2016年5月26日(木) Zepp DiverCity(TOKYO)
BORN 8th ANNIVERSARY SPECIAL ONEMAN LIVE 【SUPER BLACK MARKET】
REPORT:武市尚子
PHOTO:MAKI ENDOU
生を受けたものはいつか最期の時を迎え、始まりのあるものにはいつか終わりがやってくる。
誕生と始まりのときは光に包まれ、誰もがそこに未来を描き希望に満ち溢れるが、いかなる場合も終わりのときは辛く、別れは悲しみと苦痛が伴うものである。
2016年5月26日。この日、BORNという1つのバンドがその歴史に幕を下ろした。
しかし。そのライヴは、不思議と、【解散】ライヴでありながらも、涙に埋もれる終わりではなく、彼らの未来をしっかりと感じさせてくれる熱い時間だった。
2016年の始めに突如解散を発表し、ヴィジュアルシーンに衝撃を走らせた彼らは、最期の場所として選んだ5月26日のZepp DiverCityまで、【解散】を意識することなく、そして、意識させることなく、彼ららしくその最期の時へと向かった。2月にはニューシングル「SUICIDAL MARKET〜Doze of Hope〜」をリリースし、3月からは自らが主催する『BORN BATTLE 2016 DIE or DIE CLIMAX 7DAYS』で、現在のヴィジュアルシーンを牽引するライバルバンドたちと熱いバトルライヴを繰り広げていた彼らの勢いは、解散を選んだバンドとは思えない熱を放っていたのである。故に、彼らが選んだ場所はZepp DiverCityの当日も、最後の最後まで【解散】という事実を実感することが出来なかった。MCの中で猟牙が、“気付いたら今日になってたのがBORNらしいなと思う”と語ったが、まさに、彼ら自身も、自らの人生そのものでもあったBORNがこの日で止まるという実感が沸かぬまま、“この日”を迎えていたのではないかと感じた。しかし。いかにも解散ライヴ的なライヴではなく、最後までBORNらしくぶつかった最期の時は、最高に熱い夜となった。
BORN史上最大キャパとなるハコに挑んだラストライヴだったが、BORNのサウンドと唄を愛したファンたちで埋め尽くされたZepp DiverCityは、BORNというバンドに相応しい場所だったと言えるだろう。
1曲目に届けられたのは「Extremely waltz」。混沌とした幕開けを選んでいたのも、実に彼ららしい選択だと感じさせられた。
「始めようか、TOKYO!」(猟牙)
猟牙の煽り声に、フロアのノリに拍車がかかる。
間髪入れずに届けられた重厚なサウンドに、会場の熱は一気に上がっていった。メンバーもオーディエンスも、いつも以上にとことん燃え尽きようという心積もりらしい。それを証拠に、フロアは、最後列まで最前列と同じ熱を放つヘッドバンキングで埋め尽くされていた。一般的に後列になるほど前列よりも温度が低くなりがちだが、この日のライヴは前列も後列もすべて同じ温度で盛り上がっていた景色がとても印象深く目に残った。
中盤ではしっとりと聴かせたスローナンバーを届けて魅了したり、「GOD COLLAPSE」では猟牙がキーボードを奏し、ソウルフルな景色を差し込みライヴの流れを大きく変化させるなど、一瞬たりとも飽きさせることのない流れでライヴは進んでいった。
後半戦では、BORNの代表曲の1つとも言える「BLASTED ANIMALS」でオーディエンスに拳を振り上げさせ、「DIRTY STACKER」ではオーディエンスを左右に大きく移動するノリに導き、圧巻の一体感を見せつけてくれたのだ。
「DEMONS」をラストに21曲で構成された本編は締めくくられ、鳴り止まぬアンコールの声に応えた彼らだったが、「THE ANTHEM」から始まったアンコールは、第二部の始まりの様な幕開け。新たにライヴが始まっていくかの様な勢いを感じたのは私だけではなかったはず。彼らもオーディエンスも底なしのスタミナである。ここではバンドのターニングポイントであったという柔らかな印象の「春煌花 -SAKURA-」を、うっすらと桃色に染まったステージから大切に届けた場面もあった。
8年という活動期間だったことを短いと感じるほど、彼らがこのシーンに残してくれたインパクトと足跡は大きく深い。MCの中で、Rayも言っていたが、彼らに憧れ、彼らの楽曲をコピーする若手セッションバンドも多くいたほど、BORNは独自の世界観を築き上げ、ヘヴィながらも聴き手をしっかりと捕らえるキャッチーさを宿したメロを生み出していた唯一無二のバンドだったと言っても過言ではないだろう。
ダブルアンコールに応えた彼らは、後半に、彼らの代表曲となったヘヴィさとキャッチーさが共存するBORNの核曲「RADICAL HYSTERIA」を届けたのだが、まさに、この曲はBORNの名をシーンの中にしっかりと刻み込んだ1曲だったと言える。サビのフレーズが“サバに乗って”に聴こえるということで話題になったこの曲は、言うまでもなく最高の景色を私たちに見せてくれたのだった。
「RADICAL HYSTERIA」から「ケミカルロマンス」へと繋げられ、全41曲を届け終えステージを後にした彼らの表情からは、【解散】を思わす景色が一切感じられなかったのがとても不思議だった。これは褒め言葉として受け取ってほしいのだが、ここまで涙の無い解散ライヴは見たことが無い。未練が無いという意味では決してない。自分たちの歩み1つ1つに誇りを持ち、この瞬間も真っ直ぐに自分たちと向き合っていたからこそ放てた空気感であったと思うのだ。そこまで真正面から彼らはBORNというバンドに向き合ってきたということであろう。
「解散とは言っても、BORNは永遠に不滅です」
最後にそんな言葉を残した猟牙。まさに、その言葉が似合うライヴだった。そして。彼らは、この8年間にBORNと出逢い支えてきてくれたオーディエンスとスタッフと関係者すべてに感謝の意を伝え、メンバー1人1人と再び出逢える日を待っていてほしいと伝えた。
“この8年間BORNをやってきて1番嬉しかったのは、関係者からファンを褒められることだった”とTOMOが言ったように、彼らと共に熱いライヴを作り上げてきたファンたちのノリは、この日も最高の景色を作ってくれた。きっと彼らを支えたファンたちは、BORNの音を永遠に愛し続けていってくれることだろう。
歌詞に託した言葉と他を寄せ付けることのなかったヴィジュアルセンスで独自の世界観を築き上げ、中央に立ち、BORNを引っ張った猟牙、メインコンポーザーとしてBORNのサウンドを構築し、アグレッシブなギタープレイを見せてくれたK、明るい性格でバンド内の空気を和ませ、Kとは異なる個性を放ち、メロウな世界観を描くことに長けていたRay、重厚なリズムと安定感のあるドラムプレイででBORNのサウンドの軸を支えたTOMO。そして。この日、チケットを購入し、“純粋にBORNのファンの1人”として会場に足を運んでいたBORNの初期ベーシストのKIFUMI。そんなKIFUMIの後を継ぎ、メリハリのあるベースプレイでTOMOと共にBORNのリズムを支えた美央。この中の1人が欠けていてもBORNはここに立ててはいなかっただろう。ライヴとしてはこの日がラストとなってしまったが、猟牙の言葉通り、彼らがこの8年間で作り上げてきた歴史と彼らの音は、永遠に残っていくに違いない。
“終わりは失うことではなく、すべての始まりである”ということを、彼らは身をもって教えてくれた気がした。きっと彼らはこの先、“永遠”と“不滅”は本当に存在するということを、証明してくれるに違いない。そんな熱を感じさせてくれた彼らのこの先の活躍に、大きな期待を寄せるとしよう。
セットリスト
01. Extremly waltz
02. Vermin’s cry
03. more Deep
04. 鴉
05. Rotten cherry
06. モザイク
07. 剥愛のスローモーション
08. FACE
09. foxy foxy
10. BECAUSE
11. 愚弄
12. THE STALIN
13. RED DESIRE
14. Criminal Berry
15. Son Of A Bitch
16. GOD COLLAPSE
17. BLASTED ANIMALS
18. felony
19. BREAKTHROUGH
20. DIRTY STACKER
21. DEMONS
ENCORE 1
22. THE ANTHEM(生演奏)
23. オルタナ
24. 乱刺℃
25. SATISFACTION?
26. 春煌花
27. Deep Affection
28. Recall the MIND
29. SUICIDAL MARKET
ENCORE 2
30. ProudiA
31. MOTHER
32. Devilish of the PUNK
33. with hate
34. MAD whistle
35. 黒蟻
36. SKIN
37. 殉恋歌
38. [B.D.M]
39. ー&ー
40. RADICAL HYSTERIA
41. ケミカルロマンス