まねきケチャ、藤川千愛がグループ卒業を発表した夜。日比谷野音での2部構成ワンマンライブをレポート

ライブレポート | 2018.08.30 20:00

約1時間のインターバルを挟んだ2部では、中川が「新曲『相思い』の花火大会に行くっていうテーマ」と説明した、ノースリーヴの浴衣風の新衣装で登場。深瀬の「盛り上がっていくぞ!」というあおりから、メタルポップ「キミに届け」「ありよりのあり」と攻撃的なナンバーを続けると、客席はヘドバンの嵐となり、スカ風味のアンセム「奇跡」でも<オーオーオー>という大合唱が沸き起こった。そして、松下の「もうすぐ10月ですね」という的を得ない曲フリに笑いが起きる中、ミュージカル調のハロウィンソング「モンスターとケチャ」と、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」のEDテーマ「鏡の中から」をパフォーマンス。この2曲で西洋とアジアのおばけや妖怪をダンスで表現し、藤川の「花火大会の日のひと夏の恋を歌った曲になります」という紹介から、新曲となるバラード「相思い」を初披露。続く「ハリネズミの唄」でもしっとりとした歌声を響かせた。ピアノバラードとアコギを基調にしたバラードを並べたことで、5人の声色や感情の込め方、表現の違いを感じた人も多かったのではないかと思う。

松下玲緒菜

深瀬美桜

宮内凛

中川美優

藤川千愛

藤川と中川というグループ内で最大の音量差がある二人のユニゾンから始まる「タイムマシン」では、セミの襲来に負けじと歌いきり、決してどうでもいいやとは投げ出せない情熱を込めた「どうでもいいや」では一人ずつが振り向き、それぞれがオリジナリティーに溢れた個性的な歌声を聞かせた。そして、配信限定でリリースされるニューシングル「昨日のあたしに負けたくないの」では、どんな時でもセンターに立ち続けてきた松下とリードヴォーカルを務めてきた藤川が<あなた>と声を合わせた瞬間に終わりの始まりが訪れた。

 空高く掲げた手をしっかりと見つめていた5人が静かに手をおろすと、藤川が意を決して話し出した。「私、まねきケチャの藤川千愛は、9月24日の日本武道館公演をもって、まねきケチャを卒業させていただきます」——。ファンやメンバー、スタッフへの感謝の思いを伝え、悩んだ末に卒業を決意した経緯を語り、「武道館までの1ヶ月、まねきケチャの藤川千愛として、私にできる最高の歌を届けたいと思います。本当にありがとうございました」とあいさつした。会場は、ただただしんとしていた。「やめないで!」という声があがるわけでも無ければ、拍手が起きるわけでもなかった。すでに心の準備ができていたのか、無言の抗議だったのか、茫然自失としていたのかはわからない。ただ、静寂をもって受け止めていた。

2016年のアイドルシーンを席巻し、“まねきケチャらしさ”を世に知らしめたエモい名曲「きみわずらい」は松下が涙で歌えなくなり、深瀬も感情を抑えて歌うことに必死な様子を見せる中、ファンは<千愛の瞳に恋してる>というコールで彼女の発表に応えた。曲の最後、普段は中川が中心にいるが、この日は藤川が立っており、4人が彼女に、フリではなく、本気で抱きつくという感動的なシーンをもって、第2部は締めくくられた。

アンコールは<世界で一番愛してる>というフレーズに、ファンが全力で<俺も!誰よりも!!>と絶叫する「ありきたりな言葉で」。松下の<君のいない世界を怯えて>という感情的な歌声には藤川卒業後のグループを心配する気持ちも現れていたかもしれない。一方の藤川は歌詞通りにふくれっ面して歌う深瀬の頬を優しい笑顔で見つめながらつついていた。彼女の吹っ切れたような晴れやかな笑顔は、すでに未来に進む決意をした証だろう。
結成3周年を記念して開催される初の武道館公演は、まねきケチャにとっても、藤川千愛にとっても、新しい一歩になることは間違いないし、その一歩を目撃したいと思う。

<夏の野音 de まねきケチャ SET LIST>
01. キミに届け
02. ありよりのあり
03. 奇跡
04. モンスターとケチャ
05. 鏡の中から
06. 相思い
07. ハリネズミの唄
08. タイムマシン
09. どうでもいいや
10. 昨日のあたしに負けたくないの
11. きみわずらい
EN
01. ありきたりな言葉で

Spotify

公演情報

DISK GARAGE公演

まねきケチャ3周年記念公演~日本武道館deまねきケチャ~

2018年9月24日(月・振休) 日本武道館

チケット一般発売日:2018年4月1日(日)

SILENT SIREN「サイサイフェス2018」出演!

2018年9月1日(土) 新木場Studio Coast

RELEASE

『昨日のあたしに負けたくないの』

配信限定ミニアルバム

『昨日のあたしに負けたくないの』

(日本コロムビア)
NOW ON SALE
  • 永堀アツオ

    取材・文

    永堀アツオ

  • 撮影

    Tetsuya Yamakawa

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