そして、時代は彼女が大学3年生の頃に遡る。「私が音楽を始めるきっかけになったのは、とあるオーディションなんです。それまでは全く興味がなくて、カラオケしかやったことがなかったんですけど。映画が作りたくて、映画と繋がりたくて受けた役者のオーディションで歌ったら褒められて。歌もいけるのかということで音楽を始めました」という言葉から歌われたのが、Chara「Break These Chain」(1991年)だ。オーディションで故・小池聰行(オリコンの創業者)に「君の歌は上手い下手関係ない。魂が揺さぶられるんだよね」と言われたことが契機となって彼女は鼻歌で曲作りを始め、なかなかうまくいかない時に行ったCDショップではっぴいえんどと出会い、曲作りを進めていく過程でユーミンを知る——。のちにCharaと同じ事務所に所属することになったのも偶然ではないだろう。また、2025年12月5日(金)にCharaは東京・EX THEATER ROPPONGIでワンマンライブを行っており、バンマスはこの日、鍵盤を担当している皆川だった。Charaもまた「Break These Chain」をセトリに加えていたが、ウィスパーヴォイスで歌ったCharaに対して、安藤は大地を踏みしめながら全身を使ってパワフルにパフォーマンス。「1公演終わるくらい疲れちゃった」と笑っていたが見ているこちらも力がみなぎってくるほどのエネルギーを放っていた。
「私が中学に入るくらいの頃にマイファミリーが解散したんですけど、母(の見た目)がベッド・ミドラーに似てて。母の和子は音痴で音域も狭くて、声がしゃがれてるんですけど、研ナオコさんとベッド・ミドラー『The Rose』だけはいい味で歌ってて」と語られた「The Rose」では、皆川がピアノとオルガンを両手で弾き、Sheigkuniと設楽がともにアコギを奏でながら、男性4声のコーラスが重なり、場内はまるで教会のような神秘的なムードに包まれていった。そして、「海を見ていた午後」(1974年※24日のみ演奏)、「ダンデライオン〜遅咲きのタンポポ」(1983年/原田知世※25日のみ演奏)というユーミンワークスを経て、今から10年前に参加した銀杏BOYZのトリビュートアルバム制作時に「ミックスを聞いてた娘(当時、幼稚園児)が、ラーメン臭くて可愛そうと泣いてた」と笑っていたロックバラード「なんとなく僕たちは大人になるんだ」(2005年)では、場内の照明が落とされ、印象的なオルガンのフレーズの中をフォーキーながらもスケールの大きい、ゆったりとしたメロディーが奏でられ、観客は深みのある世界にどっぷりと引き込まれていった。これは、おそらく意図的ではないのだろうが、母の和子から娘の裕子、母になった裕子から娘へという家族の歴史も感じるブロックだった。(ちなみに1日目に母親が、2日目に娘が観覧に訪れていたそう)
「今宵のクリスマスパーティーもいよいよ終演の時がやってきました。みんなの2026年がとんでもなく素晴らしい1年になりますように祈ってます」と語った後、自然と手拍子が沸き起こった「ぼくらが旅に出る理由」(1994年/小沢健二)で観客の一人一人に手を振りながら幸せを届けると、クリスマスや冬の景色を引き連れた「雪が降る町」(1992年/ユニコーン)で舞台は華やかに幕を閉じた。
アンコールでは、2014年11月にTOWER RECORDS限定でリリースされた、書き下ろしのクリスマス・ストーリー絵本が付いた自身初のクリスマスソング「クリスマスの恋人」(作曲と編曲は末光篤)をパフォーマンス。激しさと切なさを兼ね備えたピアノロックで観客の熱気をあげたあと、ライブの最後に歌われたのはドラマ「魔術はささやく」の主題歌として書き下ろしたバラード「飛翔」(2012年)。通り過ぎる日々の中で、こぼれ落ちてしまった沢山のものを思い出しながら、それでもやってくる明日にかすかな希望を持ちたいと願う楽曲は、まさに安藤裕子クロニクルとなったカバーライブにぴったりだった。また、「A HAPPY NEW YEAR」や「なんとなく僕たちは大人になるんだ」を始め、この日にカバーされた楽曲たちの多くが、過去を振り返りながらも<明日の幸せ>を願うものであり、全編を通して、安藤裕子の優しく力強い歌声が観客の心を強く揺さぶっていたことも記しておきたい。25年前に小池氏が発した言葉の正しさと重みを再確認させられた夜となった。
次回の「Journey to 2028 “Happy Go Lucky”」はオリジナルになる予定だ。ホップ、ステップ、ジャンプの“ステップ”にあたる第3回目のホームでの開催を期待して待ちたい。
SET LIST
01. A HAPPY NEW YEAR
02. セシルはセシル
03. ハイスクールララバイ
04. エイリアンズ
05. 林檎殺⼈事件
06. 抱きしめたい
07. Woman〜Wの悲劇より〜
08. Break These Chain
09. The Rose
10-1. 海を見ていた午後 (※24日のみ)
10-2. ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ (※25日のみ)
11. なんとなく僕たちは⼤⼈になるんだ
12. ぼくらが旅に出る理由
13. 雪が降る町
ENCORE
14. クリスマスの恋⼈
15. ⾶翔














