斬新なメディアミックス戦略で日本の映画界に旋風を巻き起こした角川映画の初期3作品のハイライト映像をオーケストラの生演奏とともにライブ感覚で楽しむシネマ・コンサートが2018年4月13日(金)夜、東京・有楽町の東京国際フォーラム ホールAで幕を開けた。
原作小説、映画、そして音楽の三位一体で世に送り出された角川映画。その先駆けとなった「犬神家の一族」(1976年公開)、続く「人間の証明」(77年)と「野性の証明」(78年)を青春のひとこまとして記憶に刻んだ人も多いはず。
3作の音楽はいずれも劇伴の巨匠、大野雄二が音楽を手がけた。アニメ「ルパン三世」の音楽やジャズピアニストとしても知られる大野が、ジャズ系のミュージシャンや弦楽器奏者ら総勢約50人からなる「大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラ」を率いて登場し、新たなアレンジを施した3作のテーマ曲や劇中曲を披露した。大野とバンド「Yuji Ohno & Lupitnic Six」で共演を重ねるメンバーを軸に、エリック・ミヤシロ(トランペット)や中川昌三(フルート)らによる分厚いホーンセクション、22人のストリングス、そして鮮烈な音色で物語を彩るハンマーダルシマーや琵琶の奏者などなど、一期一会の豪華な顔ぶれ。そこから繰り出される衝撃的な音圧と切れ味鋭いアンサンブルで、ホールは興奮の渦に。
第1部は「犬神家の一族」からスタート。エキゾチックなハンマーダルシマー(MiMi演奏)のトレモロが印象的な「愛のバラード」や、〝佐清(すけきよ)〟の衝撃シーンが鮮やかによみがえった。
「犬神家」の金田一耕助役で主演した俳優・石坂浩二と大野は高校・大学時代からの友人。2人のトークコーナーでは、二人の学生時代、お互いプロとして再会してからの仕事やプライベートのエピソードが披露された。映画「犬神家の一族」で、初めて映画音楽を手がけた大野が、巨匠・市川崑監督を相手に奮闘した話や、大野の実家が熱海の老舗旅館であり、石坂も何度かそこに泊まりに行った話、石坂の結婚式の音楽を大野が担当した話など、二人の絆の深さをうかがえるトークに会場はおおいに盛り上がった。
第2部は「人間の証明」と「野性の証明」のハイライトを上映。「ママ、ドゥ・ユー・リメンバー」の歌い出しでヒットした「人間の証明のテーマ」は今回、ダイアモンド✡ユカイが歌った。昨年7月に亡くなった母への思いも込めた熱唱に胸を打たれ、涙をぬぐう観客の姿も。
「野性の証明」では、この作品で銀幕デビューした薬師丸ひろ子のあどけない笑顔を背景に、松崎しげるが主題曲「戦士の休息」を歌唱。故・高倉健が演じた主人公の寡黙で熱い生き様と響き合い、作品の余韻をより深いものにした。
会場ロビーには公開当時のポスターを始め、撮影で金田一役の石坂が着用した帽子や衣装、市川崑監督の愛用品など貴重な資料も展示された。「スケキヨ像」との記念撮影ができるフォトスポットもにぎわいをみせた。
最終公演は明日、4月14日(土)にもある。残りわずかだが、当日券もある。