
H ZETTRIO LIVE 2026 こどもの日SP ~10th Anniversary~ Playin’ Swingin’ !!! Everybody !!!
2026年5月5日(火・祝)東京・LINE CUBE SHIBUYA
H ZETTRIOだからこそ生みだせる“楽しくて自由な空間”が広がっていた。音楽とは本来自由なものであり、その自由さこそが楽しさにつながることを、この日のステージが明快に示していた。『H ZETTRIO LIVE 2026 こどもの日SP ~10th Anniversary~ Playin’ Swingin’ !!! Everybody !!!』、2026年5月5日 東京・LINE CUBE SHIBUYA。H ZETTRIOは『こどもの日SP(スペシャル)』として、2016年より、年齢制限なしのライブを5月5日のこどもの日に開催している。その10周年となるのが、この公演だ。
会場内には親子連れの姿も多くあった。中には未就学児の姿も見受けられる。毎年来ているという家族もいるだろう。今回、初めてコンサートを体験する子どももかなりいそうだ。H ZETTRIOは、もともと“老若男女が笑って踊れる音楽”を追求してきたバンドである。その彼らが年齢制限のないライブを開催するのは、自然な流れかもしれない。毎年、さまざまな趣向を凝らして、あらゆる世代をワクワクさせてきた。今回は10周年ということで、例年以上に特別な企画が用意されていた。その1つが“セットリスト投票制”だ。
第1部のセットリストが3パターン用意されていて、来場者が入場時に受け取った投票用紙で投票し、メンバー自らの集計によって、もっとも人気の高いセットリストが演奏されたのだ。その3つとは、「お祭りわっしょいルート」「王道こどもの日ルート」「はじけまくれ!レッツゴー!ルート」。どのセットリストにも共通して入っている「Kids song」と「New Spring」はアレンジが3択になっていた。開演直前の投票結果で演奏曲順を決められる柔軟さも、H ZETTRIOならではだ。投票で選ばれて演奏されたのは「はじけまくれ!レッツゴー!ルート」だ。
この公演のために作られた「こどもの日SP」のオープニングSE(ボーカルはKOU)が流れる中、H ZETT M(Pf)、H ZETT KOU(Dr)、H ZETT NIRE(Ba)の3人がステージに登場すると、盛大な拍手が起こった。1曲目は「こいのぼり」だ。KOUは歌唱、Mは鍵盤ハーモニカを担当し、NIREは待機。<♪屋根より高いこいのぼり~>とKOUが歌い始めると、つられて一緒に歌う子どももいた。Mの鍵盤ハーモニカの音色が郷愁を誘う。途中からKOUの歌は<シャバダバダ>とジャズ風のスキャットへ、さらに終盤では観客も一緒になっての<ラララ>というシンガロングになり、NIREもベースで参加。会場内に和やかな空気が漂った。
「こんな始まりで大丈夫ですか?」(KOU)という言葉に続いては、『ひみつのアッコちゃん』のエンディングテーマ「すきすきソング」のカバー。ほのぼのした「こいのぼり」から一転して、ピアノトリオのスリリングな演奏が全開となった。スイングするリズムが気持ちいい。2体の天使の石像がキスしようとする映像が流れる演出もあり。なんだかとても“大人なアッコちゃん”だ。頭の固い大人ならば、「教育によろしくない!」と顔をしかめるかもしれないが、会場内の観客は早くもH ZETTRIOの縦横無尽な演奏によって、すっかり頭がほぐれているから、そんな空気は微塵もなかった。
「Kids song」のアレンジは、「ゆったりとたっぷり」「ROCKに激しく」「JAZZYに渋く」の3択の投票で、「ROCKに激しく」に決定していた。その指定どおり、ロックンロールなピアノ、ドラム、ベースが炸裂。Mは途中でピアノからショルキーへと楽器を変えての熱演。床の上にのけぞり、まるでロックギタリストのような速弾きソロを披露した。NIREがウッドベースを斜めに倒して、エレキギターを弾くようなポーズで演奏すると、キッズだけでなく、大人からも笑い声が起こった。KOUのドラムソロも高速かつ豪快。3人の中にハードロックバンドが降臨したような、やんちゃなステージだ。さらに、V6などで有名な「WAになっておどろう」のカバーでは、自在なアンサンブルとグルーヴが気持ち良かった。演奏の合間に、客席から聞こえる泣き声がいいアクセントになっていた。
「小さなお友だちの声が聞こえると、(10年間)やってきて、良かったなと思います」(NIRE)
「泣き声が聞こえていますね」(M)
「全然大丈夫です。俺も(感動で)泣いてますから」(NIRE)
「Playin' Swingin'!!! H ZETTRIO!!!」では、彼らの繰り出す多彩なリズムがひたすら気持ちよかった。事前に観客に配られた青、白、赤のサイリウムが、その演奏に合わせて揺れていた。続いての「New Spring」は、途中のソロでのパフォーマンスが「暴れて!走りまわって!」「ゆっくりしちゃって! 寝転がって!」「3人で円陣組んで!!」の3つから投票で、「3人で円陣組んで!!」に決まっていた。陽気なエネルギーのほとばしる、ダンサブルな演奏が楽しい。途中でブレイクすると、投票結果に合わせて、3人がステージの中央に集合して、がっちり円陣を組んだ。3人が密集するその姿は、まるで球状の生命体のようだった。これは彼らのチームワークの良さが可視化された瞬間でもあった。もちろん、観客の心もまた、その円陣の輪の中にいた。その後、また各自の持ち場に戻り、演奏が再開すると、Mがホイッスルを吹き、KOUがバイーアなどラテン系の音楽のリズムを刻み、NIREが妖しきグルーヴを生み出した。曲の途中でブレイクし、Mが「しぇー!」と奇声を上げ、さらに「LINEに打ちました」といいつつ、スマホに文字を打ち込んだのだ。ステージ上でLINEするミュージシャンを初めて目撃した。なんと自由な空間なのか!
実は当日限りで、各自のスマホから、LINEオープンチャットに登録でき、メンバーと観客がLINEを通じてコミュニケーションを取れるようになっていた。しかも、そのLINE画面がステージ背後のモニターで映し出されて、会場内で共有されていた。その結果、たくさんの数の「しぇー」が書き込まれた。中には、「しゃー」「しゅー」なんていう文字もあり。画面に映し出された文字を、子どもたちが声に出して読み上げていた。コンサート中にステージと客席がLINEでつながるなんて、前代未聞の演出だ。
「次はアニメの名曲だっちゃよ」(KOU)という紹介に続いては、「うる星やつらのテーマ」。どんどん加速していく神業のような演奏中に、観客がLINEに書き込んだ「神!」といった文字もモニター画面に映し出されていた。拍手や歓声以外の観客の反応が、リアルタイムでわかるのも、なかなかに楽しい。第1部の最後の曲は、RCサクセションの名曲「雨上がりの夜空に」のカバー。エネルギッシュな演奏に胸が熱くなり、サビのメロディの良さが際立つピアノの明るい調べでは、せつなさが込み上げた。白熱のセッションは圧巻。忌野清志郎の命日は3日前の5月2日。清志郎への敬意も感じさせる演奏だ。このセットリストを投票で選んだ観客に感謝したくなった。
15分の休憩を挟んでの第2部の1曲目は「Questune」。6月17日リリースのニューアルバム『QUESTUNE』のタイトル曲である。ストーリー性のある展開が魅力的で、シンセサウンドも交えてのミステリアスな演奏に引き込まれた。ミュージックビデオの映像が映し出される中でのパフォーマンスだ。冒険心と遊び心あふれる演奏は、『こどもの日SP』にふさわしい。NIREからはこんな言葉。
「10年やっていると、去年、小さかった子がこんなに大きくなったんだ、という驚きがあってうれしいです。みんな、大きくなってほしいな」(NIRE)
第2部は、H ZETTRIOの最新の音楽を楽しめる構成となっていて、アルバム『QUESTUNE』収録曲が多く演奏された。2曲目の「Mangalitza」も、1曲目同様にミュージックビデオの映像が流れる中でのパフォーマンスとなった。不思議な広がりを備えた曲で、3人のイメージ豊かな演奏に身を委ねるのが心地よい。「Airglow」では、光があふれ出していくような、みずみずしい演奏によって、身も心もリフレッシュ。この曲では、照明が客席を照らす演出もあった。続いての「夏のGravity」は、情感あふれるピアノ、陰影の濃いベース、繊細なドラムが、夏の日の情景を浮かび上がらせていった。
「新曲やるぞ!」というMの言葉に続いて、アイスクリームのイラストの映像が映し出される中で、「溶けないで!アイスクリーム!」が披露された。タイトルにも通じる、切迫感と焦燥感がにじむ演奏が楽しい。溶けそうなアイスクリームへの切実な思いを、こんなにも見事に音楽に変換できるところはさすが。ブレイクの瞬間には、3人が声を揃えて、「アイスクリーム!」と叫んだ。曲が終わったのちも、メンバーそれぞれが「溶けないで!」とコールし、子どもたちが「アイスクリーム!」と応える、元気なコール&レスポンスも実現。会場内には、アイスクリームが一瞬で溶けそうなほどの熱気が漂った。
後半は一気にたたみかけていく展開へ。Mのピアノのグリッサンド奏法によって、勢いをつけたまま、加速していったのは「Growin’」だ。「フー!」とKOUが奇声を上げ、NIREのベースがうなりを上げた。ダンサブルなリズムに合わせて、観客が青、白、赤のサイリウムを振り、ハンドクラップしたのは「Dancing in the mood」。曲が展開していくほどに、3人のパフォーマンスも白熱。本編のラストの曲、「OTODOKENIAGARIMASHITA」では、宅配をモチーフとしたミュージックビデオの映像が映し出される中で、この瞬間にしか生まれない熱々のセッションが、ステージから客席へとダイレクトにデリバリーされた。
とてつもないテクニックと、とんでもないアイデア、そして熱い思いの詰まった音楽が、大人も子どもも関係なく、しっかりと届いていたのは間違いないだろう。音楽の素晴らしさを、理屈ではなく、体と心で感じるステージだ。Mが両手を広げ、KOUが手を振り、NIREが客席へ拍手を送り、会場内は笑顔であふれた。本編終了直後からアンコールまでの間、観客からの感想がLINEオープンチャット映像で流れた。「最高!」「グッ!」などの賛辞に混じって、「行かないで~!」という懇願のメッセージもあった。これはステージを去る3人への言葉だろう。もちろん3人はステージに戻ってきて、アンコールへ突入した。
アンコールでは、最新アルバム『QUESTUNE』収録曲の「All Will Be Fine」と「Buono Time」が演奏された。観客すべてを祝福するような晴れやかなMのピアノで始まり、包容力のあるNIREのベース、繊細なKOUのシェーカーとドラムとが混ざり合い、ヒューマンな世界を生み出していく。「All Will Be Fine」は、H ZETTRIOから子どもたちへの温かなメッセージのように響いてきた。アンコールラストの「Buono Time」では、ワクワクドキドキの詰まったセッションが展開された。ブレイクでは、「大きくなれよ」とM。演奏が終わると、挨拶する3人に、拍手と歓声が降り注いだ。楽しくにぎやかに、「こどもの日SP」の幕を閉じたのだ。
この日のステージで、楽しさとともに、温かさを感じたのは、H ZETTRIOの3人の、子どもたちに対するまなざしの優しさゆえだろう。途中で子どもの泣き声が聞こえてくることもたびたびあったが、それすらも演奏の一部であるかのように響いてくるから、不思議だ。H ZETTRIOの演奏も幼子たちの声も、生命力に満ちていた。笑いたければ笑い、泣きたければ泣く。そんな自由な空間が成立しているのは、H ZETTRIOが瞬間瞬間の感情の発露をそのまま音楽として表現しているからだろう。生きることを全力で肯定するようなコンサートでもあった。H ZETTRIOから大きなプレゼントをもらったような気分になった。彼らがくれたものとは“音楽を楽しむ心”だ。
そして、この日生まれた笑顔や高揚感は、きっと次の“クリスマスライブ”への期待へとつながっていくのだろう。
こどもの日スペシャル10周年 LINE CUBE SHIBUYA 無事終了しました!最高に楽しいライブでした!ありがとうございました〜 pic.twitter.com/8aNfw4YLjK
— H ZETTRIO (エイチゼットリオ) (@H_ZETTRIO) May 5, 2026
SET LIST
〜第1部〜
SE
01. こいのぼり
02. すきすきソング
03. Kids song
04. WAになっておどろう
05. Playin' Swingin'!!! H ZETTRIO!!!
06. New Spring
07. うる星やつらのテーマ
08. 雨上がりの夜空に
〜第2部〜
SE(Mukashi Mukashi)
01. Questune
02. Mangalitza
03. Airglow
04. 夏のGravity
05. 溶けないで!アイスクリーム!
06. Growin’
07. Dancing in the mood
08. OTODOKENIAGARIMASHITA
ENCORE
01. All Will Be Fine
02. Buono Time



















