鈴木このみ 10th Anniversary Live ~LOVELY HOUR~
2022年10月1日(土)日比谷野外大音楽堂
2022年4月にアーティストデビュー10周年を迎えた鈴木このみさんは、6月に個人事務所「115」(誕生日の11月5日にちなんで)の設立、6月の東名阪のAnniversary LIVE TOURに続き、4年ぶりとなる日比谷野音での記念ライブを開催。タイアップ、ヒットソングに新曲披露と出し惜しみないステージに!
ステージ上には中央から隔てて、左右に黄色と白の縞模様で描かれたボード上に、それぞれ「LOVELY」と「HOUR」のネオンライトが。まるでショートケーキのようなポップでかわいいセット。開演時間になるとオーバーチュアが壮大に鳴り響いた後、「Love is MY RAIL」のイントロと共にこのみさんが「ただいま!」と叫んで飛び出してきた。疾走感あるバンドサウンドにのって、ハツラツとエモーショナルに。2Bの「だから止まらない」ではニュアンスを込めながら高々と天に向けて指差し、2サビラストの「走るよ」の語尾もあふれ出る感情を抑えられないようにひときわ高く。そしてDメロの「信じていたい」ではロングブレス。1曲目なのに既に終盤のような熱さ。アウトロになると「『LOVELY HOUR』へようこそ!」と絶叫。
続く「This game」はイントロから一転して激しいバンドロックに、このみさんも言葉の速射砲のようなAメロからハイキーなサビではファルセットも駆使して情熱的に歌う。例えれば暴れ馬を乗りこなす騎士のような。3曲目の「Mirror, Mirror, Mirror」もアッパーチューンで勢いは止まらず。挑発的な表情を見せたかと思えば、アウトロで華麗にくるりと一回転。歌声とビートに体を委ねつつもその一挙手一投足に目が離せない。
ロッククイーンらしくタイトな3曲を歌い終わると息を整えながら「LOVELY HOUR 無事に晴れたよ~!」と満面の笑顔で絶叫。「この日のために徳を積んできましたよ。私、雨女なの。フェスで自分の番が来たら大雨が降って歌えなくなったことがあったり、9月は天候も不安定だったから大丈夫かなと心配していたけど、無事に晴れ女になりました」と喜びを爆発。4年ぶりの日比谷野音でのライブということで皆さんへの感謝を口にしつつ、「前回は『MAGIC HOUR』というタイトルで、一緒に夕日の時間を迎えに行こうというコンセプトで歌わせていただきました。今回は私の『LOVELY』な空間へ皆さんをご招待したいなと思っていましたが、想像以上にバキバキのゴリゴリ(のセットリスト)になっちゃいました」と笑うこのみさん。
また夏はライブ続きだったというこのみさんは「『花の慶次』のイベントでチャイナドレスを着て出演しましたが、普段はふわっとした衣装を着ていることが多いため、いつも通り楽屋でくつろいでいたら、衣装が破れてしまっていて。でもスタッフさんがその場で縫ってくれて。衣装が破けてもライブができたので、『ダメージ小でした』! とおもしろエピソード付の曲紹介。拡声器を手にしながらパンキッシュかつメタルっぽいオルタナティブなナンバーで、野性爆弾のくっきー!さん作詞のトリッキーな歌詞(「畳のほつれをモミモミしながら煮込んで食うか? 刻みドレッシング」etc…)を、表情や歌い方を変えながら気持ちよさそうに歌うこのみさん。お客さんの体の揺れや腕の上げ下げのアクションも大きく。
お客さんも序盤で既に汗だく状態になったところで、「みんなの体の細胞を疲れさせたので、次は癒しにかかろうかなと。皆さん、一緒にカンパイしたいと思うので、飲み物を用意していただけますか?」とこのみさん。お客さんたちがドリンクを手にしたのを見計らって、「10周年に、みんなとまた野音に帰ってこられたことをお祝いして、カンパ~イ!」とジョッキを高く掲げると、カントリー&ケルト調のイントロが鳴り、このみさん作曲の「Humming Flight!」へ。オーバーオールを着た女性ダンサー4人が登場し、フォークダンスのような振り付けでこのみさんも加わって5人でダンスしたり、お客さんも手拍子。間奏後にはソファーとくまのぬいぐるみ(このみさんの私物で名前はくまお)が運ばれてきて、ソファーにダンサーと腰かけるとくまおの両手を持って操りながら歌ったり、すっかりリラックスムード。今度は落ち着いたピアノソロからさわやかなバンドサウンドの「アルカテイル」。日が落ちた野音で、「夏の足跡」や「夏の面影」の歌詞など過ぎ行く夏を感じながら心地よさも。
そしてステージの照明が真っ赤に染まる中、デビュー曲「CHOIR JAIL」。アップテンポのロックナンバーながら途中でテンポが落ちたり、感情の揺れ動きが激しい楽曲を何事もなく歌うこのみさん。思い起こせばリリース直前の2012年4月1日、OP曲として流れるアニメ作品のイベントで初めてこのみさんのパフォーマンスを見たが、「デビュー曲によくこんな難しい曲を歌わせるな」と思ったこと、そして演奏はカラオケにも関わらず、お客さんを圧倒するパフォーマンスのすごさに「これでまだ15歳なんて」と驚いたことを覚えている。歌唱後、「この曲は今日、絶対にハズせないと思って。この時、15歳だって!? 若い(笑)。レコーディングに行くたびに、『ちょっと背が伸びたんじゃない?』とか『どんどん成長していくね』とか言われることが多くて。1カ月でそんなに変わるものかなと。最近は年下のアーティスト仲間が増えて、こういうことを言っていたんだなと感じています」。
またここまでの10年を振り返り、「かけていただいた期待に対して、これなら信用できると思っていただき、たくさんの人に繋げていただいて、歌ってこられた10年間だったなと今、歌いながらひしひしと感じていました」。そして「15歳の時には社長になるとは思ってなくて。株式会社115の代表取締役、鈴木このみです!」と改めてごあいさつ。「今、現場で名刺交換していますが、初めて交換したのはTRUEさんでした。こんな未来が待っているなんて思わなかったなということがたくさんあって。でもみんながいつもいてくれるからできたこともたくさんあって、今も……言っちゃえ! 新曲を制作していたり、ライブも来年いろいろと考えております。来年の2023年11月5日のお誕生日にはライブハウスをおさえてあるので、ぜひ遊びに来てください!」と来年の予定まで。こんなことを発表できるのも社長になったから?(笑)
ここで10月26日発売の23thシングル「Love? Reason why!!」(10月新番組『恋愛フロップス』OPテーマ)をライブで初解禁。お客さんにはライブグッズのペンライトにあるボタン(このみさんいわく「LOVELYボタン」)を押すとグラデーションに光るので、ぜひ掲げてほしいと。更にサビで、ペンライトでハートを右と左で2回描いて、ハイタッチという振り付けもお願い。急なオーダーも練習1回目でクリア、スピードアップしても問題ないのはさすが鈴木このみファン! Q-MHz(UNISON SQUARE GARDENの田淵智也さん、畑亜貴さん、田代智一さん、黒須克彦さんらのクリエイター集団)らしい音色豊かで軽やかなポップチューンながらもリズムが速いナンバーをさわやかに。サビの盛り上がりではみんなと練習した振り付けをしながら歌う姿は楽しそう。「恋しちゃえよ」のセリフ風のフレーズはキャラクターっぽく。大サビでは銀テープ発射の特殊効果も。
「Tears BREAKER」までアッパーな曲が続いた後、幻想的かつ壮大なインストナンバーが流れると「銀閃の風」。Aメロの聖らかな歌声から徐々に力強く、サビではファルセットを使いながら高らかに。戦記作品のOP曲らしい激しさやはかなさを表現。「後半戦も楽しんでいきましょう!」と叫んで「カオスシンドローム」。黒いコスチュームを身にまとったダンサー4人をしたがえ、凛々しくカッコよく。
MCコーナーになり、「せっかくだから」とソファーに座るとバンドメンバーに「来年やりたいことありますか?」と問いかける。「めちゃくちゃ難しい曲だけ集めたライブ」や「ビルボード東京でやったようなしっとりしたライブ」という意見を聞いたこのみさんは「ゴリゴリDAYとしとしとDAYの2DAYSは? 一度会社に持ち帰ります(笑)。いろいろなことを考えているので来年も一緒に楽しめたら」。
「ここで野音の夜に似合うような新曲を持ってきました。ちょっともどかしいですが、いつも思っていることを、歌を通して伝わってくれたらいいなと。鈴木このみの秘密の夜を見てください」と紹介して「シークレットコード」。R&Bっぽいおしゃれなサウンドで、等身大のこのみさんを感じられる歌詞、歌声もどこかアダルトに。このみさんの楽曲には今までないタイプの曲かも。ハットをかぶった男装したダンサーが登場して、このみさんの手を取ってエスコート。続く「明けない夜に」もこのみさん作詞のバラードナンバーで、自身の素直な気持ちを歌っているかのよう。途中でセリフ調になったり、スキャットのような歌声になったり、ミュージカルの1シーンを見ている気分。次のスカっぽいリズムの「命の灯火」ではシンプルではなく、アダルトさやワイルドさなど1曲の中でいろいろな感情を表現。鈴木このみ七変化をたっぷり堪能できたゾーン。
バンドが刻むリズムに合わせて会場から自然に手拍子が起きると、「みんな、いい顔してますね。私もめっちゃ楽しいです。みんな、たぶん欲張りでしょ? もっと楽しみたいんじゃないですか? もっとウルトララブリーになりたいんじゃないですか? みんなで最高に輝いていきましょう!」と「ULTRA FLASH」。10周年記念アルバムのタイトルチューンであり、「紅蓮華」を手掛けた草野華余子さんとの共作曲で話題になったポップ&ライブチューン(このみさんの曲名が歌詞中にたっぷり)。お客さんと一緒に振り付けするパートがあり、客席から3人指名してステージに上げると一緒にダンス。「Theater of Life」はこのみさんらしいロックチューンで、間奏で「10周年ありがとう!」と叫ぶと、ずっと舞台セットに立てかけてあった大きなフラッグを手にして振り回す。「ラスト1曲の前にひと言だけ言わせてください。私の10周年がこんなに最高なのは、どう考えてもお前らが悪い!」とラストナンバー「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」へ。ハイトーンボイスで歌ったり、「ホレろ ホレろ」や「モテろ モテろ」のフレーズやデスメタルっぽいコーラス、曲途中に転調して「JUMP! JUNP!」とお客さんに要求するなど破天荒すぎる!? 「11周年もよろしく!」と叫んで、ラスサビもハイキー全開。本編ラストらしからぬカオスさ。
アンコールの大きな拍手に呼び込まれて1人で再登場したこのみさんはお客さんにも「座って大丈夫だよ。ちょっとゆっくり話そうと思います」と言いながら自身もソファーに腰かけた。まず自身が着用しているスカートを指差し、「この10年分の衣装で作ってもらったスカートです。カウントダウンライブ(『鈴木このみCOUNTDOWN LIVE 2017~2018)』や1stワンマンツアー(2015年『鈴木このみ1st Live Tour~Nice to Me CHU!!!~』)、これは「Curio City」の衣装かな? そしてこれが4年前の野音のスカートです」と懐かしそう。「いろいろな想いをたくさんの方に注ぎ込んでもらってステージに立っていますが、改めて10周年はすごいことだなと。皆さん本当にありがとうございます。10周年といってもまだまだこれからだしと思っていましたが、今年1年10周年記念のライブツアーとかメモリアルなライブをたくさんやらせていただいて、みんながこんなにお祝いしてくれるんだといつも肌で実感して、10年やってきてよかったなとライブのたびに思わせていただいています」としみじみ語る。
「変わったような気がするし、全然変わっていない気もするし、不思議な気分ですが、予想外の連続だったなと思います。よく続けていられたなと思うことも何度かありましたが、そのたびに運命的な楽曲と巡り合って、支えてもらって。スタッフの皆さんが自分の家族のように感じてもらえたり、ライブって一人ではできないなとみんなといる時に感じていて。そのたびに私はまだまだ歌っていきたいし、もっともっとやれることがあるはずだと。だから今ここにいられるのは一人ひとりの言葉や熱量がいつも自分につながっていて、本当に感謝しています。今までいろいろな選択をしてきましたが、ことあるごとにみんなに助けてもらって。社長になるなんて思ってなかったし、15歳が思い描いた道ではなかったけど、振り返ってみて今日、これでよかったなと思うことがぱっと頭の中に浮かんできて。いつかよかったなとみんなとライブをしていれば思えるんじゃないかなと。10周年通過点だったねとか10周年より今がもっともっと楽しいよねとみんなと言い合えるように、これからもいい、ワクワクするライブを作っていきたいなと思っていますので、11周年目もその先もよろしくお願いします」と想いを語ると会場から大きな拍手。
「今日は何かお返しができないかなと思って1曲練習してきました。一緒におうちにいる気分で聴いてもらえたら」とギターを手にして、自身作詞の「あなたが笑えば」をしっとり弾き語り。そしてバンドを呼び込んで、ロックチューン「Bursty greedy Spider」。「Wow,oh-oh-oh」の会場のレスポンスパートは声を出す代わりに腕やペンライトを大きく振りまくるお客さん。次の曲にということで、「ここでプランを変更しようと思います。今日はやらないでおこうかなと思っていた曲がありますがやるか。10周年だし」と各バンドメンバーの元に行って、耳打ちして演奏が始まったのは「DAYS of DASH」。ロックながらも美しいメロディラインとエモーショナルさが印象的な曲。「言葉がいらない世界」や「未来をさぐる覚悟決めた途端もっと変わる」など自身の心境と重なる部分もあるのだろう。「11周年ももっと行くよ!」。この日のメモリアルライブを締めくくるのは「Redo」。きっとこのみさんにとって大きな出会いとなった曲の1つのはず。速いリズムとスピードダウンが交互に訪れるA、Bメロからアグレッシブなサビになり、サビの終盤では会場全員が大きく前後にヘッドバンキング。初めてイベントで披露した時を見ていたが、今こんな一体になるナンバーになっているとは。
全曲歌い切ると「楽しかったね~! また野音したいね」と満足そうなこのみさん。「Love? Reason why!!」のインストナンバーが流れる中で、サビの振り付けをしながら笑顔で、会場のお客さんに何度も手を振り、「ありがとう!」と頭を下げ、バンドやダンサー含めて、客席をバックに記念撮影。そして「みんなのおかげでLOVELYな時間になりました。来年もLOVELYをご用意していますので、皆さんお見逃しなく! ではまた会いましょう!」と言いながらステージを後に。
10周年記念のメモリアルライブらしく、代表曲や人気曲に、新曲初披露、弾き語りなど出し惜しみのない内容。自身が社長となり、11年目に突入するこのみさんだが、心強い後押しを感じたのでは? 「Love is MY RAIL」のフレーズ「動き出した先は足跡のない未踏の地だね だけど止まれない」のごとく、このみ社長はファンと一緒にエネルギッシュ、そして楽しく今後も突き進んでくれるだろう。
SET LIST
01. Love is MY RAIL(TVアニメ『アンジュ・ヴィエルジュ』オープニングテーマ)
02. This game(TVアニメ『ノーゲーム・ノーライフ』オープニングテーマ)
03. Mirror, Mirror, Mirror(スマホゲーム『Re:ゼロから始める異世界生活Lost in Memories』主題歌)
04. ダメージ小でした
05. Humming Flight!
06. アルカテイル(PCゲーム『Summer Pockets』オープニングテーマ)
07. CHOIR JAIL(TVアニメ『黄昏乙女×アムネジア』オープニングテーマ)
08. Love? Reason why!! ※新曲(TVアニメ『恋愛フロップス』オープニングテーマ)
09. Tears BREAKER(スマホゲーム『アンジュ・ヴィエルジュ』主題歌)
10. 銀閃の風(TVアニメ『魔弾の王と戦姫』オープニングテーマ)
11. カオスシンドローム(TVアニメ『CHAOS;CHILD』エンディングテーマ)
12. シークレットコード ※新曲
13. 明けない夜に
14. 命の灯火(TVアニメ『ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド』オープニングテーマ)
15. ULTRA FLASH
16. Theater of Life(TVアニメ『デカダンス』オープニングテーマ)
17. 私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い(TVアニメ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』オープニングテーマ)
ENCORE
01. あなたが笑えば
02. Bursty greedy Spider(TVアニメ『蜘蛛ですが、なにか?』後期オープニングテーマ)
03. DAYS of DASH(TVアニメ『さくら荘のペットな彼女』エンディングテーマ)
04. Redo(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』オープニングテーマ)