KICK THE CAN CREW「復活祭」
2017年9月7日(木) 日本武道館
出演:KICK THE CAN CREW / いとうせいこう / 倖田來未 / 藤井隆 / RHYMESTER
※50音順
●Report:宮本英夫
●Live Photo:岸田哲平、中河原理英
ついにこの日がやってきた。9月7日、日本武道館、KICK THE CAN CREW「復活祭」。先日のインタビューでも語られていたように、「祝ってもらう気満々」の3人が仕掛けたビッグ・パーティーは、シルクハットにタキシードでばっちり決めた「全員集合」で華々しく幕を開ける。ぎっしり埋まった客席からは、強力なグルーヴに負けない鬨の声のような大歓声。オーディエンスもやる気満々だ。
「今日は盛りだくさんだから。ずっと盛り上がってください!」
なんたってお祭り、豪華出演者がどんどん出てくる。司会のいとうせいこうに呼び込まれ、トップを飾るのはRHYMESTERだ。J-POPやロックのリスナーにも訴求力抜群の派手なビートとキャッチーなリリック、宇多丸&Mummy-Dのスキルフルなラップはもはや職人芸の域。「KICK THE CAN CREWリスペクト!」と後輩を讃えつつ、ヒップホップのかっこよさを体現して「ここ武道館から次の未来が生まれかもしれないだろ!」と次世代への奮起を促し、ヒップホップ伝道者としての役割をきっちり果たす。とにかくカラフル、パワフルなステージングは貫禄のひとことに尽きる。
続いてステージに登場したのは、タキシードに洒落た赤いチーフで決めた藤井隆。途端に空気が明るく華やぐ、売れっ子タレントのオーラは抜群。しかもみんなが知ってる大ヒット曲「ナンダカンダ」を歌ってくれたのだから、これが盛り上がらずにいられようか。「Quiet Dance」では宇多丸がフィーチャリング参加し、「藤井隆の音楽活動はほんとかっこいいから!」と熱弁をふるう。洗練されたソウルやディスコ、R&Bやヒップホップに至る音楽性の確かさ、熟練のダンスと人懐こい歌。初めて生で見た人のハートをがっちりつかむ、さすがのパフォーマンスに武道館は沸きに沸く。
ここでいとうせいこうが「俺にもやらせてよ」と、アーティストとしてステージに立つ。なんといっても、80年代に日本語ラップを創生した偉大なレジェンドの一人。DJをつとめるのはKICK THE CAN CREWの同志、DJ TATSUTAだ。「当時中学3年生だったMCU、TATSUTA、TAICHI MASTERの3人が俺のステージを見てくれていたんだよ」と懐かしそうに語り、代表曲「東京ブロンクス」など3曲を披露する。「マイク二本」ではMCUが呼び込まれ、「こいつらとやりたかったんだよ!」と叫ぶいとうせいこうの言葉には愛しか感じない。ヒップホップの歴史が一本のラインで結ばれる、なんて感動的なシーン。
息つく暇もない。次は倖田來未だ。ステージから炎がぶちあがり、6人のダンサーを引き連れて1曲目から激しく踊る。最新曲「LIT」以外は近年のアルバムかシングルのカップリング曲という攻めのセットリストで、強力にエッジィなEDMやR&Bチューンをノンストップで畳みかける。あまりのテンションの高さに踊ることをも忘れて見入ってしまったオーディエンスに向け、開口一番「ヤバイ。アウェーな感じじゃない?(笑)」というMCで一気に空気が和んだ。そのまま全7曲を一気に駆け抜け、最後は全員参加のタオル回しチューン「Poppin’love cocktail」で会場を盛り上げハッピーエンド。このあとに登場する本日の主役へ、バトンを渡す大役を見事に果たしてくれた。
「こっちからもプレッシャーかけましょう。やらざるをえなくなるから。次はこいつらだ!」
いとうせいこうが煽りに煽り、いよいよKICK THE CAN CREWの登場だ。1曲目は復活第一弾を飾った「千%」。そこから16年を一気にさかのぼり、デビュー曲「スーパーオリジナル」へとつなげる展開にオーディエンスは狂喜乱舞。LITTLEの歌う「また始まる3人の挑戦が」というリリックが、今できたばかりの新曲のようにフレッシュに響く。時は流れたが、変わらないものがここには確かにある。
13年振りのオリジナルアルバム『KICK!』からの新曲「SummerSpot」は、3人がほぼワンフレーズごとにマイクをリレーしてゆく超絶技巧難度マックスの曲。KREVAが「あいつらやるな、と思わせるから」と、自らハードルを上げたこの難曲を、オーディエンスのクラップをビート代わりに見事に乗り切り、LITTLEの「まだ何も終わっちゃいないぜ!」のひとことから「イツナロウバ」へとつなげる展開は見事のひとこと。さらにアッパーな「sayonara sayonara」、メロウな「アンバランス」と緩急をつけてぐいぐい引き込む。しばらく離れていたとは思えない、3人のバランスは完璧だ。
「神輿ロッカーズ」では、もちろんRHYMESTERが登場。炎がじゃんじゃん燃え上がり、最後に藤井隆も乱入するというまさにお祭り騒ぎ。そのまま「地球ブルース~337~」、そしてラストは「マルシェ」という、問答無用のアゲアゲチューン連発にフロアはもう大騒ぎ。七色の紙吹雪が大量に降り注ぐ中、ハッピーなヴァイブスも大量に振りまく、ライブ巧者振りはあの頃と変わらない。いや、落ち着きが増したぶんより感動が深くなっている。
「何をしゃべるか考えていたんだけど。みんなの顔を見たら全部忘れちゃった。ひとことだけ言わせてください。ありがとう」
珍しく真面目顔のMCUの言葉を、KREVAが「俺も言うこと忘れちゃった」と混ぜっ返す。「また3人でがっちりやっていく。みんなと一緒にがっちりやっていきたい。どうですかみなさん!」とLITTLEが煽る。愛にあふれた拍手が降り注ぐ中、アンコールに選ばれたのは『KICK!』の中でもとびきりあたたかく豊かな幸福感あふれる「I Hope You Miss Me a Little」だった。いつまでも残る幸せの余韻の中、出演者全員がステージに揃い、「またツアーで会いましょう!」とKREAVAが叫ぶ。約2時間半の素晴らしい復活祭。そこに衰えなどカケラもなく、あるのはかつての名曲と情熱あふれる新曲と未来への希望だけ。ここ日本武道館から、3人の挑戦がまた始まった。
KREVA「908 FESTIVAL 2017 -クレバの日-」ライブレポートを明日公開予定!
SET LIST
KICK THE CAN CREW
01. 全員集合
RHYMESTER
01. ONCE AGAIN
02. ライムスターイズインザハウス
03. Back & Forth
04. Future Is Born
藤井隆
01. ナンダカンダ [HyperJuice REMIX]
02. OH MY JULIET! [DJ KAORI REMIX] ~わたしの青い空 [tofubeats REMIX] ~Quiet Dance feat. 宇多丸(RHYMESTER)
03. 未確認飛行体 [ikkubaru REMIX]
いとうせいこう
01. 東京ブロンクス
02. ヒップホップの初期衝動
03. マイク2本
倖田來未
01. Ultraviolet
02. UNIVERSE
03. XXX
04. Hurricane ~ Money In My Bag
05. LIT
06. LOADED feat. Sean Paul
07. Poppin’ love cocktail feat. TEEDA
KICK THE CAN CREW
01. 千%
02. スーパーオリジナル
03. SummerSpot
04. イツナロウバ
05. sayonara sayonara
06. アンバランス
07. 神輿ロッカーズ feat. RHYMESTER
08. 地球ブルース~337~
09. マルシェ
ENCORE
10. I Hope You Miss Me a Little