cali≠gari、駆け抜けた4ヶ月間の『TOUR 18』が終着点へ!EX THEATER ROPPONGIで迎えたツアーファイナルをレポート

ライブレポート | 2026.02.04 18:00

TOUR18 FINAL “Lorem ipsum dolor sit amet,”
2026年1月25日(日)東京・EX THEATER ROPPONGI

1926年に幕を開けた昭和は、2025年ついに“100年”を迎えた。平成に入ってからの目覚ましいIT進化により、昭和を知る者からすると隔世の感の強いなか、昭和に青春を過ごしたcali≠gariが2025年9月に発表した最新アルバムが『18』である。2024年にリリースした『17』に続く『18』というナンバリングタイトルは通常運転だが、ジャケットに描かれているのは70年代の特撮作品『大鉄人17(ワンセブン)』に登場するワンセブンの弟・ワンエイトの姿。桜井青(Gt)が幼心に衝撃を受けたというロボットの無骨なビジュアルは“昭和”へのノスタルジーをかき立てつつ、『大鉄人17』が人工知能同士の戦いを描いた作品であるという事実が、AIが人間社会を侵食しつつある現代との奇妙な符号を示す。つまり『18』とは昭和と令和、アナログとデジタルの狭間で激変する社会の危うさを映し出した作品と言えるのかもしれない。

そんなアルバムを引っ提げ、昨年10月に始まった『TOUR 18』が1月25日(日)、東京・EX THEATER ROPPONGIでファイナルを迎えた。鉄骨が剝き出しになって巨大な鉄製ファンが回るステージセットからは、何かを粉砕するような機械音が鳴り、まさにインダストリアルな空気を醸すなか、幕開けを飾ったのはアルバム曲「ニッポニアニッポン」。噴き上がる6本の火花をバックに、まずはサポートドラムのササブチヒロシがタイトなビートでフロアを揺らすと、桜井の衝動的なギターが空を裂き、村井研次郎のベースがうねる強固なグルーヴで、オーディエンスの魂に火をつける。

そこでタイトルをひたすらリピートして歌い上げる石井秀仁のヴォーカルは、まさしく火花のような爆発力。そのまま「東京行くぞ!」と桜井がシャウトして、アルバムリード曲「東京亞詩吐暴威」に雪崩れ込めば、80年代の香りも濃厚にcali≠gari特有の色気を纏わせたキャッチーなロックチューンが場内をかき回していった。

石井秀仁

ザクザクと切れ味鋭い桜井のカッティングに舐めるような村井の指弾きと、それぞれの自由に過ぎる奔放なプレイが絶妙に噛み合って、フロアを心地よく酔わせていくのは、さすが30年選手。そして、おなじみの「ハイカラ殺伐ハイソ絶賛」では演奏のみならず声で、腕でオーディエンスを煽り立て、60年代スターのヒットソングをオマージュした「破滅型ロック」へと展開していく。タイトルに不似合いな明るいコードと照明が、恍惚を極めていく先に見えるのはひとつの消滅。なるほど、これは確かに“破滅型”に違いない。

軽快なビートに乗って桜井と村井がポジションをスイッチする「ギャラクシー」、シニカルな言葉が詰め込まれた「マス現象ヴァリエーション2 諸事万端篇」と続き、ピコピコとデジタリックなSEから始まったのは「デジタブルニウニウ」。ロボットのように無機質な動きを見せながら桜井が歌うAメロから、肉感的な石井のヴォーカルへのギャップも味わい深く、さらにタイトルと曜日を繰り返す「コバルト」へとバトンをつなぐ。

村井研次郎

桜井青

2000年代初頭に発表した『第6実験室』『第7実験室』の楽曲で多彩な音楽性を披露しながら、着実にオーディエンスをトランスの果てへと誘った果て、投下されたアルバム曲「ポポネポ」のインパクトは、ゆえに強烈。晴れやかなトーンとメロディックな旋律に乗せ、独自の皮肉や毒を纏わせながらも“まだ生きてる”と歌う石井は、この日、派手なアクションやパフォーマンスは排し、ただ、歌声だけで場を支配しようと挑んでいるように見えた。その試みが見事に成功していたことは言うまでもない。

以降も、彼らの歌と演奏と曲世界は変幻。「虜ローラー」ではダンサブルなサウンドに乗り、オーディエンスは左右に大きく手を振って爽快な一体感を醸すものの、それはすぐにぬるりと湿った空気へと変わる。水音に不穏なSEが重なり、暗がりを赤と青の光が照らす中で披露されたのは「パイロットフィッシュ」。低音からファルセットまでを駆使する石井の妖艶なヴォーカルは、スローに悩ましく揺れるサウンドとピタリとハマり、後半に入る桜井のセリフも陰鬱なムードをかき立てていった。そして名曲「君と僕」へ。あふれる“君”への思いに耐えかねるように石井は腰を落として歌い上げ、ササブチのドラムもダイナミズムを増して、切ない情景を描き上げていく。一転、トロピカルな夏の景色を彷彿させるアルバム曲「素知らぬ夢の後先に」では、楽器陣が極上のアンサンブルで魅了。シンプルなナンバーでこそバンドとしての熟成が光るのは、cali≠gariが本物であることの証だろう。

さらに、工場音のSEを受けて衝撃的な“罪深い”のリフレインでパンクに爆走する「×」からは、アルバム『18』収録のアッパーチューンを連投。「東京いける? いけんの!?」とフロアを煽った桜井は、前のめりにギターをかき鳴らしてステージに膝をつき、村井のベースはバチバチに弾ける。桜井がAI目線で歌詞を書いたという「“Hello, world!”」はポップなリズム感と刺々しい音色、そして呪文を唱えるかのような石井の低音ヴォーカルでフロアを煽動。ちなみに曲を締めくくる“Lorem ipsum dolor sit amet,”という文言は、アルファベットの定番ダミーテキストであり、このツアーファイナルのタイトルでもある。ただ、スペースを埋めるためだけの無意味な言葉の羅列は『18』のテーマとして公言されている“日常化されたAIとの対話”とも通じるものがあり、人は何をもって人間たらしめられるのか?という問いを我々に突きつけてくるようだ。しかし、そんな考察もおなじみのライヴチューンがシームレスで展開すれば雲散霧消。「まほらば憂愁」では桜井のギターフレーズと村井のランニングベースが心地よすぎる重なりを為し、「青春狂騒曲」になると2人は目にも止まらぬ運指で青春の衝動と眩しさを音に落とし込んでいく。満場の拍手とメンバーコールを受け、ここで桜井はツアーを振り返り、丁重な口ぶりでオーディエンスに語りかけた。

「あっという間でしたね。駆け抜けた4ヶ月間。ほうぼうでいろんなことがありまして、なんとかかんとかここまでたどり着くことができました。<中略>楽しかったです。残り時間、一緒に楽しんでってください」

そうして雄大なドラムビートから始まった「グン・ナイ・エンジェル」では、ロマンティックな詞世界とドリーミングな音像がクラップを呼び、荘厳なオーケストレーションSEを挟んで「5670000000」へと開ける流れは実にドラマティック。ダイナミズムあふれるドラムに荘重なヴォーカルが乗る重厚感満点のラストナンバーの後半には、オープニングと同じ火花の柱が噴き上がり、客席を圧倒したところで耳に届く“君が君であるわけがない”というリリックは鳥肌ものだ。そもそも「5670000000」というタイトル自体、釈迦入滅後に弥勒菩薩が降臨するまでの年数から取ったもので、そこからも本作が凡人には及びもつかないズバ抜けたスケール感に立脚したものであることを知れるだろう。石井がステージを去り、楽器陣が一斉に曲を締めると、一際高く火花が噴出。アルバム曲を並べた壮大かつ感動的なエンディングに、フロアからは大喝采が沸き上がった。

夕暮れの街に流れる「夕焼け小焼け」の帰宅チャイムをBGMにメンバーが再登場し、アルバム『18』のラスト曲「スクラップ工場はいつも夕焼けで」からアンコールはスタート。モデラートな歌謡ロックのクライマックスで放たれる石井のロングトーンは、ノスタルジックな詞世界で歌われる苦い思い出を、まるで昇華していくかのようでもある。そのまま歌謡色を引き継いでの「スクールゾーン」では“ハイハイ”のコール&レスポンスで心地よく疾走する一方、やはり描かれているのはポジティブとは言えない物語。そんなアンビバレンツは「ラスト、いくぞ!」という桜井の号令からライブを締めくくった「藍より蒼く」でも健在だった。『18』の幕開けを飾る約2分のスラッシーなナンバーで、弦楽器隊はステージ上を動き回り、バンドのパッションを爆発させながらも、石井が歌うのは機械仕掛けの明日に震える人の様。そして桜井が作詞・曲した、このラスト2曲に共通しているのが“凡ての色が死んだ夜に”というリリックである。AIが世を席巻し、すべてが画一化された世界は、まさしく“凡ての夜が死んだ”状態と言えるだろう。「スクールゾーン」は2009年のリリースだが、すでに桜井はその萌芽を感じていたのかもしれない。

終演後には、3月4日(水)に新宿LOFTで次回公演を行うことも急遽告知。チケットは現在発売中で、こちらの方も楽しみに待ちたい。

SET LIST

01. ニッポニアニッポン
02. 東京亞詩吐暴威
03. ハイカラ殺伐ハイソ絶賛
04. 破滅型ロック
05. ギャラクシー
06.マス現象ヴァリエーション2 諸事万端篇
07. デジタブルニウニウ
08. コバルト
09. ポポネポ
10. 虜ローラー
11. パイロットフィッシュ
12. 君と僕
13. 素知らぬ夢の後先に
14. ×
15. "Hello, world!”
16. まほらば憂愁
17. 青春狂騒曲
18. グン・ナイ・エンジェル
19. 5670000000
20. スクラップ工場はいつも夕焼けで
21. スクールゾーン
22. 藍より蒼く

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