──今作をかっちりコンセプトを掲げて制作しようと思った理由は?
前作(『聴十戯画』)、前々作(『殼落箱』)とコンセプトがないのがコンセプトというので作ってきたので、今回は心機一転で、ちゃんとコンセプトを考えて作ろうと思ったのが理由で。コンセプトを考えたとき、自分の中で一番組曲にしやすいワードみたいなものをコンセプトにしようと思ったら、こうなりましたね。アルバム1枚で組曲みたいなものを作りたかったので。クラシックをずっとやってたから、クラシックのエッセンス。クラシックにあるような組曲のエッセンスをどこかに入れたいと思ったので、いくつかの小品曲が連なって組曲のようになっていくようなものを考えて。
──それで、曲間がつながっていたり、曲のフレーズや歌詞が他の曲とつながっていたりするのですね?
そうです、そうです。
──曲を何度も聴きながら、それを謎解きのように紐解いていく楽しみもある。
はい。いろんな仕掛けをしたので、全部見つけて欲しいですね。
──では、特別にその中の1つを教えてもらうことはできますか?
「夜行feat.majiko」に出てくる歌詞が、たびたび「愛葬feat.majiko」の中に出てくるんです。例えば、“ほら見て、ここにいるよ”とか。サビの最後がこの2曲は同じ歌詞なんです。この2曲はお互い、男女が対面して立ってるというイメージで作った曲なんです。それで、男のほうはもう亡くなってるんです。
──「愛葬」のほうで、私は“この声が空まで届くなら〜君に会えるのかな”と歌っていますからね。そうして、対する「夜行」のほうでは、僕が“君まであと一歩〜”と歌っている。
僕には君が見えてるんだけど、君は僕が見えないなかで叫んでるんですよね。
──それを男性目線で歌っているのが「夜行」で女性目線で歌っているのが。
「愛葬」です。だから、「夜行」には“目が合えばいいの 僕を感じて”とあるんだけど、「愛葬」にも“目が合えばいいの 私を感じて”というのがあって。同じ歌詞なんだけど、男性は女性のことが見えてていってるんだけど、女性は見えてないから、私はここにいるよという意味で“私を感じて”といってるんですよ。
──すごい! 最初からそれを考えて作ってたんですか?
──アルバムの全体像として、インスト曲と歌もののバランスはどう考えて作って行ったんですか?
これもストーリーを考えていったら、自ずとこういうバランスになったという感じです。
──ということは、コンセプトを立てた後、それをテーマにシナリオも考えてアルバム制作に挑んだということですか?
はい。ほとんどは頭の中で大まかなストーリーを考えて作っていった感じです。だから「千鬼への合流」から「シンフォニア」までは男性目線の歌がつながっていて。「MAIHIME」までは彷徨ってるんですよ。それが「Life Game」で誘導されて「Dance of Lake」で解放される。そんなイメージで作りました。
──「Dance of Lake」にはチャイコフスキーが「白鳥の湖」フィーチャーされていました。
昔からクラシックのオマージュ、リメイクみたいなのが好きでよくやっていて。「白鳥の湖」は男女の物語なので、そのフレーズを拝借してあの世で男性が解放されて自由に踊っているイメージで書きましたね。
──謎解きもいろいろ気になるんですが、それ以外に気になるところいえば転調の多さ。曲中に「えっ、ここで?」というところでとんでもない転調がやってくるので、聴いてて何度も驚かされました。
いたずら心というか、驚きを与えるのが好きなので、変わった転調はよくします。変わってても、ちゃんと音楽理論にのっとってやっています。
──今作のなかでは、ヴォーカリストとしてmajikoさんが3曲フィーチャーリングで参加されていましたね。
芯のある声で、なおかつ女性の声がどうしても欲しくてオファーさせてもらいました。感情がのる、エモーショナルな声質が欲しかったので、ぴったりハマりました。彼女の歌が入ると、体温が2度ぐらい上がる気がします。
──歌い方について細かいオーダーは?
歌のディレクションも何回かやりましたけど、勘がいいのでちょっといえば僕が思い描いていた通りの素晴らしい歌を歌ってくれました。