kobore HALL ONEMAN~ヨルノカタスミ~
2025年11月1日(土)府中の森芸術劇場(ふるさとホール)
結成10年を迎えたkoobreが地元・府中にて、初のホール公演となるワンマンライブ『kobore HALL ONEMAN ~ヨルノカタスミ~』を開催した。府中の高校で結成し、ライブハウス・府中Flightを拠点に活動と、府中で生まれ育ったバンドが愛する地元で行う凱旋ライブ。彼らの新たな挑戦を見届けるべく集まったファンで、会場は満員御礼。開演前の客席はムワッとした熱気に包まれたライブハウスのフロアとは雰囲気が異なるも、妙に厳かな感じや仰々しさもなく、期待とワクワクに満ちた温かい雰囲気といった印象。
開演時間となり、SEと盛大な拍手に迎えられて登場したメンバー。ステージの中央に立ち、両手を広げて拍手を受け止めた佐藤 赳(Vo&Gt)がゆっくりギターを構えて。力強い歌声とどっしりしたバンドサウンドで始まった1曲目は「声」。2016年にリリースした1stデモCD「ヨルノカタスミ」に収録された、全ての始まりといえるこの曲。<この声があなたに届きますように>と願うように歌い、広いホール会場にロングトーンを響かせる。
続いて、「いつも通りいくぞ!」と佐藤が気合いを入れて、「パーフェクトブルー」に突入。安藤太一(Gt)の切れ味鋭いギターリフから、ドライブ感ある楽曲を軽快に駆け抜けると、「聴かせて!」の呼びかけに客席から大合唱が起きる。その美しい歌声に佐藤は、「最高だ」と笑顔を見せた。<頑張れ!頑張れ!>と声を合わせて熱い気持ちを交換した「エール!」と続き、一人ひとりに問いかけるように歌う「君にとって」が一番後ろの席で観てた僕まで届いた時、ホール会場の広さをふと忘れさせて。koboreの楽曲の良さやメッセージが一人ひとりに確実に届いてることが分かった時、早くもこのライブの成功を確信した。
「東京府中、koboreです。よろしくお願いします!」と改めて挨拶して始まったMCでは、軽口で自身の緊張をほぐしてる感もあった佐藤が、「府中ということもあってか、最高に楽しめています」と素直な気持ちを告げる。「俺ら、曲が最高なんで。いい歌をいい場所で、いい人と出来ることを誇りに思います。ありがとうございます!」と感謝を告げると、伊藤克起(Dr)の勇ましいドラムで始まった曲は「夜に捕まえて」。夜を想起させる暗めのライティングに包まれ、ミラーボールの光が会場いっぱいに星空のように輝くホールならではの演出で魅了すると「夜を抜け出して」と続き、また違った角度から映る夜の風景を描く。
「るるりらり」の曲中には、「ここまで連れて来てくれてありがとう!」と感極まった様子で告げた佐藤。「ここ(府中)で出来た曲、いっぱいあります。いっぱい分かって、楽しんで帰って下さい」と話し、「ワンルームメモリー」「ローカルから革命を」「オレンジ」と地元の風景や思い出や抱いた夢を綴った、この場所で鳴らす意味のある曲が続く。さらに「今日も府中に集まって、歌が歌えることが紛れもなく最高のことで。今日この日があったから、歌が歌えたから、空が晴れていたから。今日、俺はkoboreで最高の歌が歌える」としみじみ語り、「リボーン」へ。「この4人でここにいれて嬉しい」と溢れる思いを曲中に挟んで。<私ここで生きてく 私ここで歌ってく>と歌詞を変えて歌ったこの曲から、4人の揺るぎなき結束と、ここからも歌い続ける強い覚悟をひしと感じた。
田中そら(Ba)の正確にリズムを刻むベースに乗せて、「もう説明する必要ないと思います。この曲、ホールでみんなの声を響かせて歌いたい」と始まった「愛が足りない」では、ハンドマイクで歌う佐藤が客席に降りて熱唱すると、<もっともっと僕にくれよ>のコール&レスポンスで観客と愛を贈り合って。終盤はギターを背負って、4人で無邪気に音を合わせる。「ホールだからさ、やりてぇことやらせてよ」と佐藤が笑うように、ホール会場でのワンマンを思い切り楽しんでいた彼ら。佐藤がアコギを背負って、楽器隊が横並びで着座して始まったのは、アコースティック編成での演奏。「俺たちの曲はさ、一曲一曲というより、ライブ一本通して一本の映画を観たみたいな、そんな気持ちで楽しんで帰ってほしいんだよ」と話すと、たっぷり気持ちを込めた歌と演奏で「ドーナツ」「東京タワー」の2曲を披露。ライブを映画に例えると、ライブ中盤に置かれたこのブロックは、主人公の心層に一歩踏み込むシーンといったところだろうか? アコースティックということもあり、歌詞のひとつひとつがじわりと染み込んでくる。
「俺たちは出会いより別れにフォーカス当てることが多くて、嬉しいより寂しいにフォーカス当てることの方が多くて。きっと全てが上手くいってるやつには、俺らの歌が響かないと思うんだよな。「ああくそ!」とか「何してんだ自分!」とか、そう思ってなんぼの人たちがkoboreぶっ刺さってるんだと思う。俺もそうだから」と佐藤が語るように、上手くいかない僕たちの心の穴をこの瞬間だけは音楽で埋めてくれて。少しだけ前に進む力を与えてくれるのが、koboreのライブの魅力なのだと思えたのは、アコースティックのブロックがあったからだろう。再びバンドセットに戻り、「ラストオーダー」「きらきら」とミディアムテンポの楽曲が続くと、より心の深いところで切なく優しく響いているような感覚があった。
続いて、「koboreはね、寂しさを吹き飛ばすような力はないけど。寂しいは寂しいままで、あとは音楽に任せればいいって。そう歌えるバンドだと思っています。みんなにとって夜というものが、koboreがいることで彩られますように。寂しいものでありませんように」と楽曲に込めた想いを佐藤が語り、披露したのは新曲「夜に焦がれて」。ひとり言を呟くように始まり、しだいに情熱的に感情的になっていく君への想い。そんな心象風景を丁寧に描いた歌と演奏で聴く者の胸を締め付けると、「ずっとそばにいてくれよ!」と懇願するように叫んだ佐藤。さらに「夜空になりたくて」で感傷的な歌声を響かせると、「歌楽しい。歌うの楽しい!」と真正直な気持ちを伝え、大きな笑顔を浮かべた。
「みんなにとっての一番とか最高とかさ、最強とか伝説になろうと必死に頑張ってたんだよ。でも、koboreはそんなじゃなくて、みんなにとって必要なものになろうと思った」と熱く語り始まった「テレキャスター」で「お前らが信じられるバンドになる!」と力強く宣言すると、ライブは終盤戦へ。「幸せ」「爆音の鳴る場所で」と続いて、バンドで音を鳴らすこと、歌を届けること、そしてそれを必要とするたくさんの人がいることの喜びを改めて実感していた感のある4人。「誇らしい。こんな最高の仲間と今日を迎えられて、誇らしいよ。今日が終わってもまだまだ歌うから。オマエのためじゃなくて、自分が作った音楽のために、koboreが作った音楽のためにカッコ良くいるから」と告げて始まった「STRAIGHT SONG」のアグレッシブで気合いに満ちたパフォーマンスは、その言葉をしっかり体現していた。
「抱きしめに来たぜ!」と叫び始まった「この夜を抱きしめて」の曲中、「俺たちも背負うものが増えて、いろんな仲間が出来て、今日だってそういう人たちのおかげで出来てる。俺は照れくさいから『めんどくせぇな』とか言っちゃうけど、本当はめちゃくちゃ嬉しくて。今日、改めていろんなことに気付かされた。いろんなものを大事にしようと思った。一番とかじゃなくて、頑張るとかじゃなくて、俺はこのバンドのボーカルでいようと思った」と佐藤が決意を語ると、「俺たちが東京・府中、koboreです!」と爆音を鳴らし、メンバーが歌声を重ねる。バンド一丸となって最高潮の盛り上がりを生むと、本編は1曲を残すのみ。
「はじめはたった4人で始めた『ヨルノカタスミ vol.1』。場所は府中Fright。その時は確か、ゴミみたいなライブをしちゃった。でも今日、1曲目で「声」がやれたこと、いまでも「テレキャスター」が歌えること。そして、俺たちの曲がいまでも輝き続けて、いいなぁと思えること。紛れもないです、ここにいるkobore好きのおかげです。いつもありがとうございます」と観客への感謝を語った佐藤が、「今日は誰のためでもなく、自分のために歌おうと思います」とたっぷり気持ちを込めた歌声で始まったのは、koboreの代表曲「ヨルノカタスミ」。たくさんの思い出が詰まった楽曲に結成10年を振り返り、窓に射した光にここからの明るい未来を描く、最高のエンディングとなったこの曲。<またここで会いに行かなくちゃって>とこの場所で再会することを約束して、初のホール公演を締めくくった。
アンコールでは来年3月、自身主催の対バンイベント「kobore pre.『FULLTEN』」を東名阪にて行うことを発表。「いい10年目になりそうです」と笑顔を見せ、「そんな上手くいかねぇッス、なにくその方が多いッス。それでも俺たちなりに前に進むことを諦めないです。これからもkoboreを応援して。よろしく!」と「FULLTEN」「当たり前の日々に」の2曲を披露。10年目のひとつの集大成であり、10年目以降への大きな期待が詰まった凱旋ライブを締めくくった。終演後、構想製作10年の壮大な映画を観終えたような、満足感のあるホールワンマンだったが。手に汗握る熱いシーンや、見たこともない風景を描く名曲の誕生、想像を超える展開が待ってるであろうkoboreの物語は、ここからまだまだ続いていくのだ。
2025.11.1(Sat) 府中芸術の森劇場 ふるさとホール
「kobore HALL ONEMAN〜ヨルノカタスミ〜」THANK YOU SOLD OUT!
photo(@shinmachida1999) pic.twitter.com/1lZXnQJVqp
— kobore (@kobore_official) November 1, 2025
SET LIST
01. 声
02. パーフェクトブルー
03. エール!
04. 君にとって
05. 夜に捕まえて
06. 夜を抜け出して
07. るるりらり
08. ワンルームメモリー
09. ローカルから革命を
10. オレンジ
11. リボーン
12. 愛が足りない
13. ドーナツ
14. 東京タワー
15. ラストオーダー
16. きらきら
17. 夜に焦がれて
18. 夜空になりたくて
19. テレキャスター
20. 幸せ
21. 爆音の鳴る場所で
22. STARIGHT SONG
23. この夜を抱きしめて
24. ヨルノカタスミ
ENCORE
25. FULLTEN
26. 当たり前の日々に














