indigo la End、ゲスの極み乙女。、ジェニーハイ、ichikoro。4つのバンドを掛け持ちしながら、盟友・休日課長率いるバンドDADARAYのプロデュース、さらには、アーティストへの楽曲提供やドラマの劇伴など、もはや「自分でも正確な数を把握できていない」(本人談)ほどのプロジェクトを同時並行で進めている川谷絵音。そんな川谷がこの春、また新たなプロジェクトを立ち上げた。その名も「独特な人」。これまでのプロジェクトと大きく違うのは、これはバンド名でも音楽ユニットの名前でもないことだ。しかも、去年末に発表したこのプロジェクトに関して、これまで本人は沈黙を守り続けてきた。「独特な人」とは一体何なのか? 川谷絵音に直撃した。
トレーラー映像
未だに謎に包まれているソロプロジェクト「独特な人」
──「独特な人」は去年行われたゲスの極み乙女。のツアー「ゲスなのか、タコなのか」ファイナル公演で“川谷絵音ソロプロジェクト”として発表されましたが、プロジェクトの詳細に関しては一切説明がありませんでした。(※当日のLIVE終了後、会場に張り出されたQRコードにアクセスしたファンだけに後日、QRコード付きの“年賀状”が届くという手法がとられた。ちなみに、ハガキのQRコードにアクセスすると、「独特な人」第一回公演のチケット購入画面に進むが、そこにも詳細は何も書かれていなかった)なぜこんなトリッキーなやり方で発表したのですか?
なんとなく、ですかね(笑)後付けで何か言うとしたら、これは僕の本業である音楽に関するプロジェクトではないので、何か新しいことをやりたかったんです。公演の内容も一切告知しなかったんですが、それでも興味を持ってくれる人だけに来てもらえたらと。
──4月の公演(4月14日@神田明神ホール)に関しては、一切告知をしていなかったどころか、川谷さん本人のSNSでも全く触れられていませんでした。
そうですね。あえて情報を制限していました。一応、独特な人のインスタアカウントはあるんですけど、具体的なことは何にも載せていないですからね。そもそも、このプロジェクト自体が結構わかりにくいものなので、どう説明しても誤解されてしまう気がして。正直、こうやってインタビューに答えることも躊躇したんですけど、逆に、黙っていることで誤解されることもあるなと思って。
──ファンの皆さんの中では、弾き語りのプロジェクトではないかという予想が多かったようですね。
そう思っていた人が一番多かったんじゃないですかね。まあ、いくつかのバンドを掛け持ちして、次はソロで音楽をやって…… って、一見、自然な流れですもんね。ただ、4月の公演では一曲も演奏していません。その意味でがっかりした方はいたかもしれないです。ただ、そもそも、演奏するとは一言も言ってないですからね。
──4月の公演は全く告知をしなかったのにも関わらず、チケットは即SOLD OUTしたと伺いました。お客さんの反応はいかがでしたか?
公演後のSNSもチェックしましたけど、とにかく、戸惑ってましたね。まだ公演の内容は言えないんですが、僕がお客さんでも戸惑うと思います。かなり贅沢な内容だとは思うんですけどね。実際、僕、この公演のために曲も書き下ろしてますから。ただ、普段僕がやっているLIVEと違うのは、たとえば、映画って、観た後に必ずしも「楽しかった!」と思える作品だけじゃないですよね。観た後にモヤモヤする映画もあれば、いろんなことを深く考え込んでしまう作品もある。それも含めて楽しんでもらえたらと。ただ、大前提、これは“作品”なんで、LIVEのステージにいる僕とは切り離して観てほしいですね。
──先日発表された「独特な人」のトレーラー映像には、川谷さんとお笑いコンビ“さらば青春の光”の森田哲矢さんがコント(?)をしているシーンもありました。
実はあのシーンで何度か音楽がかかるんですが、その曲は僕が書きました。ただ、弾き語りLIVEをすると思っていたところにあんなのがいきなり始まったら、そりゃあ戸惑いますよね(笑)しかも、前回は出演者が全員で20人近くいましたから。でもやっぱり、豪華だとは思いますよ。森田さんなんか、日本トップクラスのコント師ですし、他にもプロの俳優さんや芸人さん、ダンサーの方にも協力していただいています。
「誰かに一言でまとめられないものにしたいなって思いはありますね」
──これは川谷さん主宰の“劇団”ということですか?
いや、そういうことでもないですね。そういう要素もありますけど、それだけじゃないというか。今のところ、出演者を固定するつもりもないですし。実際、6月の公演は出演者が結構入れ替わっています。もちろん、4月に続いて出演してくれる方もいますけど。
──4月の公演名は「実はセリフ」6月は「実はセリフだ」と微妙にタイトルが変わっていますが、内容面では違いはあるのですか?
はい、同じ部分もありますけど、4月にやっていなかったこともやります。まだこのプロジェクト自体、実験段階なんで、色々試してみたいなと。6月の公演用に、いくつか曲も書き下ろす予定です。
──今度こそ弾き語りをする可能性も?
どうですかね。それは言えないです。
──公演名にはどんな意味が込められているのですか?
最近、本当にいろんなことを言いにくい世の中になっているじゃないですか。テレビのコメンテーターの人も、“テレビで喋っても問題ない言葉”を慎重に選んで喋ってる。それって、“本当に思っていること”とは微妙に違いますよね。みんながSNSに書いてる言葉とかも、誰かに読まれることを前提にしている時点で、少しズレがある気がしていて。僕がこうやってインタビューで語っている言葉も、ライターさんが編集して、誰かがチェックして、やっとこういう記事になっている訳で、それって本当に“僕の言葉”なのかなって。そもそも、このインタビュー自体、誰かがこの原稿を丸々創作して書いていたとしても、読んでいる人にはわからない訳ですよ。“本当に思っていること”と、“セリフ”って何が違うんだろう? ……みたいなことが、関係あるかもしれないし、全然ないかもしれないです(笑)。
──(笑)実際に公演で確認してくださいという訳ですね。そもそも、なぜこのプロジェクトを始めたのですか?
僕、本業は音楽家なんで、表現したいことは基本、全部音楽にするんですけど、それだけじゃ収まりきらないこともあって。「独特な人」はそれをまとめて表現する場所かもしれないですね。……っていうのも正直後付けで、「なんとなく、やりたかったから」っていうのが本音です(笑)そんな深く考えてないですよ。考えてるかもしれないですけど。
──「独特な人」とは一体なんですか?
一体何なんですかね(笑)僕がここで何か言うと、また色々一人歩きしちゃいますからね……。どうせこのインタビューも「川谷絵音、劇団を旗揚げ!?」みたいな見出しつけるんでしょ?(笑)そうやって、誰かに一言でまとめられないものにしたいなって思いはありますね。
──最後に、公演に来てくださる方に一言お願いします。
明らかに怪しいプロジェクトなんで(笑)、かなり躊躇するとは思うんですけど、「独特な人」はある意味、僕のことを一番さらけ出している場所かもしれないです。今後は、僕の音楽に全く興味のない人にも観てほしいですね。
あと、僕、このインタビュー、受けてないです。ライターさんが全部書きました。ほんとですよ。全部セリフです。
あと、僕、このインタビュー、受けてないです。ライターさんが全部書きました。ほんとですよ。全部セリフです。