『LAMP IN TERREN 日比谷野音ワンマンライブ「Moon Child」』
2019年7月28日 日比谷野外大音楽堂
松本 大(Vo&Gu&Pf)の声帯ポリープ切除手術のために活動を一時休止していたLAMP IN TERRENの再始動公演であった前回の野音ワンマン『ARCH』(2018年8月開催)は、さまざまな感情が渦巻く復活の舞台ゆえに本調子でなかった部分もあり、若干の悔しさが残るライヴとなった。何より、バンドが大きく殻を破った最新アルバム『The Naked Blues』を生み落とす前のライヴだっただけに、今回こそ彼らの真価が問われるというもの。そんな2度目の野音ワンマンは、同作のラストを飾る楽曲「月のこどもたち」から『Moon Child』と銘打たれた。
台風6号による熱帯低気圧の影響が心配されたものの、蓋を開けてみれば当日は見事な晴天。青空が顔を覗かせ、セミの鳴き声も夏らしく聞こえている。ステージ後方にはバンドロゴと満月のオブジェがシンプルに掲げられる中、いよいよ開演の時が近付く。
開演時刻を少し過ぎた頃、まずは川口大喜(Dr)が静かに登場。ドラムセットにスタンバイしてビートを奏で出すと、大屋真太郎(Gu)、中原健仁(Ba)、松本の3人が続けてステージへ現れ、「Dreams」からライヴはスタートした。途中でピアノ演奏→ハンドマイクに切り替えて気持ち良さそうに歌う松本をはじめ、高ぶりすぎない理想的な平熱感をもって「eve」「林檎の理」と清々しく聴かせる4人。もっと自分たちを曝け出していこうと臨んだ『The Naked Blues』のリリースツアー、さらにその後のエネルギッシュなライヴ活動を経て、メンバーが自信をつけたことが堂々たるパフォーマンスから早くも伝わり、テレンのアンサンブルと野音の風景もいい塩梅で重なっていく。
“ヤバい! 緊張するなあ(笑)。去年を超えなきゃいけないってのもあるし、今までのライヴも超えなきゃいけないのもあるからね。でも、自由に楽しんでもらっていいんで。俺たちもわんぱく小僧になった気分で、心のままに楽しんでいきたいと思います!”と松本が最初のMCで話したあとは、ダークにカオティックに振り切ったブロックへ。中原のベースが滑り込んで始まる「凡人ダグ」では、大屋のギターソロもハードに暴れ狂い、川口のドラムも一段と過熱。激情に駆られるバンドのテンションを受け、ステージを照らす光がどんどん強くなる中、ダーティーなリフとどっしりと地を這うようなリズムの痺れる新曲も披露され、血が滾るのを抑え切れない彼らの最新モードも確認できた。
また、川口が叩くスローテンポのドラムに松本、大屋、中原が繊細な音色で寄り添う「イツカの日記」になれば、ステージバックには星がきらめき、月も明るく灯り出すなど、音の一粒一粒を有機的に響かせ、ライヴを幻想的に彩る、テレンならではの表現がよりいっそう深みを増す。日が暮れていくのをロマンティックな演出にしたり、松本をピンスポが照らして始まった「pellucid」を情感たっぷりに聴かせたりと、今日限りのひとつの作品を作るように自分たちの音を丹念に積み上げ、観客を魅了していった。
静謐なピアノが響く「I aroused」からライヴは後半へ。夜の闇と一体化するように、それでいてますます熱を帯びるように届けられた「New Clothes」への流れ、松本のネイキッドな叫びは、恵比寿LIQUIDROOM公演時よりもさらに鋭く研ぎ澄まされていた。そして、ゾクゾクさせられた状態のまま、疾走感あふれるバンドサウンドが際立つパートに突入! イエロー、ブルー、グリーンとカラフルな網目状のライティングで会場のボルテージを上げた「涙星群の夜」、《愛してくれよ》の声にオーディエンスが熱いシンガロングで応えた「オーバーフロー」、“広い会場だけど、心をもっと近くに! 一緒に踊ろう、いっしょに鳴らそう!!”と松本が呼びかけた「地球儀」を畳みかけた頃には、メンバー全員の表情から自然と笑みがこぼれている。
怒涛の盛り上がりを受けて“最高です!100点あげるわ!!”と大満足の松本だったが、テンパっていたせいで全員でのMCタイムをうっかり飛ばしてしまったそう。ということで、遅まきながらメンバーがそれぞれ想いの丈を語ってくれた。“見て、この天気!すげえよな、俺ら。だって台風来てたんだぜ?最高だよ!”(中原)。“こんばんは、日比谷のみなさん。こんなに人おるんや。すごくない?”(大屋)。“本当どうでもいい話なんだけど、ライヴ中にずっと健仁がこっちを見てくんのよ。で、沖縄で俺と健仁がウミヘビに襲われたことを「地球儀」のときに思い出しちゃって、なんで日比谷でこんなこと考えてるんだって(笑)。ま、そんなことをふと思い出してフフってなっちゃうくらい、心がウキウキしてんだろうね。ここに来るまで、なんだかんだたくさんあったからさ”(川口)。“確かに。バンド名を下北沢のライヴハウスの裏にある駐車場で考えたりね。俺もいろんなことを思い出したな”(松本)。
その後も、イントロでこの日いちばんの照明が鮮やかに灯り、《僕が僕として生きること》を高らかに歌った渾身のブルース「BABY STEP」。ステージの満月が輝きを増してメンバー周りと客席の明るさは抑えられるという情緒たっぷりの演出の中、やさしい歌声と温かな音色に酔いしれた「月のこどもたち」と聴かせ、揺るぎない光を届けたLAMP IN TERREN。上空には、雲の隙間から本物の星もいくつか見えている。深淵なサウンドに乗ってホタルが舞う姿も美しく、夏の夜風がまた心地良い。本編ラストは2度目の野音に向けて作られた新曲「ホワイトライクミー」。自分はどういうものが好きなのか、どういうふうに生きていきたいのか。松本があらためて強く語ったのち、特別な舞台でピュアに解き放ってみせた。
アンコールでは、11月から全国15会場でワンマンツアー『Blood』(至近距離で聴いてほしいため、100~300人規模のハコが中心)が開催されること。さらに、2020年1月にはメジャーデビュー5周年を記念したワンマンライヴ『Bloom』がマイナビBLITZ赤坂で行なわれるという嬉しい発表もあった。“それまでに新曲もたくさん届けられそう”とのこと。最後の最後は“また(野音で)やりたい! 忘れられない一日になりました”の言葉とともに、原点と言える「緑閃光」で大団円。前回を軽々と超える見事なステージを繰り広げたLAMP IN TERRENは、すっかり野音が似合うバンドに化けていた。
SET LIST
01. Dreams
02. eve
03. 林檎の理
04. 凡人ダグ
05. innocence
06. 新曲
07. イツカの日記
08. Water Lily
09. pellucid
10. I aroused
11. New Clothes
12. 涙星群の夜
13. オーバーフロー
14. 地球儀
15. BABY STEP
16. 月のこどもたち
17. ホワイトライクミー
EN
01. 緑閃光