TOKYO SPIRAL vol.2
2025年10月2日(木)新代田FEVER
出演:おもかげ / SAIHATE / Broken my toybox
出演バンドの熱い音楽とオーディエンスの熱気、ライブハウスに渦巻く様々な感情をスパイラルさせて、さらなる高みへ上昇していくというコンセプトを持つ、ディスクガレージ主催イベント『TOKYO SPIRAL vol.2』が開催された。
昨年の7月以来の開催となる『TOKYO SPIRAL』。おもかげ、SAIHATE、Broken my toyboxと、今回もライブハウスシーンを賑わす新進気鋭のバンドが3組出演。会場は若手バンドの登竜門的存在となっている、ライブハウス・新代田FEVER。お目当てのバンドの出演を心待ちにしたり、初めて観るバンドに期待を抱いたりと様々な想いが渦巻く、開演前のフロア。ちなみに筆者は初めて観るバンドばかりだけど、初回開催時にすごく楽しかったという『TOKYO SPIRAL』への信頼があるので。今回も新しい出会いやそこに渦巻くスパイラルに期待しかない!
この日のトッパーはおもかげ。ひぐまかんた(Vo&Gt)がポロンとギターを鳴らし、一瞬の静寂からウェットな声を響かせて聴く者の心を掴むと、彼らの代表曲「ラベンダー」で本格スタート。力強く丁寧な演奏と甘く切ない歌声で会場を包み込む。
間髪入れずに鳴らす左近航介(Dr)の軽快なビート、えいと(Gt)の胸躍るギタープレイで魅せたインストから、「あなたの好きなように乗ってください」と呼びかけて始まった曲は「ミライ」。その巧みなライブ運びと高い演奏力に魅了されていると、「全員飛べるかい? ジャンプ!」の掛け声に会場中がジャンプを合わせ、早くも会場に一体感が生まれる。
MCでは「改めまして、横浜のおもかげです」とひぐまが挨拶すると、「テンション上がりすぎて、アンプがオーバーヒートしちゃって」と悠星(Ba)が機材トラブルがあったことを明かす。メンバーの支えもあってそんなトラブルも気にさせず、大いに沸かせた序盤戦を振り返り感心していたが。「青空メモリー」で、息の合った演奏とコーラスにオーディエンスが歌声を重ねる光景を見て、「そうか、4人がしっかり気持ちをひとつにしてライブに臨めてるからトラブルも乗り越えられるし、こんな風景も生み出せるのだな」と納得。
ライブ後半、「まだまだ楽しんでいこうぜ!」と始まった「閃光」にフロアから熱い拳が上がると、「いま、あなたにとって大切な人、僕にとって大切な人に向けて書いた新曲です」とギターの弾き語りから始まった曲は「こころ」。たっぷり気持ちを込めた歌と演奏が会場の雰囲気を一変し、オーディエンスの心を強く揺さぶった。
「こころ」の演奏後、温かい拍手を受けたひぐまは嬉しそうな表情を浮かべると、「僕らおもかげは、横浜の高校3年生の冬に結成して、もう少しで2年になります」と、改めて自己紹介。「あの頃の夢を、いまの僕らなら少しは叶えられるのかな? なんて、そんな風に思います」と話すと、「僕らの夢の途中で出会ってくれて、本当にありがとうございます」と感謝を述べ、ラストナンバー「ボクの文学」へ。
<声の先にいつか答えはあるはずさ>と高らかに歌い、ここからも夢に向かって歩き続ける決意を表明。その力強い歌と演奏に励まされた観客の手拍子は、彼らの想いを後押しするようで、互いにエールの交換をしてるようにも感じたこの曲。「みんなで歌おう!」の呼びかけに、会場中が歌声を合わせてライブはフィニッシュ。10月25日(土)にはSpotify O-Crestにて、自主企画『あの頃の夢の話 Vol.2』を開催するおもかげ。あの頃の夢に向かって、一歩ずつ着実に前に進む彼らの姿を見届けて欲しい。
続いての登場は、SAIHATE。OPナンバーは、焦燥感とか不足感とか孤独といった、言葉にならない感情をなぞらえた歌と演奏がやがて激しさを増していった「東雲」。楽曲後半、感情むき出しのボーカルと激情的なサウンドがオーディエンスの心を掻きむしり、フロアに熱い拳が上がる。
続く「天使の君へ」で加速してライブを勢いづけると、深い夜を想像させるゆったりした曲調が雰囲気を変えた「orion」へ。壮大な演奏と高ぶる感情、一筋の光を求めるカナイタクミ(Vo&Gt)が夜に吠える。
再び爆音を鳴らし、アグレッシブなステージで圧倒した「SEA GIRL」と続き、緩急つけた展開でオーディエンスの感情を揺さぶった前半戦。感情をストレートに表現した歌や演奏がガツンと胸に響き、共感や共鳴や衝撃を与えてくれる、荒削りながらリアルで人間臭い楽曲やライブが、実に俺好み。いいバンドだなぁ!
MCでは、「僕たち、先日にアルバム『wave』をリリースしまして。それに伴ってツアーをやります」と近況を語ったカナイ。11月1日(土)府中Flightで始まるツアーのファイナルを、1月31日(土)新代田FEVERにて行うことを告知すると、「僕たちのアルバムは、自分たちにとって一番大切な宝物になったなと、出来上がって思いました。そのアルバムの中でも、俺が一番好きな曲です」と曲紹介して「stay」を披露。
夕焼け色のライトがよく似合う、カナイの感傷的なボーカルが胸締め付けた「stay」。<もしも君に会えたなら もしもこの声が届いたら>と忘れられない人を想う歌詞や悲痛なハイトーンからは、真っ直ぐな人柄や純粋さもひしと伝わってくる。
ツネザワハヤト(Dr)の力強くダイナミックなビートに、コバヤシトモヤ(Ba)の正確なプレイ、コバヤシリュウセイ(Gt)のエッジィで骨太なサウンドと、メンバーそれぞれの魅力がキラリ光っていた「Smile」をしっかり聴かせると、ラストは残る力を搾り出すような渾身の歌と演奏で魅せた「響け」。カナイの絶叫が会場に響き、オーディエンスの心にしっかりと爪痕を残した。
華やかで壮大なOPナンバー「Fantasia」から、風格さえ感じる堂々としたステージングでオーディエンスを圧倒したのは、大トリで登場したBroken my toybox。どっしりした演奏に、伸びやかで声量ある藤井 樹(Vo&Gt)の歌声が強烈な存在感を放つ! 藤井がギターを背負って披露した「コピーライト」は、楽曲構成の面白さや表現力豊かなボーカルが実に魅力的。フロアを眺めるとオーディエンスがきらきらと目を輝かせて体を揺らし、彼らの楽曲世界にどんどん惹き込まれていってるのが分かる。
Broken my toyboxのジャンルの枠にとらわれないカラフルな世界観に、まるでテーマパークに飛び込んだようだなと思っていると、「初めての方も一緒に盛り上がってくれますか?」の声にオーディエンスが手拍子を合わせて始まった楽曲は「桃源郷へようこそ」。そうか、ここはテーマパークじゃなくて桃源郷だったか! キラキラ光るミラーボールの下で<桃源郷 ようこそ皆様>と歌う藤井に、桃源郷では全部気持ちを委ねて、仰せのままに心のままに歌って踊るのが正解なのだと理解する。
続いて、「このまま行きますけど着いてこれますか?」と初めて観る人も手を取るようにリードして、「レッドオーシャン」へ。高田健太郎(Gt)のアグレッシブなギタープレイやグルーヴの要となる郷間直人(Ba)のベースサウンドも存在感を示すこの曲。アッパーな曲調に体を揺らすオーディエンスが、拳を上げて掛け声を合わせて。会場に強い一体感が生まれたところでMCへ。
家の近くに出来た牛丼屋の牛丼が衝撃的に美味いという、健太郎の興味深い話題で始まったMCでは、いろんな店で提供される牛丼をバンドに例えて。「たくさんあるバンドの中から、こんなに好きになってくれるって素敵だなと思って。みなさんにとってそういう存在でありたいと思います」と話し、オーディエンスから笑いと拍手が起きる。「憧れの地だった」と語る、新代田FEVERに初出演した喜びを語り後半戦へ。
藤井のハイトーンボイスが切なく胸を締め付けた「THERAPY」。軽快なビートにステップを踏み、手振りも混じえた感情豊かなボーカルで幸福感を表現した「幸福のすべて」と続き、コール&レスポンスで始まったラストは「apPETite」。<悲しみを抱いて出かけよう>と、聴く者にポツンと陰を落として本編を終えた。
「自分たちが歌い繋いで行きたいと思って、このタイトルをつけました」と曲紹介して始まったアンコールは「ENDLESS」。限りある時間、生きることの尊さを歌った人生賛歌に、僕は今日という日を完全燃焼した出演3バンドと、この場に集ったオーディエンスのことを思っていた。
悔いが残らないように今日という日を燃やし切って、まだ見ぬ明日へ向かう。限りある人生、そんな充実した日々を送りたいと願っていても、悔いを残したまま一日が過ぎてしまう日がほとんど。だけど、出演バンドたちの熱い想いとオーディエンスの感情がスパイラルして、互いに完全燃焼することが出来て。「今日はいい日だった! 燃え尽きた!!」と思える、この日みたいな特別な日が時々あるから、また明日も前を向いて生きていける。
大げさだけど、そんなことを思わされた『TOKYO SPIRAL Vol.2』のエンディング。再び新進気鋭の熱いバンドたちが集い、渦巻く感情をスパイラルさせるVol.3の開催も楽しみ!
昨日はTOKYO SPIRALにお越しいただき、ありがとうございました!
ご出演いただいた おもかげ / SAIHATE / Broken my toyboxのみさなさん、かっこいいステージをありがとうございました!
数あるバンドの中でこうして巡り会って好きになるってとても素敵なこと🙌素敵な1日をありがとうございました☺️ pic.twitter.com/8oQ3tRr8VS
— TOKYO SPIRAL (@tokyo_spiral) October 3, 2025
SET LIST
【おもかげ】
01. ラベンダー
02. ミライ
03. 青空メモリー
04. 閃光
05. こころ
06. ボクの文学
【SAIHATE】
01. 東雲
02. 天使の君へ
03. orion
04. SEA GIRL
05. stay
06. Smile
07. 響け
【Broken my toybox】
01. Fantasia
02. コピーライト
03. 桃源郷へようこそ
04. レッドオーシャン
05. THERAPY
06. 幸福のすべて
07. apPETite
Encore. ENDLESS





























