SKY-HI HALL TOUR 2017 -WELIVE-
5月3日(水・祝) 日本武道館
Report:東條祥恵
Photo:ハタサトシ
新潟県民会館大ホールを皮切りに全国13カ所15公演を行なってきたSKY-HIが、3rdアルバム『OLIVE』リリースツアー「SKY-HI HALL TOUR 2017 -WELIVE-」のファイナルを日本武道館で5月2日・3日、2日間に渡って行ない、その最後を締めくくった。
SKY-HIにとって武道館公演は今回が初となる。
SKY-HIがかねてから公言していた日本武道館での公演。トレンドのサウンドを意識しながらもヒップホップ、ソウルなどよりジャンルレスに、自身のポップセンスをSKY-HI史上もっとも大衆的な音楽へ振り切って創り上げた『OLIVE』。それをオールセルフプロデュースのもと、ビッグバンドにDJ、ダンサーチームを加えた大所帯の“THE SUPER FLYERS”を従えた舞台で、歌って踊って、ときにはピアノやギターを弾きながらラップするSKY-HIは、まさに2017年をリードする輝ける新世代のエンターテイナー像そのものだった。
いまから10年前。AAAのメンバーであることを隠しながらお客さんが5人にしかいなところからソロ活動をスタートさせ、「お前には無理だ」「前例がない」と、周りからどんなに否定されても、ひたすら己のスキルを磨き、実績を積み重ねてきた。すべてのネガティブをひっくり返して、公言していた夢の場所に余裕の2DAYS開催でたどり着いて見せたSKY-HI。どこまでも感動的なメッセージ、自分の信念を貫いた音楽、パフォーマンス、そのなかで育まれていったいまだからいえるやさしい言葉の数々。そのエールに感動しまくった3時間だった。
『OLIVE』のジャケットの木がモノクロで映し出されていた紗幕が落ちると、アルバムタイトルを並び替えた“L.I.O.V.E”の文字が登場。(LとIの位置を変えると「OLIVE」「I LOVE」「LIVE」と読み取れる)その真ん中の“O”の奥から颯爽と姿を現したSKY-HIは、1曲目の「Double Down」からバンドとともにギターをかき鳴らしながらラップを始めた。他のラッパーは真似できないような異色のパフォーマンスからいきなりスタートしたライブは、「Ms.Liberty」からダンサー4人が加わり、「BIG PARADE」ではダンサーとブラスセクションが絡み合うなど、大所帯ならではの華やかにショーアップされた演出で、オープニングからダイナミックなステージを展開。
THE SUPER FLYERSにマニピュレーター、PA、照明も加えたSKY-HIこだわりのメンバー紹介に続いて、最初のMCではまず本ツアーのコンセプトであるアルバム『OLIVE』について「もしも君が人を愛せなくなったり、生きるのが嫌になったと感じたときに寄り添えるものになってる」と解説。しかし「2年前の俺なら作れなかった」といって、孤独だったその当時に作ったという「Stray Cat」からステージの照明が落ち、場内のムードは一転。観客が静かにステージに見入るなか、SKY-HIが語りかけるようなラップでストーリーテラーになっていく「十七歳」では、“ねぇもしも”で音がいったん途切れ、“夢が叶うなら〜”とアカペラで歌いだしたリリックから再び曲が始まるというライブアレンジが、痛いほど胸を締めつけていった。「明日晴れたら」からはSKY-HIの歌声も照明も柔らかなやさしい光をともしだし、ここからはダンサーと息のあったダンスでSKY-HIがステージを舞い、しなやかに歌って踊るラッパー像をスマートに披露。軽やかにグルーブするバンドのアンサンブルが観客のコーラス、ハンドクラップを誘い出したところで、「Limo」からのパーティーゾーンへ突入すると、その勢いのままオーディエンスのテンションをどんどん上げていった。
「ここからはさらにギアをトップに入れて、ある意味これが一番切れ味がある武器。とことんラップするぜ!」と叫んだ後は照明が真っ赤に染まり、SKY-HIの深いブレス音が場内に響いた後「Turn Up」のラップがアカペラで放たれ、ラップメドレーでヒップホップ、ラップの真髄を見せつけていく。ステージ後方にはSKY-HIのアグレッシブなマシンガンラップに合わせて、次々と重厚な言葉が映し出されていく。「さあ、かかってこいよ武道館!」。曲間で客席を挑発するSKY-HIの目が、獲物を狙うかのようにどんどんギラついていく。“俺こそが王者”とアジテートしながら気迫をばらまいていった「Enter The Dungeon」では、さらに現れた強力モンスターとのバトルをDJのスクラッチ、ギターリフ、コーラスがせめぎ合うサウンドでも表現。
そうして突入した「Tyrant Island」は、パーカッシブなドラムと汗だくのSKY-HIから繰り出される超高速ラップが生でバトルしていく緊迫したパフォーマンスで、観客を撃ち抜いていき、「Walking on Walter」の間奏に差し掛かったところで、SKY-HIが観客一人ひとりに語りかける。「今まで何万回もいわれてきた。お前には無理だってね。前例がないって。10年前、俺にそういったヤツ!2017年、俺は日本武道館2DAYSやってやったぜ!俺はこの先どこまでも“最高”を見せつけてやる。ついてこいよFLYERS(SKY-HIのファンの呼称)。音楽作ってる人間なんて、お前がいなかったら生きてる意味ないんだよ。俺が生きる証明をお前らがしてくれた。俺を生かしてくれるのはお前なんだよ。だから、命かける。受け取れFLYERS!もしも君があの日の俺みたいにその存在を否定されたら、安心しろよ。俺がひっくり返してやるから。俺はお前のために命をかけて尽くす。お前のネガティブをひっくり返してやるよ!」。全身全霊で放たれたその言葉の後に、最後に再びこの曲のパンチラインを叩き込み、客席は暗転。アウトロのピアノが聞こえてくる頃には、客席から鼻をすする声があちこちから上がり、泣きながら「ありがとう」と叫ぶファンもいた。
SKY-HIはさらにストレートな言葉を続ける。「辛いことがあって、目を閉じて夢の世界に逃げ込もうがFLYERS、俺が保証する。現実の方が夢に溢れてるんだよ」と伝えた後に始まったのは「ナナイロホリデー」だった。7色のカラフルな照明に彩られた場内に“ラ〜ララ、ラッラララ〜”の大合唱が広がり、武道館はとたんにハートウォーミングな空気に包まれていった。
君が生きてること、出会えたことを誇りに思う。