2022年3月9日に3rd Full Album『Purple』をリリースしたkoboreが、4月9日の千葉LOOK公演を皮切りに29本に渡る全国ワンマンツアー「VIOLET TOUR 2022」をスタートさせる。佐藤 赳(Vo&Gt)と田中そら(Ba)がソングライターを務め、バンド全員で意見交換をしながらサウンドを一つひとつ吟味したうえで作られた『Purple』。汗を感じさせるパンクチューンから、奥行きのある豊かなバンドサウンド、管楽器などを用いたミドルナンバーなど、様々な挑戦のなかでバンドが元来持っているポップセンスをより磨きあげた作品となった。この楽曲たちの背景には、4人のどんな心情や関係性があるのだろうか。koboreの現在のモードを、佐藤と田中に訊いた。
──最新作『Purple』は、佐藤さんと田中さんがそれぞれデモを制作なさったものと、田中さんが佐藤さんの家に行って制作したものが収録されているそうですね。
佐藤 赳(Vo&Gt)今はこの作り方がしっくりくるんですよね。やっぱりスタジオで4人でバッと音を鳴らして作っていくと、音を一つひとつ選んだりできないというか。でも作り込んだデモを持っていくと、自分の鳴らしたい音のイメージをそのまま伝えられるんです。
田中そら(Ba)今回みたいな作り方も面白かったけど、こういう作り方もアリだな、くらいの感覚です。そのうちまた4人で集まってバン!と音を鳴らして作りたくなる時期が来るんだろうなと思うし、そのときはそういう作り方をすればいいなというか。
佐藤ソングライターがふたりという状況も、ごくごく自然な流れだったんです。勝手にそうなっていった。僕が作ってようが作ってなかろうが、いいものはいいじゃないですか。いい曲ならやればいいし、いい曲ならやりたいし。
──となると、そらさんの作った曲に刺激を受けたりも?
佐藤んー、そういうのとは違いますね。自分の足りないところをそらが埋めて、そらの足りないところを僕が埋めた感じです。だから一緒に作ってきたっていう感覚が大きいし、“いい曲だからやろう”というだけです。そらと僕が10曲ずつデモを持ってきて、アルバム10曲中9曲がそらの曲になったら話は変わってきますけど(笑)。
──あははは。田中さんはこれまで佐藤さんが制作してきた楽曲があったうえで曲作りをなさったと思うのですが、心持ちとしてはいかがでしたか?
田中作曲はいつもの感覚で臨めたんですけど、歌詞はものすごく悩みました。そもそも僕が歌詞を書いていいのか?って。誰も求めてないと思うし。
佐藤そんなこと考えてたんだ(笑)。
田中考えるよ(笑)。koboreの歌詞は赳が思っていることを書けば成立するし、歌うのは赳だし、僕は歌わないし。“ヒロトとマーシー”とかザ・ビートルズみたいに、バンドにソングライターがふたり以上いるのは憧れでもあったんですけど、そのポジションは僕にとって荷が重くもあって……でもそれでもやりたいなと思った。
──それだけ大きな気持ちがあったうえで作詞をなさったと。
田中曲を作ってるうちに、音だけでは出せないメッセージ性をつけたくなったのかな。音だけで伝えられると思っていたけれど、ちゃんと文字にしたいなーと思うようになってきたんです。それで赳に“歌詞を書いてもいい?”と訊きました。
──ソングライターとしての意識が、より開花した作品でもある?
田中僕はもともと、何よりも曲を優先してしまうタイプなんですよね。ほかのパートを際立たせるために、ベースを抑えることを厭わない。でもその頻度が高すぎるから、バンドとしてのバランスが悪くならないように気を付けないとなと思っていますね。ベーシストとしての我を出していきたいなと思っています。
佐藤だからソングライティングというよりは“サウンド”かもね。デモはすんなり出来上がっていったけど、サウンドで論議することが多かった。
──たしかに、1曲目「ジェリーフィッシュ」のイントロから、これまでにないほど奥行きのある音像が実現していて、どの楽曲も音作りは細かいところまでじっくりこだわっていることがわかります。
佐藤ミックスにもめちゃくちゃ時間掛けましたね。聴いてみて“もっとここをこうしたい”や“一旦違うパターンを試してみたい”を何度も何度も繰り返して、最終的にいいものを選出したというか。だから出てきたものに対して“最高じゃん!”と思ったというよりは、とにかくいろんな場所に行って、いいと思うものを取捨選択していった結果にたどり着いた“最高”というか。選ばれし11曲という気がしてますね。
──『Purple』は新しい試みに富んだ作品でありつつも、koboreがもともと持っているポップセンスや、ひとつのジャンルにとらわれない音楽性など、もともと持っていた個性が磨かれた作品なのではないかとも思います。
佐藤たしかに身の丈に合ってないことはしてないですね。『Purple』は自分のやりたいことをやった結果だし、いちばん自分たちにとって自然なことだった。僕は求められているものに応えていく作業がいちばん嫌いなんです(笑)。“こういう音楽をやりなさい”と言われてそれに従うなら、自分が音楽をやる意味はないなと思うんですよね。もちろんいろんな意見を取り入れるのは大事なんですけど、それをやりすぎると今の自分のやりたいことがわからなくなっちゃうこと、あるじゃないですか。
──そうですね。
佐藤koboreは速い曲が多いし、そういう曲が好きな人も多いんです。ライブでめっちゃ盛り上がってくれる人が増えてきたなかでコロナ禍に入っていったから、koboreの曲で盛り上がれなくて不完全燃焼になったお客さんは多い印象があるんですよね。だけど『Purple』はミドルテンポの曲が多くて、“速い曲が聴きたかった”という意見も聞くんです。ニーズって難しいなあと思うんですけど……。
──今のkoboreがやりたい音楽を作っていくことが何よりも大事だから、ということですね。
佐藤そうですね。いつもどおり、僕たちのやりたいことを念頭に置いて作れたアルバムです。自分を見失わないことを大前提に、新しいものは取り入れていきたいと思っていますね。昔の速い曲もライブでがんがんやってるし、今のkoboreを判断するならライブを観てほしい。今のkoboreがいいと思う人はついてきてくれたらうれしいし、今のkoboreがピンと来ないなら、それはしょうがないなと思うから。