fox capture plan「DISCOVERY Release Live」
2020年11月19日(木) 東京国際フォーラム ホールC
11月19日、fox capture planがワンマン公演「DISCOVERY Release Live」を東京国際フォーラム ホールCで開催した。本公演は最新アルバム『DISCOVERY』のリリースに伴うもので、新作からの楽曲を中心に、2部構成でアンコール含め全16曲を披露。「発見」を意味するタイトル通り、バンドの現在地を「発見」できるライブであると同時に、来年の結成10周年イヤーを目前に控えたバンドの魅力を改めて「再発見」できるライブでもあった。
ステージ前方に張られた紗幕にバンドのロゴと3人の影が映し出される中、「CROSS VIEW」でライブがスタート。大胆な曲調の変化に合わせるかのように、曲中には様々なライティングも加わって、ホール公演らしいド派手な演出での幕開けとなった。曲の後半で紗幕が上がると、そのまま「衝動の粒子」へ。バンドの最初期の楽曲であり、ポストロック譲りのポリリズムとアグレッシヴなドラミングで「現代版ジャズロック」としてのイメージを決定付けた一曲。さらに、井上による手数の多いドラムンベース風のビートと、岸本によるリアルタイムのエフェクト使いがクラブカルチャーとのリンクを感じさせる「Butterfly Effect」へと続き、まさに彼らの魅力を「再発見」する立ち上がりとなった。
カワイがアップライトベースからエレキベースに持ち替えて、ここからは『DISCOVERY』の楽曲を立て続けに披露。アルバムのタイトルトラックとも言うべき「Discovery the New World」は、キャッチーなシーケンスのフレーズが耳に残り、おかもとえみやSurvive Said The ProphetのYoshら、ボーカリストとのコラボによる歌メロ追及の成果も感じられるが、むしろタイトルの引用元であるDAFT PUNKが「One More Time」でボーカルをフィーチャーしたときの、開かれたポップさに通じるものを感じた。
こちらもポップな印象の4つ打ちナンバーで、推進力のあるエレキベースがよく似合う「Sprinter」に続いて、岸本がエレピを弾く「夜間航路」ではステージ上方にミラーボールが現れ、場内がキラキラとした青い光に包まれる。「夜間航路」はJamiroquai「Virtual Insanity」のオマージュ的な部分があり、ここでもUK/ヨーロッパのクラブシーンとの接点を感じさせると、最後は「エイジアン・ダンサー」でファーストセットを締め括った。
換気の意味も含めた休憩時間を挟んで、セカンドステージは『DISCOVERY』からの「Into the Spiral」でスタート。LED照明と3人を照らすスポットライトに、ストリングスとホーンを配した派手なアレンジも加わり、ファースト同様にインパクトのあるオープニングだ。続く「PRDR」は「ポリリズムダンスロック」を意味し、ファーストで2曲目に披露された「衝動の粒子」をよりダンスミュージック寄りのビートにして、2020年に更新する一曲。この曲がセカンドの2曲目に置かれたのは、明確なメッセージを感じさせた。
曲後半の歪んだベースと手数の多いドラムが楽曲のドラマ性を加速させる「Spread Out」に続き、「Narrow Edge」では再びカワイがエレキベース、岸本がエレピを弾いて、井上は重めのヒップホップビートを刻む。さらには、プログレッシヴな構成の中、ストリングスと岸本のシンセソロが交錯する「NEW ERA」と、一曲ごとに様々な表情が「発見」できるのは、長い制作期間を経て完成した『DISCOVERY』ならでは。
バンドのライブ感を担う井上による高揚感たっぷりのドラムソロを挟んで、壮大なストリングスに、よれたビートやフィルターをかけたベースも加わる「Paradigm Shift」は、現代のサイケデリックなジャズ×ヒップホップに対するfox capture plan流の回答であり、高速のトリッキーなフレージングで魅せるダンスチューン「Capturism」はバンドの真骨頂。ラストは流麗なピアノと4つ打ちによる「Supersonic」でセカンドセットを終えた。
アンコールでは「衝動の粒子」に並ぶ最初期曲の「RISING」が演奏され、印象的なピアノのリフレインにリズムが加わると、場内からは手拍子が起こり、この日一となる一体感とともに大団円。歓声を出せず、思い切りダンスをすることもできない現状には歯がゆさを感じるものの、それでも様々な演出とともにホールでメンバーの演奏を直に堪能できるのは、やはり特別な体験だ。2020年は何かを失った年ではなく、これまで見過ごしてきた価値観を「再発見」し、新たな価値観を「発見」した年。何度となく挑戦を繰り返し、10年目にリーチをかけたバンドのライブからは、そんなポジティブな空気が感じられた。
SET LIST
-1st Set-
01. CROSS VIEW
02. 衝動の粒子
03. Butterfly Effect
04. Discovery th New World
05. Sprinter
06. 夜間航路
07. エイジアン・ダンサー
-2nd Set-
01. Into the Spiral
02. PRDR
03. Spread Out
04. Narrow Edge
05. NEW ERA
06. Paradigm Shift
07. Capturism
08. Supersonic
enc
RISING