないので、新日本プロレス公式サイトの、この日の「試合結果」のページを貼っておきます。
新日本プロレス公式サイト

6月12日(水)18:30 宮本浩次 @ ぴあアリーナMM

毎年恒例になった誕生日ライブ、今年は(去年もだ)ぴあアリーナMM。メンバーは、ギター・名越由貴夫/ベース・キタダマキ/ドラム・玉田豊夢/キーボード・小林武史。カバー曲あり、ソロ曲あり、エレファントカシマシの曲ありの全24曲、たっぷり楽しませてくれた今回の、大きなトピックはふたつ。
ひとつめは、「エブリバディ、俺は今までなんと三回も、『みんなのうた』を歌っております」という言葉から曲に入った「はじめての僕デス」。二回目はエレファントカシマシ「風と共に」(2017年)、三回目はソロ名義での「passion」(2021年)、そして一回目は、よく知られているように、1976年=東京放送児童合唱団に所属していた10歳の頃に、宮本が歌ってNHK「みんなのうた」で放送されたこの曲である。
しかも宮本、この曲を、当時の自分の声と共にデュエットした。最初は10歳の自分のレコード音源、途中から今の宮本の生歌&バンドの演奏、サビで一瞬デュエットになって、最後は10歳の声で終わる、という。オーディエンス、大喜び。
で、もうひとつのトピックは、エレファントカシマシの「おかみさん」と「OH YEAH!(ココロに花を)」をやったこと。後者は1年前の誕生日ライブでも歌っていたけど、それ以外で聴かれることは、最近少ない。で、前者は、「うわ、『おかみさん』じゃん!」と驚いて、生で最後にいつ聴いたのか全然思い出せなくて、家に帰ってから調べたら、2016年秋のZeppツアー以来だったことがわかりました。

6月14日(金)19:00 くるり @ 渋谷クラブクアトロ

くるりのアベレージを考えると小さめのライブハウスをこまめに回るツアーのスタート地、渋谷クラブクアトロ2デイズの2日目。6月27日(木)の朝日新聞夕刊にレビューを書きました。ウェブの方、朝日新聞デジタルの有料会員しか読めませんが、一応貼っておきます。≫ (評・音楽)くるり、ライブハウスツアー コンセプトなしに、狙いあり
で。まだ始まったばかりのツアーなので詳細を書くのは自粛するが、「え、この曲やってくれるの!?」だらけ、レア曲連発の、それはもううれしいセットリストだった。
もちろんうれしいのは僕だけでなくて、フロアみんな大喜びで、イントロで次の曲がわかる度に、歓声が上がる。佐藤征史が「この曲で『ひゃー!』って声上がる!?」と驚くくらいである。
岸田繁曰く「再生回数が少ない曲でセットリストを組んだけど、自信がつきました」。コンパクトなライブハウスを、本数多めで回る、ということを今のくるりがやるなら、こういう内容でしょう。というのが、とてもよくわかる。
なお、翌々週末の仙台と山形の2公演が、岸田のコロナ発症で中止になった。残念だが、本人が悪いわけではないし。それ以降の日程のつつがなき開催を祈念しております。

6月15日(土) 12:00 YATSUI FESTIVAL! 2024 の1日目 @ 渋谷Spotify O-EASTなど 9会場

今年で13回目のやついフェスの1日目。今年も2日間ひとりで観れるだけ観て回って、DI:GA ONLINEにオフィシャルのレポを書きました。
こちら≫ 過去13年で最大動員! 2024年のやついフェス、1日目をレポート!
終日いいアクトだらけだったけど、特にやられたのは工藤祐次郎。初めてライブを観たもので。楽曲そのものとボーカルの良さは音源で把握していたつもりだったが、あんなにいいギターを弾く人でもあることは、わかっていませんでした、私。
あと、錦野旦の大ウケっぷり、もちろんパフォーマンスが良かったからだけど、「お客さんがいいから」であることも、とても感じた。
翌日へ続く。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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