HONEBONEホールワンマンライブ2025「人生まるごと全肯定!!」
2025年11月2日(日)渋谷PLEASURE PLEASURE
涙と笑いが交互に起こる“喜怒哀楽のジェットコースター”と形容したくなるコンサートとなった。渋谷Pleasure Pleasureで開催された『HONEBONE ホールワンマンライブ2025 「人生まるごと全肯定!!」』。2人だけのコーナーもあったが、基本的にはバンドスタイルでのステージで、メンバーはEMILY(ボーカル)とKAWAGUCHI(ギターとコーラス)というHONEBONEの2人に、スーパーさったん(エレキギター)、木下きえ(ベース)、野口紗依子(キーボード)、脇山広介(ドラム)を加えた6人編成だ。
HONEBONEの2人のドキュメンタリー・タッチのオープニング映像に続いて始まったのは、10月15日リリースの新曲「やっても歌」だった。ハンドクラップの中、タイトなバンドサウンドに乗って、EMILYがハンドマイクを持って歌い、KAWAGUCHIが足でリズムを取りながらギターを奏でていた。ダイナミックなバンド演奏の中での歌声が新鮮に響いた。この曲は失敗、すなわち“やってもうたこと”が描かれた歌で<言葉を間違えた>という歌詞があるが、なんとEMILYが実際に歌詞を間違える場面もあった。だが、この日のライブのタイトルは 「人生まるごと全肯定!!」であり、人生に失敗はつきものだから、まったく問題ない。「そういう歌だから。歌詞を間違えますよっていう歌だから」とKAWAGUCHIがナイス・フォロー。2曲目の「満月こわい」では観客も一体になってのシンガロングとなり、早くも会場内に熱気が漂った。
「最高じゃないか。最後まで楽しんでいってください」とEMILY。歯切れのいいドラムで始まったのはシニカルな曲調の「カメレオン」だ。途中で2人の歌とギターのみになり、テンポが遅くなる構成が効果的だ。緩急自在、起伏のあるドラマティックな演奏の中で、自分らしく生きることを促すパワーの詰まった歌声がズシッと届いてきた。EMILYのボーカルとKAWAGUCHIのギターという2人組の魅力を損なうことなく、自在なバンドサウンドによって、歌の世界が広がっていた。サポートメンバーの4人が、HONEBONEの歌の世界の魅力を深いレベルで理解しているから、そして歌心を備えているからこそ、こんなにも人間味あふれるバンドサウンドが生まれるのだろう。
「渋谷が苦手なんだよ。嫌いな電車が走っているんだよ」というEMILYのMCに拍手が起こって始まったのは「東横戦争」。不穏な空気の漂うバンドの演奏の中での、ホラー小説のストーリーテラーのようなEMILYのオカルトめいた歌声にシビれた。一転して、「皆様の健康をお祈りして歌わせていただきます」というEMILYの言葉に続いて演奏された「健康音頭」では観客もハンドクラップやコール&レスポンスと盆踊りのような動きで参加。おどろおどろしい曲から楽しくにぎやかな曲へ。1曲1曲の振り幅がとてつもなく大きいところにも、HONEBONEの音楽の魅力がある。KAWAGUCHIも踊りながらギターを弾き、会場内に笑顔の花が咲いていた。EMILYの優しい歌声と情感のにじむピアノで始まったのは「ラブソング」だ。<君が君のことを好きでいられるように>というフレーズは、コンサートのタイトル『人生まるごと全肯定!!』とも重なっている。大切な人へのラブソングであると同時に、自分自身を大切にするラブソングとして響いてきた。
「よくここまで来てくれました」というEMILYの言葉に続いて始まったのは「Hello Hello」。疾走感あふれるバンドサウンドからみずみずしいエネルギーがほとばしり、EMILYの伸びやかな歌声が真っ直ぐ届いてきた。後半はKAWAGUCHIもコーラスで参加。全員の奏でる音がとても温かい。続いての「祝祭」では、観客もハンドクラップとシンガロングで参加。すべての観客の人生を祝福するような「祝祭」だ。『人生まるごと全肯定!!』というコンサートタイトルどおりのポジティブなナンバーが3曲続いたところで、バンドセットによる前半が終了した。
メンバーがステージから下がり、EMILYとKAWAGUCHIによる人生相談の映像を挟んで、中盤は2人による演奏となった。「リスタート」の冒頭のサビを導入部として、「Re Re リスタート」へと入っていく流れになっている。穏やかさの中に確かな意思が詰まっているEMILYの歌声と、その歌声に寄り添うようなKAWAGUCHIの繊細なギターとのコンビネーションが絶妙だ。続いては「最悪」。つぶやくような歌声が染みてくる。歌もギターもミニマルなのだが、表情が豊かで深く染みてくる。バンド編成とデュオ編成、それぞれの良さが際立つステージだ。
「自分が上手くいかないと思っている時に、芸人の方に相談することが多くて、芸人さんに救われています。次の曲は人を笑わせるという尊い仕事をされている芸人さんにリスペクトをこめて、カバー曲を歌わせてください」というEMILYのMCに続いて、ビートたけしの「浅草キッド」が披露された。この歌では漫才コンビの相方への思いが描かれている。音楽とお笑いとで表現形態は違うが、同じように2人組のHONEBONEが演奏することによって、素朴な味わいと深い説得力が生まれていた。続いての「なあ兄弟」も兄弟2人のストーリーが描かれている歌だ。EMILYの歌とKAWAGUCHIのギターは、まるで酒を酌み交わす義兄弟のように親密に響いてきた。
後半は再びバンド編成での演奏だ。マーチングドラムとハンドクラップとともに始まったのはWOWOWドラマ『異世界居酒屋「のぶ」』の劇中歌の「遥かなる景色」。EMILYの朗らかな歌声、アイリッシュテイストの漂うバンドサウンドが気持ち良く響いてきた。KAWAGUCHIのギターのつま弾きで始まったのは「赤ちょうちん」。内省的でありつつ、伸びやかさと力強さを備えた歌声とぬくもりのあるギターが染みてきた。バンドの演奏も実にヒューマンだ。
「今年は芸歴1年目みたいな年だった。過酷な現場、多くなかった?」とEMILY。「心に刺さることがたくさんあったよね」とKAWAGUCHI。さらにEMILYがこう続けた。「生きていれば、悔しい出来事、苦しい出来事、痛い出来事、いろいろあります。私がみなさんの気持ちを吸収して受け止めて、ここに置いて帰ろうかと思います」という言葉に続いて、「いてえじゃねえか」が演奏された。痛い思いをたくさんしてきたHONEBONEが奏でるからこそ、ダイレクトに生々しく響いてきた。この曲ではなんと、<いてえ、いてえ、いてえ>というコール&レスポンスで大盛り上がりとなった。痛みを題材にしながらも音楽として表現・発散することによって、こんなにも楽しい空間を作ってしまえるところが素晴らしい。続いては「ナマリ」へ。この曲も失恋の恨みやつらみを立ち直るパワーへと変換する歌だ。ハードボイルドなテイストの漂う歌と演奏に大歓声が起こった。
「今日は『人生まるごと全肯定!!』ということで、会場にいる時間だけは嫌なことを忘れて楽しい時間を一緒に過ごすためにやってきました」とEMILY。さらに、「音楽を続けている理由のひとつは、ある人に思いを届けたいということでした。去年、その人が亡くなってしまい、どういう気持ちで音楽をやればいいんだろうと見失ってしまった時期がありました。でもその時の気持ちすら歌にしてきました。みんなの人生も、その人の人生も全肯定させてください」という言葉に続いて、「Pink Sky」が演奏された。EMILYの澄んだ歌声とKAWAGUCHIの透明感のあるギターで始まり、生命力のみなぎる歌と演奏が響き渡っていく。客席からはすすり泣きや嗚咽が聞こえた。この曲には聴き手の感情を揺さぶり、浄化するパワーが宿っているのだろう。群青色から茜色へと変化していく照明の演出も印象的だ。会場内に夜明けの空や夕暮れの空が広がっているようだった。
続いては「生きるの疲れた」。EMILYのつぶやき声のような歌声が、生きていることに疲れた経験のある人たちの胸に、じわじわと染みていったのではないだろうか。曲の終わりの<生きてみようか>という力強い歌声が深い余韻を残した。KAWAGUCHI がシームレスでギターを演奏している。本編最後の「夜を越えて」は、そのKAWAGUCHIのギターに乗っての観客のシンガロングからの始まりとなった。ハンドクラップやかけ声も加わってエネルギッシュな歌と演奏が展開されて、会場内の全員がともに夜を越えていくようだった。「みんな、元気でいるんだよ。絶対また会おう」とEMILYが最後に一言挨拶。すべての人間を全肯定していく鮮やかなエンディングだ。
アンコールでは、冬の予感が漂い始めた時期でありながら、季節感を完全に無視して、アロハとサングラス姿で真夏の歌「ズトナツ」での幕開けとなった。が、そのままメドレーで「Fuyu Maji Samui」に突入。夏から冬へと一気にワープする縦横無尽の流れは彼らならでは。続いては、半年禁酒していたというEMILYがビールのジョッキを持って、「乾杯!」と音頭を取り、一口飲んだところから、「とりあえず、生!」が始まった。ねぎらいのパワーの詰まった陽気な歌と演奏によって、お祭りのようなにぎやかな空気が漂っていった。観客も「生!」と叫び、ハンドクラップ。全員でコンサートの打ち上げをしているかのような開放的な空間が広がった。
「いろいろあるけれど、やっていきましょう」というEMILYの言葉に続いてのアンコール最後の曲は「2025」、10月22日リリースの新曲だ。この曲はHONEBONEの2人のみでの演奏となった。KAWAGUCHIのギターのカッティングとEMILYの語りで始まり。HONEBONEの2人の率直な思いが真っ直ぐ届いてきた。デビュー11年目の彼らの新しい始まりの歌、そして、何度も挫折してきた彼らだからこそ発することのできる不屈の歌だ。
良いことも悪いこともセットになってやってくるのが人生である。HONEBONEは人生のさまざまな局面で生じる喜怒哀楽を、嘘偽りのない音楽としてリアルに表現していた。どんなにネガティブな感情や辛い経験であったとしても、音楽として表現した瞬間にポジティブなものになることを、この日の彼らのステージが明確に示していた。『「人生まるごと全肯定!!」』を観終わって、ヘミングウェイの小説のワンフレーズが頭に浮かんだ。それはこんな言葉だ。「人生は素晴らしい。闘う価値がある」 HONEBONEの音楽が聴く者の胸を強く揺さぶるのは、愛と希望とともに闘志が詰まっているからだ。困難を乗り越えるたびに、彼らの音楽はさらに強く優しく、そして大きくなっている。彼らは次なるステージへと着実に向かっているところだろう。
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ワンマンライブの様子をお届け🎉
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先日の渋谷でのワンマンライブの様子をダイジェストでお送りします🎥✨
来年のステージはヒューリックホール🔥
🗓️2026年11月8日(日) 開演17:00
📍ヒューリックホール東京FC先行受付中👇https://t.co/twmzygDNQG
撮影・編集@MariOokawa@shinyakizakura pic.twitter.com/UC8RRWSsfB
— HONEBONE (ホネボーン) (@HONEBONE_OFFI) November 4, 2025
SET LIST
01. やっても歌
02. 満月こわい
03. カメレオン
04. 東横戦争
05. ラブソング
06. Hello Hello
07. 祝祭
08. リスタート
09. Re Reリスタート
10. 最悪
11. 浅草キッド
12. なあ兄弟
13. 遥かなる景色
14. 赤ちょうちん
15. いてえじゃねえか
16. ナマリ
17. Pink Sky
18. 生きるの疲れた
19. 夜をこえて
ENCORE
20. ズト☀ナツ〜Endless Summer〜
21. とりあえず、生!
22. 2025

















