「SAY YES」「YAH YAH YAH」といったCHAGE and ASKAの大ヒット曲のアレンジを担当した十川ともじと16年ぶりにタッグを組み、さらには第65回グラミー賞最優秀グローバル・ミュージック・アルバムを受賞した小寺秀樹がレコーディングとミックスのエンジニアリングを担当したこの新作は、現代的な質感と往年のUKロックについての蓄積がChageならではの感性で融合され、しかも25年前にリリースされたソロ・デビュー曲「トウキョータワー」の新バージョンも収録し、Chageの“今”と25年の時の流れをまとめて楽しめる1枚に仕上がっている。
ここでは、その制作を振り返ってもらうとともに、その新作を携えて向かうツアーへの意気込みを聞いた。
今年が25周年イヤーっていうのはわかってましたから、やっぱり25周年にふさわしいものを何か制作をしたいなというところで、まず最初に25年前に出した最初のシングル「トウキョータワー」、あれのアレンジャーが十川くんだったので、彼に「トウキョータワー」の25 th バージョンを作らないかとオファーしたら快諾してくれて。で、もちろんブランニューを何曲か作ろうっていう構想があったので、その時点で全てを一緒にプロデュースしてやろうって決めてました。
今回は、25年前の主人公と久しぶりに東京タワーに登ってるような感じになったらいいなっていうことは思ってたんです。だから、この新しいバージョンのオケは、実は昔のオケのチャンネル1個ずつ全部バラしてるんですよ。全部バラして、25年前にはできなかった音質を今の機材で再現してるんですよね。そして、十川くんは十川くんで新しく足してるトラックもあって、だから25年前の「トウキョータワー」と主人公は同じなんですけど、25年経った2人がもう1回東京タワーに登ってるっているような感じに僕には聴こえるんです。その横に、当時の2人がいるような感じがするんですよね。
東京タワーは333メートルでしたっけ。東京タワーは高さというものでその素晴らしさをよく表せられるから、それに引っ掛けて、幸せが何パーセントじゃなくて高さで表そうとしたわけですけど、25年経ったらね、高さではスカイツリーに抜かされております(笑)。でも、それも面白いじゃないですか。東京タワーより高いものがいっぱいできても、僕の中では東京タワーという存在は色褪せない。むしろ、同じ65歳だっていう、同期だっていうのをますます感じます。そして、そこにまた彼女を連れてこられたっていう。だから、この歌の2人は今、幸せなんだなと思ってます。ホント、いろいろあったけどね、っていう。それが多分、新しい3曲にも影響してると思う。この3曲とも、ひょっとしたら主人公は同じと捉えても面白いと思うし。そういう意味では統一感があるのかなとは思ってますけどね。
これは、作業部屋(Chage自宅スタジオ)に河野健太郎くんとかウチのスタッフと集まって、「さあ、何作ろうか!?」というところから始まったんですよ。ただ、ソロ25周年なので、僕のベースにあるUKロックというものを軸にして形にできないかなっていうのはあって。そこからみんなで雑談していくうちに、「やっぱりギターリフ大事だよね」ということになって。それで、“なんちゃってギターリフ”の曲を(笑)、プリプロで作っていったら出来上がったのがあのマイナー調のロックの楽曲で、「ギターリフをフィーチャリングしたい」ということを十川くんに伝えてあの曲を渡したら、彼が素晴らしいギターリフを考えてくれまして。
そうそう! そのオケを聴きながら歌詞を考えてたら、だんだんイメージが湧いてきて、リフが駆け上がってるんでサビでは逆にブンと落ちていく感じがしたので…。絶叫マシーンで言えば、カタカタとゆっくり高いところまで上がっていって、1回止まったと思ったらいきなりガーッと落ちていくような、そういう感じのイメージがあって、それを言葉にしようとやっていたんですけど…。実は僕ね、2年前から毎月“オンライン・ファンミ”というのをやってるんです。50人を2回に分けて25人ずつ、月2回やってるんですけど、ある時…、この冬だったかな、25人ざーっといらっしゃるなかの1人が、「Chageさん、次に曲を作るときは、ちょっとデンジャラスな曲作ってくれませんか?」って。「なんかゾクゾクするような、日常を忘れさせてくれるような、ちょっとアウトロー的なChageさんをお願いします」と、おっしゃったんです。そしたら、他の24人が大きく頷くんですよ! その「現実離れしたい」「ライブでそういうChageさんを見たい」というファンの声からインスパイアされたところもあると思いますね。
そう、ねじれ感を出したかったんです。言葉でね。昨今のコロナも影響してると思うし。ホント、不条理だったから。それでも、みんな、強く、たくましく生き抜いてきたわけじゃないですか。そういう気持ちも入ってる気がします。