ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU
2025年10月25日(土)有明アリーナ
かつてビートルズが歌った「GET BACK」は、元いたところへ帰ろうと歌う原点回帰のメッセージだった。そして2025年にゆずが歌う「GET BACK」は、ノスタルジーを原動力にして未来を目指す再出発の決意だ。10月23日・25日・26日の三日間、有明アリーナで開催された「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ supported by ITOCHU」は、25年前の問題作『トビラ』(2000年)にファンと共にゲットバックする心の旅だ。久しぶりに開けたトビラの向こうに見えたものは一体何か? デビュー記念日にあたる25日のライブの模様を振り返ろう。
恒例の「ラジオ体操第一」で始まったライブは、すぐに一転してシリアスなムードへ。ステージ左右の巨大ビジョンに映るモノクロのアニメーションが、『トビラ』のダークな世界観をモノローグで語る。アイデンティティも行き場もみつからない「影」としての僕が、出口を求めてトビラに手をかける。巻き戻る時間。その瞬間、ステージを覆う白い幕に二人のシルエットが浮かび、勢いよくドラムが鳴り響くと、幕が切って落とされステージの全貌が明らかになった。アコースティックギターを抱えた北川悠仁、岩沢厚治、そしてドラム、ベース、ギター、キーボードのシンプルな4ピース。1曲目「幸せの扉」から、二人の美しいコーラスが広いアリーナいっぱいに響き渡る。
続けて「日だまりにて」「仮面ライター」と、冒頭3曲の流れは『トビラ』と同じ。猛烈にダークでハードな「仮面ライター」の、鬼気迫る北川の絶唱に岩沢がハーモニカで応酬する、スリリングなやりとりに胸が高鳴る。強烈なレーザーとストロボライトの演出も迫力満点だ。「ガソリンスタンド」は北川と岩沢による弾き語り、「新しい朝」は岩沢と北川がボーカルを分け合い、2本のアコースティックギターとバンドのアンサンブルで、あたたかい世界を作り上げる。『トビラ』は問題作と言われるが、サウンド的には心地よく聴きやすいものも含まれる。ライブバージョンで聴くと、その魅力の多面性が生き生きと浮かび上がってくる。
不穏なムードたっぷりの北川のナレーションが流れ、真っ赤なライトと燃えるかがり火が妖しくステージを染める。北側の作った「何処」は「仮面ライター」と並ぶ激しく攻撃的な曲で、怒りを叩きつけるボーカルが凄まじい。この曲は“TOBIRA Mashup”と題した新バージョンで、中間部に「通りゃんせ」を挟み込んだマッシュアップソング。「何処」の持つ禍々しいほどのパワーがさらに増幅し、観客は身じろぎもせず茫然とステージを見つめるのみ。凄い音圧だ。
「ねぇ」は歌詞が大事な曲だ。ねぇ、僕は間違ってないかい? 『トビラ』制作当時の、世間の評価と自分の本質の間で苦しむ日々を吐露したと思える北川の歌詞は、ライブで聴くとより強く胸に迫る。エモーショナルなロックバラードに仕上げたバンドの力も素晴らしい。ここまで数曲、あえて映像を使わなかったのは、歌をじっくり聴かせたい二人の意図だろう。『トビラ』の世界は心の目を開くことで、よりくっきりと見えてくる。
岩沢の作った「飛べない鳥」の爽快なフォークロック調のサウンド、北川作の「心のままに」の重厚なワルツのリズムと、同じアコギ中心の曲でも二人の個性の違いが面白い。ここまでMCはまったくないが、たぶんこのまま最後まで行くだろうとふと思う。それほどによく練られた構成と、歌に込めた熱量が絶大で、トークをはさんで流れを断ち切るのがもったいない。
ここでバンドにスポットが当たり、ギター・佐々木“コジロー”貴之、キーボード・松本ジュン、ベース・種子田健、ドラム・松原“マツキチ”寛と、頼れるメンバーの紹介をはさんで次のセクションへ。9曲続いた『トビラ』の世界から離れた最新曲「尤」(ゆう)は、オリエンタルな要素をたっぷり含むアップテンポのライブ映えする曲。そしてイントロを聴いただけで全員がタオルを取り出すお祭りナンバー「T.W.L」と、キラーチューンを連ねてぶっ飛ばす。この日初めてハンドマイクを握ってステージを走る北川の、ビジョンに映る笑顔を見れば、言葉はなくとも心のうちは一目瞭然。七色の照明とレーザーが飛び交う演出も豪華絢爛だ。
再び『トビラ』の世界へ回帰して、大ヒット「嗚呼、青春の日々」を歌う二人は、あの頃と同じだろうか。それを見ている自分はあの頃と変わっただろうか。一つ言えるのは、ゆずは25年後の今も同じようにエネルギッシュでパワフルな情熱を持ってステージに立っているということ。ふと音が途切れ、冒頭のアニメーションとナレーションが繰り返される。いや、今度は「影」だった自分が肉体を持ち、力強くドアノブを握るカラフルな映像だ。
まばゆい光の中で「GET BACK」を歌う二人の笑顔がビジョンに映る。トラックと生バンドを融合させた力強いリズムが体を揺らす。明快なポップチューンがトビラの向こうへ突き抜けた喜びを伝え、エンディングの瞬間にツアータイトルを掲げたタイトルバックが浮かび上がる。湧き上がる拍手の音圧が凄い。それは『トビラ』の世界観と「GET BACK」のメッセージを繋ぎ合わせ、完璧にデザインされた80分間のショータイム。
「いつもとは違う雰囲気でしたが、楽しんでいただけたでしょうか? せっかくアンコールをいただいたので、思い切り楽しんでいってください」(北川)
完璧な80分間のあとは、くだけたムードで笑顔満面のアンコールへ。曲はみんな大好き「夏色」だ。キャノン砲が銀テープを発射し、会場全体でミニタンバリンが盛大に打ち鳴らされて大はしゃぎ。そこに突然、「曲の途中ですが緊急告知です」のテロップと共に来年のツアー日程が発表されてさらに大騒ぎ。キャリア初となる「ゆず 弾き語りアリーナツアー 2026」は、5月~7月に全国21公演を行う大規模なもの。来年の初夏の予定が早くも決まった。
「若い自分たちがまっすぐにひたむきに、生きる力をぶつけるアルバムに向き合って、圧倒されました。若いゆずも、なかなかやるじゃないか。でもやってみてわかったことは、今のゆずの圧勝でした」(北川)
二人を代表して北川が『トビラ』制作時の葛藤を語り、ひるがえって今のゆずの充実を語る。「GET BACK」は振り返るチャンスを与えてくれた。最後の曲を、25年前の自分たちに、ファンのみんなに、今の自分たちに、今日ここに集まってくれた人に贈りますーー。ラストソング「午前九時の独り言」の歌詞は、今聴いても一語たりとも古びてはいない。シンプルなフォークソングに乗せた、愛と平和を心から切望する言葉は、むしろ重みを増している。変わったのは自分か、それとも時代か。
大型ビジョンに「またあおう!」という手書きのメッセージが浮かび上がり、会場が明るくなる。夢からさめたようにざわめきが戻る。『トビラ』へゲットバックしたゆずが何を得たか、来年のツアーでそのヒントが見られるはずだ。そして2026年は結成30年、2027年にはデビュー30周年のアニバーサリーが控えている。ゆずを追う日々は、途切れることなく未来へと続いてゆく。
ゆずの輪 Presents
YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ
Supported by ITOCHUご来場いただいた皆様、
生配信をご覧いただいた皆様、
ありがとうございました🚪来年 #ゆず弾き語りアリーナツアー で
お会いしましょう。https://t.co/rSdfZz59tU#ゆずGETBACK #トビラリバイバル pic.twitter.com/bIcTc2MQNP— ゆず (@yuzu_official) October 26, 2025
SET LIST
01. 幸せの扉
02. 日だまりにて
03. 仮面ライター
04. ガソリンスタンド
05. 新しい朝
06. 何処~通りゃんせ(TOBIRA Mashup)
07. ねぇ
08. 飛べない鳥
09. 心のままに
10. 尤
11. T.W.L[Y.Z ver.]
12. 嗚呼、青春の日々
13. GET BACK
ENCORE
14. 夏色
15. 午前九時の独り言
Apple Music / Spotifyにて、セットリストプレイリストを公開
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