テキスト:有賀 誠文
写真:武 裕康
8月10~11日の2日間、東京国際フォーラム ホールAにて<ハリー・ポッター™ in コンサートシリーズ第2弾!『ハリー・ポッターと秘密の部屋™』>が開催された。名作映画をオーケストラによる生演奏で楽しむ“シネマ・コンサート”(シネオケ®)は、新たな発見と驚きに満ちた至極のエンターテインメントだ。
世界中で絶大な支持を得ているシネマ・コンサートは映画のセリフや効果音はそのままに、その音楽パートをオーケストラが生で演奏するという試み。これまでにも『2001年宇宙の旅』『ゴッドファーザー』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『タイタニック』『砂の器』といった往年の名作が、シネマ・コンサートによって新たな命を吹き込まれてきた。
このたび上映された『ハリー・ポッターと秘密の部屋™』は、多くの映画/クラシックファンから大好評を得た『ハリー・ポッターと賢者の石™』に続く<ハリー・ポッター in コンサート™>の第2弾。そして、同シリーズの音楽を手がけているのは、数々の名作映画でアカデミー/グラミー賞を受賞してきたジョン・ウィリアムズだ。
たとえその名を知らなくとも、『ジョーズ』『スター・ウォーズ』『スーパーマン』『インディ・ジョーンズ』『E.T.』のテーマ曲を聴いたことのない人はいないだろう。そんな巨匠によるスコアを、日本を代表するオーケストラ、東京フィルハーモニー交響楽団が奏でるということで、会場は登場人物の衣装に身を包んだポッタリアン(熱狂的なハリポタ・ファン)からドレスアップした若者グループ、映画好きのファミリーなどなど、バラエティ豊かな客層で賑わっていた。
オーケストラに続いて登壇した指揮のニコラス・バッグの軽妙な挨拶から、上映/演奏がスタート。映画館では、普段の視聴環境とは桁違いの轟音に身構えてしまうものだが、このシネマ・コンサートでは広大な空間が迫力ある効果音を適度に和らげつつ、オーケストラによるナチュラルな高音~低音が徐々に高揚感を高めてくれることに、まず新鮮な驚きを覚えるはず。オーケストラによって物語の進行を邪魔しない絶妙なバランスで奏でられるスコアは、おそらく“生”であることを過剰に意識させない=映画そのものも存分に楽しめるように配慮されているのだろう。
とはいえ、お馴染みの“クィディッチ”のスピード感あふれるシーンでは音楽と、空飛ぶ魔法使い見習いたち&暴れるブラッジャーの動きが見事に連動していたりと、ジョン・ウィリアムズによるスコアの偉大さを痛感。また、石化したミセス・ノリス、蛇と会話するハリー、T・M・リドルの日記帳のシーンでは、本シリーズの重要なポイントである“サスペンス要素”を盛り上げてくれる。
さらに、深い森の中で巨大クモの大群に襲われたり、毒蛇の王バジリスクと対峙するドタバタ&戦闘シーンでは、タイトかつ壮大な展開に緊張感も最高潮に。緻密かつ大胆なスコアと指揮者&東京フィルの見事な仕事は、心なしかハーマイオニーの瑞々しい可愛さすら際立たせているかのよう(!?)だった。
何度も鑑賞したであろうコアなファンすら改めて魅入らせてしまうシネマ・コンサートは、目の前で生演奏されているということを忘れさせるほどの“没入感”も大きな魅力。映画における音楽の重要性を示すだけでなく、単純に「生演奏=贅沢!」という括りでは計りきれない効果や意義、新たな“気づき”を実感できることだろう。
もちろん、シリアスなシーンでは静かに息を呑み、ギャグパートでは大いに笑い喝采する、映画を愛してやまない観客も同コンサートの重要な要素のひとつ! ひとたび席に着けば、平面のはずのスクリーンに多層感をもたらし、他では絶対に不可能な“映画的体験”を届けてくれるはずだ。
ジョン・ウィリアムズは、名監督アルフォンソ・キュアロンが手がけた続編『アズカバンの囚人』でもスコアを担当。新たなフェーズに突入しハリーも大きく成長するターニングポイント的作品であり、シリーズ最高傑作に挙げるファンも多い人気作品だ。そのダークなトーンとは裏腹にアッパーな音楽が最高なので、ぜひいち早い開催を期待したいところ!
なお、今後のシネマ・コンサートのスケジュールを紹介しておくと、第89回アカデミー賞®作曲賞・主題歌賞を含む6部門を受賞し、日本でも昨年公開され大ヒットを記録したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が9月29日 (金) ~30日 (土)に横浜で開催決定(10月3日名古屋、10月4日大阪でも開催)。世界中の男女を胸キュンさせたレトロかつお洒落な不変の恋愛ミュージカルが生オーケストラで蘇るとあって、これはキュン死まちがいなしだ。
▼LA LA LAND – IN CONCERT ラ・ラ・ランド in コンサート http://www.promax.co.jp/lalalandinconcert/
さらにさらに、現代の神話と称される『スター・ウォーズ』シリーズから、新たなサーガの幕開けを告げた傑作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』もシネマ・コンサートに登場! それまで低俗なものとされてきたSF映画のイメージを根底から覆した通称“旧三部作”は、言うまでもなく映画史に残る不滅の金字塔だ。 ジョン・ウィリアムズによる“あのテーマ曲”が東京フィルによって目の前で奏でられたとき、果たしてどれだけのSF映画ファンが涙を堪えられるだろうか……? まさに涙腺崩壊必至の、歴史的事件といっても過言ではない『スター・ウォーズ /フォースの覚醒 』シネマ・コンサートは、10月13日(金)~15日(日)にかけて東名阪で開催予定。12月15日(金)から全国公開されるシリーズ最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の予習としても、これ以上に最適なものはないだろう。
シネマ・コンサートがフォースと共にあらんことを……!