奥田民生「ひとり股旅 2020」
2020年11月25日(水) Zepp Tokyo
奥田民生のツアー『ひとり股旅 2020』が、11月25日(水)Zepp Tokyoでファイナルを迎えた。11月17 (火)・18日(水)東京EX THEATER ROPPONGI、20日(金)福岡Zepp Fukuoka、22日(日)広島上野学園ホール、23日(月・祝)Zepp Namba、そしてこの25日(水)Zepp Tokyoの、全6本のツアー。
本人のMCによると、当初は別名義で回るツアーとしてスケジュールを切ったが、新型コロナウイルス禍になったため、こうしてひとりで回るツアーに切り替えた、とのこと。入場者は定員の半数、全会場にイスを出して一席飛ばし、検温実施やマスク必須や歓声NG等、新型コロナウイルス感染防止のガイドラインに沿った形で、開催された。
また、6公演すべて、LINE LIVE-VIEWING で生配信を行い、本番から1週間後までアーカイブ視聴も可能。毎日生配信する、ということは、毎日セットリストが違う、ということである。6日とも、終演後に、音楽配信サービスにその日の曲順のプレイリストがアップされる、という企画も実施された。
ライブは2部構成で、1部は弾き語りで8〜9曲。この日は「近未来」「解体ショー」「何と言う」「羊の歩み」「股旅(ジョンと)」「カイモクブギー」「TAIRYO」「私はオジさんになった」「車も電話もないけれど」の9曲が歌われた。
各地で歌ってきた「羊の歩み」や「股旅(ジョンと)」は、リリースされたばかりの映像作品『カンタンバーチャビレ』に入っている、その宣伝をしなきゃね、という理由であることを、本人が説明。
「カイモクブギー」は、このツアーでわりと久々にやって、「お、いいね、と。しかも、このご時世にも合ってるね」と思った、という紹介から歌われた。確かに「あたりまえみたいな顔してろ でないと今をのりきれないぞ/いまや何もかんもゼッするぜ まさにこれ小説よりキナリ」というラインなどは、まさに今の世の中の状況に直面して書かれたかのようだ。
EBIの50歳記念ライブの時に作られた「TAIRYO」は、ライブで愛用している、自分の曲の歌詞とコードがすべて入っているタブレットの中に、「(EBIの曲なのに)なぜか入ってた」という理由で披露。「♪三滝舟入己斐峠」というラインに「広島の人しかわからないんですよ」、というふうに、歌いながらいちいち歌詞にツッコミを入れる。
続いては、自身の50歳記念ライブの時に発表した「私はオジさんになった」。近年作った曲の中でも個人的に気に入っている、せっかくだから最終日にやろうと思います、という紹介。曲の最後の「♪すーるーわきゃなーい」のリフレインでは、会場で歌えない人たちの代わりに、配信画面のTLがその文字で埋まる。
そして、ユニコーンの「車も電話もないけれど」で、一部は終了。OT、いったんステージから去り、休憩時間になる。配信画面は、テレビショッピング風に、自ら今回のツアーのグッズを紹介する映像に切り替わった。
二部は、ひとりで全楽器を演奏して、アナログの8チャンネルのレコーダーに多重録音するさまを見せる、YouTubeのオフィシャルチャンネルの企画『カンタンカンタビレ』で作ったバック・トラックに合わせて、ギターを弾いて歌うコーナーからスタート。ステージの左側が一部で使った弾き語りコーナー、右側が機材に囲まれた『カンタビレ』コーナーになっている。
それから、このコーナーでは、『カンタンバーチャビレ』(これもYouTubeの企画)と同様に、ステージ後方のグリーンバックに、背景としてその土地ならではの写真を写し、合成したさまを、ステージ中央に出したモニタ画面で見せながら演奏する。この日はZepp Tokyoの隣にある観覧車や、お台場の海、東京タワーなどが写し出された。お台場を象徴する「あいつ」も撮りに行ったが、「権利の関係で」断念した、とのことで、塀の写真を出して「この向こうにいます」。
そして「最終日ということで祝福も届いてますんで、紹介したいと思います」と、マキシマム ザ ホルモンから届いた花も画面に映してみせた。
アナログレコーダーのリールで次の曲を頭出しするのに時間がかかったり、チューニングが異なる白と赤のセミアコ・ギターを曲によって使い分けたり、バックの写真の切り替えの操作が大変だったり、もっとも手間がかかるのはこのコーナー。
初日は、バックの写真出しがうまくいかなくて何度もスタッフが手伝ったり、ギターを弾こうとして「あ、こっちじゃなかった」と持ち替えたりするなど、ちょっとバタバタした様子だったが、この日はツアー最終日だけあって、もうすっかりスムーズになっている。
THE COLLECTORSに提供した「悪い月」、最新シングルである「サテスハクション」、『カンタンカンタビレ』でさまざまなアーティストと共に録音した「トキオドライブ」、『カンタンバーチャビレ』で「ひとり東京スカパラダイスオーケストラ」を演じた「Paradise Has No Border」の4曲を、このブロックでプレイ。
「PARADISE〜」では、当然ながら、歌わずにスライドホイッスルを吹く。演奏前に「やればやるほど下手になってる気がする」と言ったOT、演奏後には「やっぱり最初にやった日がいちばん上手かった。見逃し配信で観てみてください!」。
ちなみに、ツアー初日のこのコーナーは、「俺のギター」「モグラライク」「サテスハクション」「トキオドライブ」の4曲だった。
それから、初日はヘッドホンを使っていたが、「ヘッドホンするってことがすごいストレスってことがわかった。すごい孤独でしたよ、間違いとか全部わかるし」という理由で、2日目からはやめた。
そして、ここで弾き語りスペースに戻って……という日もあったが、この最終日はそのまま『カンタビレ』スペースでもう1曲。アナログレコーダーは使わず、チープなリズムマシンとぶっといセミアコに合わせて、もっとぶっとい声で「最強のこれから」を歌う。
で、弾き語りスペースに戻り、「今回いろんな曲をやったんだけれども。何がウケたんだろうね……」としばし思案し、「やっぱ『KING of KIN』かな」。客席からの拍手に「少ねえな、拍手が」とリアクション。拍手、さらに大きくなる。
「でも、もうあんまり時間がない状況で……いや、やろう。一番だけやろう」と、「KING of KIN」をプレイ。そして、本編のラストは、「すばらしい日々」と「さすらい」、ユニコーンを代表する名曲とソロ奥田民生を代表する名曲の二連打。27年前に書かれた曲と、23年前に書かれた曲である。これが、本当にすばらしかった。会場のオーディエンス、声は出さなくてもマスクの内側で、口は動いていたんじゃないかと思う。自宅でPCやスマホで観ている人たち、みんな、歌っていたんじゃないかと思う。
曲を終え、手元のキーボードのボタンを押して開演時&終演時のおなじみのSEを出したOT、立ち上がって挨拶するが、そのSEを止めて「アンコールありがとう!」と、いったんはけるのを省略して座り直す。これも、このツアー、全公演共通である。
「こんな状況で、みなさん立つこともできず、盛り上がることもできず。代わりにがんばってくれた、ハバレロくんです!」と、最前列の右の方にいて、MCのたびにブワーッと膨れて揺れ動くバルーン人形を紹介。
で、目の前のオーディエンスに、「(今後も)またいろいろやってみますんで、よろしくお願いしますね」と挨拶。そして、カメラ目線で「配信で観ている方も、ありがとうございました。最後の曲は、この現場では歌えないので、みなさん歌ってください」と呼びかけてから、「イージュー★ライダー」へ。
歌い出しの「♪何もないな 誰もいないな」から「話しながら 歌いながら」までは、口だけ動かして声は発さず、PCやスマホの前の人たちにメインボーカルを任せるOT。画面右のTLが、配信で観ている人たちが打ち込む歌詞で埋まっていく。それらの声は、「幅広い心を 幅広い心を くだらないアイデアを 軽く笑えるユーモアを うまくやり抜く賢さを」のところで、いっそう多くなった気がした。
年が明けて2021年、1月31日から2月26日まで、MTR&Yで全国11ヵ所を回るホール・ツアー『MTRY TOUR 2021』を行うことと、そのツアーも全ヵ所で生配信を行うことが、既に発表されている。
『ひとり股旅2020』は、ひとりだから毎回がんがんセットリストを変えられたが……というか、そもそも以前から『ひとり股旅』は、前もってセットリストを決めずにステージに上がるのがデフォルトだが、バンド編成で全公演生配信ありだと、どうなるんだろう。今回と同じようなことをやるんだろうか。さすがにそれは無理だろうか。いずれにせよ、楽しみに待ちたい。
SET LIST
01. 近未来
02. 解体ショー
03. 何と言う
04. 羊の歩み
05. 股旅(ジョンと)
06. カイモクブギ―
07. TAIRYO
08. 私はオジさんになった
09. 車も電話もないけれど
10. 悪い月
11. サテスハクション
12. トキオドライブ
13. Paradise Has No Border
14. 最強のこれから
15. KING of KIN
16. すばらしい日々
17. さすらい
EN1. イージュー★ライダー
プレイリストはこちら!
https://okudatamio.lnk.to/20201125
ツアー「ひとり股旅2020」各地のライブ映像から1曲をチョイスしYouTubeで随時公開中!
奥田民生『ひとり股旅 2020』見逃し配信
各公演日の1週間後23:59まで、お好きな時間に何度でもご覧いただけます。