OBLIVION DUST「Electric Mirror」
2023年8月2日(水)・3日(木) Spotify O-EAST
[Guest Act] 8/2:Newspeak、8/3:RED ORCA
2023年8月2日(水)・3日(木)、渋谷Spotify O-EASTで、OBILIVION DUSTがライヴ・イベント『Electric Mirror』を行った。初日はNewspeak、2日目はRED ORCAをゲストに招いた、OBLIVION DUSTにとって初めての、対バン企画である。
ファンはご存知のとおり、デビューから解散するまで(1997年~2001年)も、再始動した当時も(2007年)、そして現在も一貫して、OBLIVION DUSTというバンドは、どこかのシーンに所属したり、なんらかのムーヴメントの中にいたりしたことが、一度もない。
かっこよく言えば「常に孤高の存在」。ただし。ユニークなのが、他のミュージシャンと一切付き合いがないからそうなっているのでは、決してない。という事実だ。
むしろ──これもファンには周知のことだが──OBLIVION DUSTでしか音楽活動をしていないメンバーが、誰もいないにもかかわらず、そんなふうに「孤高」なままなのである、存在として。
たとえばKEN LLOYD(Vo)は、FAKE?とATOM ON SPHEREとソロでの活動も行っている。その中のATOM ON SPHEREは、ざっくり言うとクラブ・ミュージック寄りの音楽性であり、その方面のミュージシャンたちとKEN LLOYDとの交流から始まったユニットだが、そのあたりのシーンとOBLIVION DUST本体が、深く交わっていくことは、ない。同じことは、K.A.Z(Gt)にも、RIKIJI(Ba)にも言える。
というわけで。今回のように、OBLIVION DUSTが自らの意志で、他のバンドを招いて共演する、ということ自体が、新しい試みであり、ある種のトピックなのだった。
そこで、ATOM ON SPHEREでKEN LLOYDと活動を共にしているSHIGEOのバンドであるスケボーキングを呼びます、というような対バンの選び方ではなく──つまり日頃の付き合いがあるとかないとか関係なく、スタッフが推薦した中から「これは!」と思ったバンドにオファーする、という形で開催したのも、OBLIVION DUSTらしい。
初日のゲストのNewspeakは、2022年10月にメジャーデビューしたばかりで、ファースト・アルバムのリリースが待たれるニューカマー。後半のMCでベースのyoheyが、自分たちは今スタジオに籠もっているから、こういう誘いでひっぱり出してくれたのがうれしい、と言っていたので、まさに今制作中なのだと思われる。
J-POP成分よりも、US成分とUK成分を強く感じさせる、スケールの大きなギターロックを聴かせるバンドで、この日は、「The Shrinking Habitat」で始まり、「Blinding Lights」で終わる11曲をプレイした。
「去年EPを出して、ホンダのCMになっているから聴いたことがあるかな」というRei(Vo/Key)の紹介から演奏した5曲目「Leviathan」から、フロアのリアクションが目に見えて大きくなる。
6曲目「Lake」や、 10曲目「Bonfire」などで、Reiは何度もオーディエンスに「一緒に歌いましょう」と呼びかける。歌詞がなくて「WOW」で歌うパートがある曲が多いので、この場で初めて聴いた人でもシンガロングしやすい、という利点もあるだろうが、実際に多くのオーディエンスが、大きく腕を振りながらメロディを口ずさみ、Reiのアジテーションに応えていた。
2日目のゲストは、RED ORCA。始動は2019年なので、バンドとしてのキャリアはNewspeakとそんなに変わらないが、メンツがえぐい。
SNSで全世界にその存在を知らしめた、さすらいの凄腕ベーシスト葛城京太郎。ラウドシーンでもっとも多忙なギタリストであり、KEN LLOYDのFAKE?でも弾いているPABLO(ライヴによってもうひとりのギタリスト、同道公祐が弾く時もあるが、この日はPABLOだった)。ジャンル問わず多数のアーティストを手掛ける売れっ子マニュピレーター草間敬。そして、SMORGASでデビューしてから二十数年、常にワン&オンリー&規格外であり続けるボーカリスト、来門。
という「全パートが日本有数」なメンツを、ドラマーである金子ノブアキ(言うまでもなくこの人も日本有数)が、自身のソロ作品のライヴを行うために集め、それがバンド化したのがRED ORCAなのだった。
よって、この日彼らがステージから放った全10曲も、観ていて「ノる」とか「盛り上がる」というよりも、音とボイスを浴びせ放題浴びせられて、ただただ圧倒される、その途轍もないエネルギーにクラクラしっぱなしになる、みたいな、そんな時間だった。
……いや、そんなことはないか。それは自分だけか。オーディエンスみんな、大歓声を挙げながら踊りまくって、受けた分のエネルギーを、いや、場合によってはそれ以上のエネルギーを、ステージに投げ返していたし。
とにかく、濃かった。こんなすごい音をバックによく歌えるな来門、と思うが、全然余裕で、楽しそうに歌ったりラップしたりスクリームしたりしまくっている。日本でもっともザック・デ・ラ・ロッチャに迫っている男かもしれない。二十数年前に初めてSMORGASのライヴを観た時に、そう感じたことを思い出した。
という2バンドのあとに、両日ステージに立ったOBLIVION DUSTのライヴは、どうだったのか。
まず、2日とも12曲演奏したが、両日プレイしたのは半分だけ。その6曲も、たとえば1日目はラストの12曲目に披露された「Microchipped」が2日目では9曲目だったりして、ライヴの中でその曲が担う役割が異なっていたりする。
つまり、2日それぞれ、全然違うライヴをやったわけだが、その2本の違いの付け方が、とても興味深かった。というか、刺激的だった。
1日目と2日目の対バンの音楽性に、寄せた感じにしていたわけではない。でも、「その対バンの次にやるステージである」ということを、無視しているわけでもない。
つまり……うーん、これ、説明がものすごく難しいな。なんというか、「寄せる」とか「あえて逆を行く」とかいうようなわかりやすい次元ではないところで、「この日にこのバンドと対バンして、彼らのあとにやるならこういうライヴを見せたい」というプレゼンになっていたのだ。
抽象的な言い方で申し訳ないが、2バンドのライヴ、両方の時間を使って、ひとつの世界を描いているというか。いや、違う、2バンドじゃない。1日目のNewspeakとOBLIVION DUST、2日目のRED ORCAとOBLIVION DUST、2日間すべての時間が、ひとつの物語になっているというか。
2日間、頭から最後まで観終わった時、「ああ、そうか!」と、何かとても腑に落ちた気がした。OBLIVION DUSTは、この『Electric Mirror』という企画を、対バンも含めて2日全部観てわかる表現として作ったんだな、という。
と言うと、どちらかしか観ていない方には申し訳ないが、それはそれで、通常の対バンイベントとして、十二分に楽しめるライヴだったと思う。
が、両方の日を、頭から最後まで観た人にとって、「対バンイベントを2日続けて観た」という以上のものを、持って帰ってもらいたかったのではないか、OBLIVION DUSTは。だから、このようなライヴをやったのではないか。と思って、腑に落ちた気がしたのだった。
OBLIVION DUSTのライヴだけではなく、お客さんの感じも、O-EAST全体の空気も、1日目と2日目で全然違っていたのも、このイベントのおもしろさに拍車をかけていた。対バンが違うんだからお客さんも違うでしょ、という以上の、不思議なグルーヴ感が、会場を支配しているような感じで。
なお、1日目、途中のMCで「最初からずっと迷ってるんだけど、これ(ペットボトルの水)、フロアにまいていいものなの?コロナの前みたいに」と言ったKEN LLOYDは、それからちょっと時間を置いて、ステージの後半から、ペットボトルで散水を始めた。で、2日目は、中盤ちょっと前あたりから、水をまき始めた。というさまを観ていて、コロナ前に戻ったんだなあ、という実感を持ったりもした、こちらは。
あとひとつ。1日目の後半のMCで、KEN LLOYDは「こういうのは、本来は明日言うようなことなんですけど」と、11月から12月にかけて、6本のツアーを行うことを発表した。初日は11月18日HEAVEN’S ROCKさいたま新都心で、ファイナルは12月9日新宿BLAZE。
新宿BLAZEは2024年7月31日で閉館することが発表になっているので、自分はそこでやるのを楽しみにしている、とKEN LLOYDは告げた。
SET LIST
■8月2日(水)SET LIST
Newspeak
01. The Shrinking Habitat
02. 24/7 What For
03. Wide Bright Eyes
04. Clockwise
05. Leviathan
06. Lake
07. Jerusalem
08. Media
09. Pyramid Shakes
10. Bonfire
11. Blinding Lights
OBLIVION DUST
01. In Motion
02. Satellite
03. Haze
04. Everyday Negative
05. Glitch
06. Sail Away
07. Gateway
08. Traces
09. Again
10. Syndrome
11. Under My Skin
12. Microchipped
■8月3日(木)SET LIST
RED ORCA
01. Night hawk
02. ORCA FORCE
03. beast test
04. Phantom Skate
05. 新曲
06. Buddhism(The shine will comeback)
07. grave digger man
08. Touchdown the Killer
09. 新曲
10. beyond the wind
OBLIVION DUST
01. Sink The God
02. In Motion
03. Remains
04. Everyday Negative
05. No Regrets
06. Nightcrawler
07. Lust&Graffiti
08. Under My Skin
09. Microchipped
10. Syndrome
11. Haze
12. Death Surf