台湾ロック界のレジェンド・伍佰(ウーバイ)、待望の初来日公演を開催!人間味あふれるステージで観客を魅了

ライブレポート | 2025.10.22 12:00

伍佰 Wu Bai & China Blue Rock Star 2 WORLD TOUR IN JAPAN
2025年10月2日(木)ぴあアリーナMM

台湾ロック界のスーパースター、ウーバイが彼のバンドであるChina Blueとともに10月2日、1日限りの日本公演<伍佰 Wu Bai & China Blue Rock Star 2 WORLD TOUR IN JAPAN>を神奈川・ぴあアリーナMMで開催した。2018年から2024年にかけて行なったワールドツアー<Wu Bai & China Blue Rock Star World Tour>の続編として、2025年4月からスタートさせた新しいワールドツアー<Rock Star 2 WORLD TOUR>の一環として行なった本公演の模様をレポートする。

ウーバイは、自国台湾においては30年以上にわたってトップクラスの人気を誇り、現在も中国や香港、シンガポール、マレーシアなどを含む華語エリアを代表するロックスターとして君臨しているビッグネームのアーティストだ。プロデューサー、ソングライターとして多くのメジャーアーティストに楽曲提供もしていて、俳優や写真家としての顔も持ち合わせているウーバイ。その彼が1992年に結成し、現在まで不動のメンバーで活動を続けているのが4人組ロックバンド、Wu Bai&China Blueなのだ。ウーバイはこのバンドでギター&ヴォーカルを務めている。台湾では珍しい英語圏のロックをベースにしたサウンドからスタートした彼らは、そこに台湾的な歌謡を融合させ、幅広い世代の支持を獲得。台湾で昔から親しまれてきた日本の橋幸夫の「恋をするなら」や沢田研二の「時の過ぎゆくままに」を彼ら流にカヴァーしたり、ウーバイと個人的に交流があったプロレスラーの武藤敬司には、入場曲「閃光魔術」を書き下ろしてプレゼントするなど、日本とも実は接点があった彼ら。近年では、大ヒットした台湾のTVドラマ『時をかける愛』と、9月に日本でも公開された映画『劇場版 時をかける愛』の挿入歌「Last Dance」がTikTokとSNSでバズったことで、再び注目を集め、その人気は世界のさらに広いエリアへと拡大。そんな絶好のタイミングでの来日となった本公演。

会場に到着すると、人々がしゃべっている言葉はほぼ中国語! 本公演限定で販売されていたコラボメニューを見ても、ドリンク、フードまで台湾仕様になっていた。場内に入ると、客席にはワイヤレスでコントロールされるペンライトが全席に置かれている。今回はワールドツアーの一環ということで、ウーバイ率いるChina Blueのバンドメンバー以外にサポートギター、パーカッション、3人編成のブラスセクション、3人の女性モダンダンサーらも帯同して来日。さあ、日本でどんなライブを見せてくれるのか。

ワクワクのなか、開演時刻になるとステージには大会場ならではの巨大LEDパネルが広がり、サポートメンバーが登場。彼らが奏でるインストをバックに、ウーバイ&China Blueの4人がステージに現われると、会場にはアイドルグループのコンサートのような歓声が響き渡る。よく見ると、観客たちはペンライト以外に、メッセージボード、横断幕など、熱のこもった応援グッズを掲げている。そうして、ライブは「我是老大」で幕開け。前半はここからロックなナンバーを立て続けに披露していく。華やかなホーンに彩られながらも、安定した演奏力を誇るバンドサウンドは、どこまでも骨太でタイトに引き締まっていて男くさい。ウーバイの弾くギターは力強くワイルドで、ソロではブルージーなフレーズも入れ込み、それがめちゃくちゃカッコいいのだ。そんなサウンドをバックに、野性味溢れる歌唱で歌うウーバイは、ある意味ぶっきらぼう。そこがロックスターっぽい。ステージに立っているだけで、ものすごい風格や包容力、貫禄がにじみ出ている。天空に星形のライトが光り、巨大なピンク色の月が浮かび上がってくる映像が迫力満点だった「黄色月亮」は、アリーナならではのスケール感で観客を魅了。両サイドにある縦長のLEDパネルにはウーバイの顔アップが映し出される。それを見ると、すでに彼は汗だく状態で、言葉を選ばずにいうと、その風貌はどう見てもイケオジではなくておじさんなのだ(微笑)。そうして、曲を歌い終えるとタオルでゴシゴシ顔の汗を拭き、タンブラーから水をゴクゴク飲みまくる。ロックスターなのに、このなにもカッコつけてない、溢れんばかりの人間味、親しみやすさこそがこの人の最大の魅力なのだろう。

次に、どこかビートルズを感じさせるイントロから「涙橋」が始まると、観客の大合唱がライブに加わっていく。もちろん、LED画面には「歌え」といわんばかりに、歌詞が映し出されていく。ギターを置いたウーバイは、手で涙を隠すような仕草を入れて、この曲を歌ってみせた。Dino(Dr)のドラムロールから“ウォーオ”というコール&レスポンスで、さらに観客の喉を温めたあとは、こんな前半に最大のキラーチューン「Last Dance」を投下! 圧倒的な人気曲とあって、観客たちはイントロから歓喜し、大声でこの曲を歌唱。そうして客席の一体感を作り上げたあと、次はウーバイが「一點點」で魅せる。自らミニトランペットを吹き、そのトランペットとヴォーカル、1人2役でこの曲を掛け合いをするように歌い、吹き鳴らしていったところは、まさに神業。いつ息継ぎをしているんだというようなパフォーマンスで観客を驚かせたあと、さらに「怎樣歌」ではトランペットをタンバリンに持ち替え、ダンサーたちと一緒にダンスまで踊ってショーを自ら盛り上げていくのだ。ウーバイ&China Blueは今年で結成33周年! そんな重鎮的ポジションにいるロックバンドが、ライブではここまで多彩なパフォーマンスを繰り出す。そのエンターテイナーぶりに、まず前半から驚かされる。

その張本人であるウーバイはこのあと、アリーナ前方に武藤敬司を見つけて大興奮! 無邪気な笑顔を浮かべながら、武藤氏に向かって頭を下げ、興奮気味に「武藤さーん、私は貴方のファンです」と流ちょうな日本語で丁寧に挨拶を伝えたあと「Thank you for coming!」と言葉を続けた場面は、彼の紳士で礼儀正しい一面が感じられた部分だった。しかし、そんな彼、観客には容赦なしなところがとにかく面白かった。バンドメンバーが一人ずつ“ウォー!”といいながらハンドウェーブを行なったあと、続けて客席がハンドウェーブを行なうという場面があったのだが、そこでは、客席の始まり方が揃っていないといって、ウーバイは首を横に振りながらぴしゃりとダメ出し。また、コール&レスポンスの声に迫力がないときも、同じようにダメ出しを発動。「男性」「女性」と呼びかけて、声を上げる場面では「3階」「2階」などというコールに交えて「(チケット代が)高い席の人」とお茶目な顔でいってみたり(笑)、とにかく客席とのやりとりがアリーナクラスのライブとは思えないほどおもしろいのだ。そのやりとりを見ているだけで、ウーバイに対して親近感がわいてくるから不思議だ。

このあと、ライブは「被動」で再開。間奏ではウーバイのとてつもなくエモいギターソロ、アウトロでは小朱(Ba)、Dino、大貓(Key)がアンサンブルでアドリブを繰り出し、ロックなグルーブで大いに盛り上がったあと、ウーバイはステージを去る。インターバルの場面では椅子とテーブルがステージに運びこまれ、ダンサーたちがコンテンポラリー要素強めの独特のダンスを披露。観客たちを、歌のないミュージカルを見ているような気分で楽しませていったあと、場内の照明がここで突然薄暗くなる。ブラスセクションがメランコリックな音を奏でた後、着替えを終えた大貓が1人で出てきて、キーボードで「夏夜晩風」のイントロを奏でると、続いてウーバイが登場。台詞混じりの「夏夜晩風」をロマンチックに届けたあとは、照明が7色に輝いた「採虹」、LED一面に広がった青空に白い鳥が飛び立っていった「白鴿」まで、ノスタルジックな雰囲気を感じさせる叙情ナンバーを観客とともに朗々と歌唱していった。

ライブはこのあと、「樹風」から再びロックモードへとシフトしていく。ギターの弦をマイクスタンドにこすりつける往年のロックパフォーマンスで場内をわかせたあと、“ナナナ~”のコーラスから「背叛」が始まると、間奏でウーバイとサポートギタリストがステージ上で向かい合い、ギターでハモりながらバトルを開始。すると、LEDパネルのなかでは森の木がものすごい勢いで燃え上がりだし、照明も真っ赤になっていったところは、サウンドと映像、照明が凄まじいパワーで客席を席巻。だが、このようなアリーナクラスならではのスケールを感じさせるロックパフォーマンスだけにとどまらないのが、彼のライブの凄いところ。「夢醒時分」は、イントロから場内がとてつもなく沸き上がったのを察知したとたんに、ウーバイはギターを弾くのを止め、指で観客に支持を出し、リズム隊の演奏に合わせてこの曲をたっぷり歌唱させ、客席の一体感をどんどん高めていった。その歌声をもっと近くで感じようと、マイクから離れ、汗だくになりながら舞台の上手、下手へと移動を繰り返してしてくウーバイ。顔をくしゃくしゃにしながら、LED画面がとらえる表情で、歌詞に込めた想いを観客に語り掛けるようアピールしていった人間味溢れるパフォーマンスもまた、ウーバイの真骨頂なのだ。

再びハンドウェーブを楽しんだあと、ライブはLEDパネルいっぱいに緑の草原が広がった「青草地」からいよいよ終盤戦へと突入。「青空地」の曲中の掛け合いで、会場のテンションを後半に向けていっきに引き上げていったところに「世界第一等」が始まると、客席はついに総立ちに! 曲中にメンバー紹介を挟んで、ウーバイのギターソロが終わると、観客たちは一丸となって大声でこの曲を大合唱。そうして、最後はポップな「妳是我的花朵」を踊りながら楽しく歌って、ピンク色のカラーテープがヒラヒラ舞い落ちるなか、本編は終わりを迎えた。

本編を終え、メンバーが去りきる前から場内にはアンコールを求める声が響き渡る。黒い公演Tシャツに着替えたメンバーが再び登場すると、ギターリフが映える重厚なロックナンバー「純白的起點」が始まり、続けてピアノのイントロからバラード「心愛的再會啦」が始まると、客席から大喜び。観客たちはリズムに合わせて手を左右に振りながら、最後は“アーアーアー”のコーラスパートをみんなで力強く大合唱してみせた。それを見届け、ウーバイは手を振ってステージを後にする。まだまだ足りないといわんばかりに、再度アンコールを求める声があがると、それに応えて、再びメンバーがステージに登壇。キャッチーなポップソング「愛拼才會贏」が始まると、客席はいきなりものすごい音量で大合唱を始める。その勢いのまま「突然的自我」に突入すると、場内にはものすごい勢いで歓喜の悲鳴が炸裂。そうして、この日一番の大合唱が巻き起こると、会場はとんでもない多幸感に包まれていった。そうして、この日は「再度重相逢」を最後に演奏。大量のキラキラした紙吹雪が舞い落ちるなか、この曲の歌唱を終えたウーバイは、客席に向かって「もう帰って」というような合図を手で送りながらステージから姿を消した。

トータル2時間50分。ダンサーやブラスセクションを入れ、観客をどこまでも楽しませるショーアップされたステージは、体感的にはあっという間だった。多彩なパフォーマンスで観客を楽しませていくウーバイは、まさにエンタータイナーなロックスター。だが、なによりもそんな彼の飾らない人柄、人間味溢れるステージパフォーマンスに魅せられた来日公演だった。

SET LIST

01. 我是老大
02. 上癮了
03. 風火
04. 黃色月亮
05. 淚橋
06. Last Dance
07. 一點點
08. 怎樣歌
09. 浪人情歌
10. 挪威的森林
11. 被動
12. 九重天Plus
13. 九重天咖啡廳
14. 夏夜三重奏
15. 夏夜晚風
16. 彩虹
17. 白鴿
18. 樹風
19. 背叛
20. 翅膀
21. 夢醒時分
22. 青草地
23. 世界第一等
24. 妳是我的花朵

ENCORE1
01. 純白的起點
02. 心愛的再會啦

ENCORE2
03.愛拼才會贏
04.突然的自我
05.再度重相逢

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