“フリースタイルピアニスト”としてのピアノプレイのみならず、自ら歌い、作詞作曲も行ない、映画の主題歌を手がけるなどZ世代のなかでもとびきり群を抜くその才能で“音楽総合表現者”として多方面から注目を集めるアーティスト“けいちゃん”。彼が3枚目のオリジナルアルバム『円人(読み:えんじん)』をリリース。今作について、さらには今作をひっさげて2023年2月2日に東京・豊洲PIT、2月3日に大阪・なんばHatchにてワンマンライブ<けいちゃん Live Tour 2024『円人』>を開催する彼に話を聞いた。
──初対面でも親しみが湧くようなキャッチーなアーティスト名ですが、けいちゃんというアーティスト名にした理由から教えてもらえますか?
本名からきてるんです。小学校のときから友だちに「けいちゃん」と呼ばれてきたので、とりあえ「けいちゃん」でいいかと思ってつけたら、そのままきてしまいました。
──“フリースタイルピアニスト”というキャッチフレーズは、ご自身で考えられたんですか?
そうです。フリースタイル、いわゆる自由という意味ですけど。自由というのは例えばジャンル。クラシック、ジャズ、ポップスなどジャンルを問わずに自由に弾くという意味だったり。あとは奏法や姿勢。ピアノを弾くときは姿勢を正して、手の中に卵型を作って弾きましょうというのがあるけれど、そういうものも取っ払って自由な体の流れ。真のリラックスした状態で体を自由にして弾こうという意味だったり。あとはお客さんとの空気感。お客さんもかしこまらず自由に楽しめるようにという意味。そういうものを含めてフリースタイルピアニストと名付けました。
──そこに、フリースタイルピアニストといいながらも、その枠さえもはみ出していことするパッション。パイオニア精神をとても感じます。
「唯一無二でありたい」というのはすごく思ってます。
──けいちゃんは元々クラシックを演奏してらっしゃったんですよね?
そうです。
──そうして、音大生時代にいまはSNS時代だというのを先読みしてYouTubeで活動を始めて。都庁にあるストリートピアノを弾く動画を次々にアップしていくなかでKing Gnuの「白日」がバズって、チャンネル登録者数が100万人を超えたと書いてあったのですが。けいちゃん自身、ノリとかではなく計画性を持ってアクションを起こしていった感じですか?
こう見えて先のことまで考えて綿密に計画を練って、データとかもちゃんと収集して数字とか厳しく見るタイプです。
──けいちゃんはいまではピアノを弾くだけではなく、作詞・作曲・歌唱もやられていますが。曲はどうやって作るタイプですか?
曲によって違いますね。ずっとピアノの前に座って、降りてくるのを待って。降りてきたらバーッと弾いて、そこからパズルみたいにいろんなパーツを集めて組み立てていく作り方のときもあるし。
──それは譜面を使ってやっていくんですか?
使わないです。ボイスメモで録っていくか、パソコンでデータを打ち込んでいくかなので。あとは、頭の中だけでいきなり1曲が完成しちゃうこともありますね。
──今作のアルバム『円人』のなかでもありますか?
「recollection」はわりとそうです。全体像が頭のなかにありましたね。
──では降りてくるのを待って作ったものは?
「Exit→」はそうですね。これは映像が出てきたんですよね。ドアが出てきて。ドアを開けて下を覗くと、いままで体験してきた世界が遠くに見えるイメージだったんです。「Exit→」のなかで、アルバム内の曲が何曲か出てくるんだけど。そこは、アルバムの扉を開けて上から覗いてるイメージ。
──タイトルに矢印をつけた理由は?
アルバムラストの「Exit→」からから1曲目の「→Entrance」につながるという意味。扉のなかを覗いていたらアルバムのなかに落ちていって、最下層からスタートしていく。そういうイメージが頭の中に出てきたので、こういう曲になりました。
──そのループ感がアルバムタイトルの『円人』につながっているんですか?
そうですね。循環していくようなイメージです。
──今作には“私”と“僕”が登場してきて。循環だから、その“私”と“僕”が、曲がいろいろ繋がってるように感じたんですが。今作はコンセプトアルバムですか?
はい。コンセプトは生の循環、死の循環、輪廻、みたいなものですね。人はみな、誰かの人生の続きを生きている。みたいなものをテーマに作りました。死んだら、今生きてた魂は天国にいく魂と、また新しく生を授かる魂に分裂する。昔からそういう風に自分は思っていて。そういう魂の循環ですね。
──輪廻転生のような、哲学的なテーマなんですね。
そうです。アルバムのイメージカラーは黒と赤とオレンジ。あんまり明るくはないイメージでしたね。