四星球
お祭りムードをいっそう加速させたのは、赤城ステージの四星球。メンバー全員がレイザーラモンHGのコスプレ=“HG-FREAK FACTORY”となって「フォー!」と叫んだかと思えば、「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」に乗せて、下仁田ネギ、ダルマ、ぐんまちゃんなど、まさやん(Gt)が段ボールで作った群馬ネタも次々に繰り出し、相変わらずその日限りの「山人音楽祭」を踏まえた全力投球で大いに楽しませてくれる。
シュールでバカバカしいライブなのに、北島康雄(Vo)の「みなさんの笑い声が起こって、初めて完成するバンドでございます!」といった言葉、「クラーク博士と僕」の“知らぬ間に始まった人生が知らぬ間に終わっていく”のラインでなぜだか泣けてくる。ほとんどの曲に反応できるオーディエンスも温かい。北島がなかなか立ち上がれない生まれたての馬に扮した「UMA WITH A MISSION」では、客席の子供たちからも「馬がんばれー!」という声が飛び、G-FREAK FACTORYの「日はまだ高く」を応援歌として引用する一幕も。
「ロックフェスにコミックバンドなんて本当は必要ないんです。でも、呼んでもらえるのはこんなヤツがいてもいいんじゃないかってこと。つまりはあなた、変わらなくていいってことですからね」「高崎FLEEZ、早く復活してください!」という北島のMCも忘れられない。
マキシマム ザ ホルモン
夕方になると、ドームの外には大粒の雨が。しかし、赤城ステージのマキシマム ザ ホルモンはそんなことお構いなし。爽やかでキャッチーなメロディと激烈ヘヴィな音塊、相反する要素が暴力的に弾けて混ざったような恋コンボ「恋のアメリカ」「恋のメガラバ」などを、容赦なく腹ペコたちにモリモリと食らわせ、アリーナはすぐさま制御不能の大カオス状態に。
6年ぶりの「山人音楽祭」出演となるホルモン。G-FREAK FACTORYとの記憶を振り返りながら「彼らが大きいフェスを主催して、20数年経っても変わらずいられるなんてまったく想像してなかったです。そして、その頃に生まれた熱いヤツらといっしょにやれるなんて、こんな最高なことありますか!?」と、ナヲ(ドラムと女声と姉)は感慨深く語る。
ホルモンならではの混ぜるな危険サウンドに、イラストや歌詞を映し出すポップなVJが掛け合わされ、「令和ストロベリーバイブ」ではスラップベースとオートチューンを投下。モンキーダンス、ワイパー、ヘドバン(子供たちもノリノリで反応)の共存も、4人全員が歌えるのも強い。ぶっ飛んだライブをやりつつ、ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)はスタンドの場所取り問題に改めて言及。ジーフリの原田季征(Gt)を招き入れ、“麺カタ! コッテリ! ヤーマン!!”の恋のおまじない山人バージョンから「恋のスペルマ」で締めくくった。
ROTTENGRAFFTY
ホルモンの爆発力を受け継ぎ、ROTTENGRAFFTYも気迫十分。N∀OKI(Vo)とNOBUYA(Vo)のツインボーカルとヘヴィな音圧を息もつかせぬ勢いで轟かせ、赤城ステージを激しく揺らす。楽曲のダイナミズムだけにとどまらず、ロットンらしい哀愁がふんだんに感じられた「秋桜」、エレクトロ色の強い「D.A.N.C.E.」など、これまでのラインナップとは異なるタイプのアプローチが新鮮だった。濃いメンツがひしめく中、それぞれに違う濃さを持っているのが「山人音楽祭」の面白いところ。
「同期のG-FREAK FACTORYが育てたロックフェス、こんなもんなんですか!? 俺ら京都のバンドやけどさ、京都人はもっと輝いてますよ! 殺す気でかかってこいよ!!」とNOBUYAがオーディエンスを焚きつけ、さらに限界を超えようとする5人。それにしても、激情渦巻くロットンの屈強なミクスチャーサウンドは、真紅に染まったこの赤城ステージにあまりにも似合いすぎてはいないか。
「気づけば、20年の絆。お互いに順風満帆で来たわけちゃうけど、10年以上前にフェスができたらええなと話してて。こうしててめえの地元に呼び合えてるのは、ホンマに幸せです!」と喜ぶN∀OKI。そんなジーフリへの想いを乗せ、この日にふさわしいリリックに変えてラップした「マンダーラ」も感動的だった。
TETORA
「山人音楽祭 2023」初日もいよいよ大詰め。オーディエンスがぎっしりと集まった榛名ステージのトリは、大阪発のTETORAだ。
大役を任されたことについて、上野 羽有音(Vo&Gt)は「(G-FREAK FACTORYの)茂木さんからオファーの電話をもらったとき、死ぬほど嬉しかったです。群馬のバンドでもないのに、初出演やのに、なんでTETORAがこのステージのトリなんですか?って聞きました……“他にいる?”と言われました。そのあとに“信じてるから”と言ってもらいました」と明かす。
そんな熱い気持ちを胸に、程よい緊張感を抱きながら、喜びを爆発させながら演奏する彼女たちは、初日の出演アーティストでいちばんピュアなエネルギーを放っていた。いのり(Ba)とミユキ(Dr)もたまらない表情を浮かべる中、“今ここにあるのが今私の全て”“未来は今日だ”と歌う「Loser for the future」をはじめ、「今日くらいは」「レイリー」などを通じて、ストロングポイントであるハスキーボイスや切実さが伝わる息遣い、瑞々しくダイナミックな3ピースサウンドを存分に発揮。
G-FREAK FACTORYがいなかったら完成しなかった曲だという「告白」を含め、ガールズバンドという安易な括りで片づけられない輝きをもって、TETORAはこの日しか観られない最高のライブを繰り広げたのだった。
G-FREAK FACTORY
赤城ステージ初日のトリは、もちろん主催のG-FREAK FACTORY。ロックとレゲエを融合させた唯一無比のサウンドが徐々に熱を帯び、爆発力をもってグリーンドーム内にドンと響きわたっていく。バンドに正式加入したばかりで、初の「山人音楽祭」出演となる岩本“leo”怜王(Dr)のプレイも注目ポイントのひとつだったが、豪快な叩きっぷりでしっかりと存在感を示す。
地元“グンマー帝国”の曲「REAL SIGN」が始まると、“待ってました!”といった調子でアリーナとスタンドからハンドクラップの嵐が。呪術的な魅力を湛えた茂木洋晃(Vo)の歌も中毒性抜群。「Fire」ではラップを交えたトライバルなノリのもと、どう生きるかを必死に自問するような詞が胸を打つ。もうすでに場内はジーフリならではのディープな世界観に包まれていて、“山人”の名に合ったその空気感がなんとも心地よい。
会場から「おかえり!」の声があふれる中、「ニッポンのアフリカ、群馬県へようこそ。自分たちで企画してトリを取るということにちょっと違和感を覚えているG-FREAK FACTORY、ヴィジュアル系でございます。今日もカッコよくてすいません!」と、いつものように笑いを誘う茂木。
4年ぶりのグリーンドームでの「山人音楽祭」ということで、茂木は以前はどんな感じだったのかを思い出しながら、スタッフといっしょに模索しながら、開催日までずっと走ってきたのだという。そして「仲間たちやお客さんが力を貸してくれた結果、ここまで何ひとつ問題なくできているようです」と初日の経過を喜び、トップバッターを見事に務めてくれたFOMAREにも労いの言葉を贈る。
コロナ、戦争、記録的な不景気を経てリリースされた最新シングル曲「RED EYE BLUES」は、“どうかしちまったニッポンは”と後進国に生きていることを痛感したナンバー。厳しい現実から目を背けることなく、自分たちが歌うべき憂いや怒りをストレートに打ち出す。こうした姿勢もジーフリらしくていい。
フリーキーたちの特大シンガロングを味方につけた「Too oLD To KNoW」、客席いっぱいにスマホライトが輝き出した絶景の「ダディ・ダーリン」、アンコールはラスタカラーへと染まったステージにROTTENGRAFFTYのN∀OKIを迎えて「Sunny Island Story」……G-FREAK FACTORYの音楽&メッセージに共感し、温かくやさしい世界が生まれ、初日は幸せな余韻とともに幕を閉じた。