TOMOO Major 1st Album「TWO MOON」発売記念フリーライブ
2023年10月9日(月・祝)ダイバーシティ東京 プラザ 2Fフェスティバル広場
シンガーソングライターのTOMOOが10月9日(月・祝)に東京・ダイバーシティ東京プラザ 2Fフェスティバル広場にて、Major 1st Album『TWO MOON』の発売を記念した初のフリーライブを開催した。
3連休の最終日。前日から降り続いていた雨は止む気配がなく、あいにくの天気となったが、会場には800人のファンが集まっていた。開演前、楽器のサウンドチェックをするためのリハーサルに登場したTOMOOは、雨の中でカッパやウィンドブレーカーを着て静かにライブを待つ観客を目にし、「立ってると寒いよね。何か弾こうか? ……でも、私、秋の雨の曲、持ってない」と悩みながらもキーボードを弾き始め、急遽、予定に全くなかった「雨でも花火に行こうよ」を立ったままの弾き語りで歌唱。歌詞の<それは忘れもしない夏の日>を“秋の日”に変えて歌うと、観客は<雨天決行 手を振り続けてる>というフレーズに合わせて、高く掲げた手を左右に振るワイパーで盛り上がり、雨の野外ライブでしか味わえない特別な体験へとつなげて、一旦ステージをあとにした。
開演時間になると、実物大ユニコーンガンダム立像の変身を待って、森本隆寛(Gt)、勝矢匠(Ba)、関口孝夫(Dr)、鈴木栄奈(Key)というバンドメンバーに続き、TOMOOがステージに姿を見せた。オープニングを飾ったのは、インディーズ時代の楽曲ながら、MVの再生回数が278万回を超えている代表曲「Ginger」。TOMOOがピアノのバッキングを奏でると、観客からは自然とクラップが沸き上がった。立ったままで、ピアノを打楽器のように叩きながら、低くパワフルで伸びやかな歌声を響かせるTOMOOは、2番でピアノを離れ、ハンドマイクを手にし、<ジャムとかミルクとかコーヒーとか蹴散らして回る>ネコのように軽やかなステップを踏みながら躍動。青春時代を共に過ごした人との関係の岐路を想起させる「夢はさめても」では再びピアノの前に戻り、狂おしくも愛おしい環境の奔流をダイナミックに表現。ため息のようなウィスパーヴォイスから確かなエモーションを感じるストロングヴォイスへとスケールを拡大していく様は、まるで映画のワンシーンを見ているかのようにドラマチックだった。
「ほんとに今日はここに来てくれてありがとうございます。こういう中でのイベントは、お互いにスペシャルな場所だし、スペシャルな天気だし、ずっと忘れないと思うので。というか、忘れない時間にするので、一緒にあったまって、楽しんでいきましょう」と挨拶したあと、「今、いちばん、ほかっとした気持ちになってほしいという思いをバシバシに込めて歌います」と語り、近年のライブの定番曲「ベーコンエピ」へ。ピアノの弾き語りという彼女の原点のスタイルでしっとりと聴かせた後、心の渇きをテーマにしたリズム&ブルース「Grapefruit Moon」で観客の体を心地よく揺らし、ブレイクビーツやR&Bの要素も含んだアルバムのリード曲「Super Ball」では<踊るように 並んで歩こう>というフレーズでハッとするほどのエネルギーを放出し、メロウなラップのような新鮮な語り口も披露した。
ここで、アルバムのタイトル「TWO MOON」について、「いろんな意味があるなかで、まだあまり話してないイメージがあって」と語り始め、「ふたつの満月が並んでいたら、君と私とか、You and Iとか、誰かと誰かが並んでるイメージがあるじゃないですか。あとは、向き合って、目が合ってる時の瞳とか。今は、そういう気持ちを抱えて、このアルバムとともに動いてます」と明かした。「そんなアルバムの中の曲で、特に、“君”と“私”が並んでる気持ちをやっと曲にできた曲があって。自分ひとりの心の中に潜っていって、一人ぼっちだなと思って気づくこともいっぱいあると思うんですよ。すごく大事なことだと思うし、そういうふうにずっと活動してきたんだけど。ただ、誰かと一緒にいる状態でやっとわかることもめちゃくちゃあるよなって。それを実感としてやっと歌詞にできた歌をやりたいと思います」という言葉とともに歌い出したのは、映画『君は放課後インソムニア』の主題歌「夜明けの君へ」。<あの丸い月によく似た瞳が笑う>という眠れぬ夜の出会いから<ひとりきりでは気づけないまま>という“僕ら”になって朝日を迎える物語に引き込まれるかのように観客は静かに耳を澄ませて聞き入っていた。
「今日は楽しかったです。本当にスペシャルな感じの時間でした。名残惜しいけど、今日、集まってきてくれたこと、本当に絶対に忘れません。ありがとう」
フリーライブの最後に歌われたのは、記念すべきメジャーデビュー曲「オセロ」。「この時間、いちばん温まっていきましょうか。盛り上げていきましょうか」と呼びかけると、観客はこの日、いちばんの大きなクラップを鳴り響かせ、TOMOOは立ったままでキーボードを弾き、やがてハンドマイクを握って、大階段を登り降りし、ステージ前方の屋根のない場所まで飛び出して熱唱。観客のテンションと熱気が上昇する中、TOMOOは「また元気で会いましょう」と再会の約束をして、笑顔で手を振りながらステージをあとにした。
この日のMCでTOMOOは「今日は凝縮版でしたが、またバンドと一緒にライブをする機会があります。アルバムのツアーをやります。やっとアルバムを丸ごとライブで生でお届けできる時がきた……」と感慨深げに語り、「本当にいい時間になることを約束するので、ぜひよかったら遊びにきてください」と伝えた。弾き語り公演を含む全国7都市8公演に及ぶ自身最大規模の全国ツアー「TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON"」は11月からスタートし、来年1月30日(火)に東京・TOKYO DOME CITY HALLでファイナルを迎える。「Mellow」や「窓」など、アルバムに収録されていた新曲も聴けるはず。決してブレない強い芯を持ちながらも弾力性のあるクリエイティビティは唯一無二。メジャー3年目を迎え、ますます注目度が増している彼女の今後の活躍に大いに期待したい。