REPORT:赤山恭子
普段ミュージカルをたしなまないという方でも、名前を聞けば「ああ!」とピンとくる作品『ドリームガールズ』は、演劇界のアカデミー賞の位置づけであるトニー賞を6部門にわたって受賞している名作中の名作。とはいえ、映画に造詣が深い人々には、圧倒的なパフォーマンスと迫力で主演のビヨンセ・ノウルズを完全に食った説がある、ジェニファー・ハドソンが2006年にオスカーを手にした同名映画のほうが記憶に新しいかもしれない。そんな、かの有名な作品が2010年、2013年に続き3度目の来日を果たしているというので、6月15日の夜公演におじゃましてみた。
東急シアターオーブの座席に着き、そわそわと開演を待つ間に、ふと「さては…全編英語では…」と不安がよぎった。しかし始まれば舞台のサイドパネルに日本語字幕が大きく映し出される仕組みになっており、何とも親切だと胸をなでおろす。公演は2幕構成。1幕では歌手を夢見るザ・ドリーメッツの三人が上京し、オーディションを受けるところから始まる。しょっぱなから手を変え品を変え、様々な登場人物が出てきてはゴージャスに歌いあげてゆく。驚いたのが、思った以上に台詞は台詞、歌は歌と分けてくれているため、ストーリーにより入っていける。歌は字幕を見ないでも堪能できるので、その分舞台上の演出に注目でき、素人目にはとってもうれしい。
そして、やり手の男カーティスが、リードボーカルだった自分の恋人エフィーを、美人で長身のディーナに差し替えたあたりから、ドラマティックに物語が展開していく。
特筆すべきは、1幕も終盤にさしかかる頃、完全に恋人・カーティスに見放されたエフィーが、悲しみの歌『And I am telling you I’m not going』を熱唱する場面。これまでエフィー役のモヤ・アンジェラは声量を7分目くらいに抑えていたのではと疑いたくなるほど、悲しみや妬み、そねみを全部吐き出さんばかりに叫び、存在感を200%発揮する。
「別れたくない」「私を愛して」「つらいわ」という内容を延々と歌うのだが、その迫力というか剣幕は、見ているこちらが息を飲むほど…。公式インタビューによると、ディーナ役のジャズミン・リチャードソンが「本当に素晴らしい」と簡潔に、ローレル役のブリトニー・ジョンソンにおいては「毎公演圧倒されて、その後の自分の出番に出遅れてしまう」(!)など、モヤの歌唱力を絶賛している。その胸の内を赤裸々に独白するような激しい歌い方は、情緒不安定な女の生きざまを見せつけているようで、泣く子も黙らせるほど。もちろんスタンディングオベーション並の拍手喝さいで、1幕は閉じる。
休憩を挟んで続く2幕では、『One night only』や表題『Dreamgirls』など、エモーショナルかつ豪華絢爛な楽曲で「これぞブロードウェイだぜ!」と満足させてくれるナンバーが目白押し。非常に胸がいっぱいになったまま、終幕を迎える。ど迫力でパワフルなこの公演は、多いときには1日2回ほぼ毎日行っているというから、演者のタフさには頭が下がるばかり。公演は6月26日まで、若干のチケット残数もあるというので、本場ブロードウェイのミュージカルを堪能するのはもちろんのこと、女の情念というものも一考できるいい機会なので、体感してみてはいかがだろうか。
ローラコメント
こんな迫力初めて。
圧倒的な歌声に泣いちゃいました!
歌も衣裳も舞台も本当に凄いんです!
たくさんの人に絶対に生で観てほしい舞台です!
JIM BEAM presents ブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」東急シアターオーブで6月26日まで!!
みんなぜひ観に来てね!!