『NEMOPHILA 4th Anniversary -Rizing NEMO-』
2023年7月17日(月・祝) 東京ガーデンシアター(有明)
結成4周年を迎えたNEMOPHILAによる、キャリア最大規模のキャパシティの会場が選ばれたワンマンホールツアー『-Rizing NEMO-』。その初日となる東京ガーデンシアター公演はNEMOPHILAの現在位置と、今後さらにスケールの大きなバンドになるという堂々たる決意が浮かび上がっていた。
まず1曲目「REVIVE」から、5人の立ち回りの華やかさが格段に上がっていた。過去最大規模の会場でのライブということもあり、おそらくより大きなアクション、優雅な身のこなしを心掛けていたのだろう。ステージのふたつ上の階に位置するバルコニー2から観ていても、Zeppの2階席で観ているのと同等、もしくはそれ以上の迫力がある。さらに彼女たちは先月まで開催されたZepp対バンツアーで、強豪対バンとともに白熱のステージを展開し、自身の個性や演奏と歌唱の強度を高めていた。バンドマンとしての演奏面はもちろん、舞台に立つ演者としてのポリシーも怠らないところはNEMOPHILAが持つ美学のひとつであり、ライブにおいて非常に妙手である。
バックドロップをメインにしたシンプルな舞台だからこそ、背景の横ラインや会場の奥行きを効果的に使ったLED照明、スモークなどの特殊効果も映える。「鬼灯」などで用いられた観客のシンガロングやコールのリズムに合わせて点滅する照明は、客席からの声もNEMOPHILAのライブにおいて重要な要素のひとつであると告げているようで、よりステージと客席の距離を密接なものにしていた。
「Back into the wild」や「STYLE」などミドルテンポのビートでグルーヴを生むセクションでは、松明の揺らぎや一人ひとりのプレイなどが心地よいリズムを作る。mayu(Vo)のハスキーで伸びやかな高音、シャウト、ラップなども凛々しく可憐で、「徒花 -ADABANA-」では粘りのある説得力に満ちた歌を響かせた。楽器隊の鳴らす強烈な爆音に身を任せながらも、自分自身の色を健やかに保ち続ける彼女の姿に、メインシンガーの貫禄が滲む。葉月(Gt)にスポットライトが当たり彼女が哀愁を帯びたギターを鳴らすと、そこにSAKI(Gt)が音を重ねてロックバラード「Game Over」へ。楽曲に描かれた景色を、演奏で観客一人ひとりの胸のなかへと焼き付けてゆく。ツインギターもロマンチシズムに富み、堂々と中盤のクライマックスを担った。
ポップで爽快感のある「Change the world」、ハラグチサン(Ba)の歌唱や疾走感のある演奏がスリリングな「Blooming」、むらたたむ(Dr)が重さと軽やかさのコントラストで魅せるプレイも光る「Rollin’ Rollin’」と畳みかけると、mayuが観客へ「もっともっと暴れていきましょう!」と呼び掛け「FIGHTER」へとなだれ込む。リズム隊のソロ回しなども痛快に響き、猛獣のような曲たちを乗りこなす5人のサウンドスケープも一層引き締まっていった。
メンバーそれぞれが思い思いの言葉で観客のテンションを上げると、ゴージャスなミラーボールやシンセが効いた「Night Flight」、縦乗りの「MONSTERS」と観客もダンスやクラップ、ジャンプなどに興じながら全身で彼女たちの歌と演奏を楽しんでゆく。「ZEN」では松明と火の玉も楽曲が元来持つユニークでひりついたムードを高め、観客の脳内の奥深くまで躍動感のある音で満たしていった。
15曲を披露すると、5人は全国12か所を回る年またぎワンマンツアー「~おしくらまんじゅう押されて笑おう~」の開催を発表。ツアーファイナルにあたる2024年2月17日の東京公演の会場はシークレットとのことで、観客たちの期待を煽った。mayuが「この高い壁を壊していくレベルで暴れましょう。もっともっとこの会場をひとつにしたいです!」と告げ、SAKIのひずみの効いた晴れやかなギターソロから「Waiting for you」で再び会場をエネルギッシュに彩ると、「DISSENSION」、「SORAI」とさらに勢力を増していく。4周年という節目を迎えているというよりは、これまでの歴史で培ってきた体力でもって自身を刷新していくような、前を見据えた空気感が非常に爽快だった。本編ラストの「Seize the Fate」までポジティブなムードは絶えることはなく、《立ち塞がるトラブル/恐れる必要はないから》や《超えていける絶対に》など歌詞に綴られた頼もしいメッセージも高揚感を持って響いていた。
暗闇のなか照明がつくと、ドラム前に集まったメンバーの姿が。「OIRAN」でアンコールをスタートさせた後は、5人が一人ずつ自身の気持ちを語った。mayuはメンバーと苦しみや悔しさなどの痛みも分け合ってきたことを明かし、「このステージに立っているのはわたしたちの可能性を信じてくれた皆さんのおかげです」と感謝を告げる。葉月は「こんなに多くの人に応援されているんだなと思うと、これから先も頑張れます」、ハラグチサンは「皆さんの笑顔を見ていると胸が飛び出しそう」と、話している最中に感情が溢れ涙をこぼした。
そんな3人の様子を受けてむらたは「真剣に音楽をやっているから涙につながるのかな」と優しく声を掛け、「この5人でしか見られない、見せられない景色、この5人で協力しないとできないものがあると思うので、これからもわたしたちを信じてついてきてください」と胸を張る。SAKIも「どれだけつらくても明日は来ますよね。それを乗り越えるとこんな素敵な景色がみんなで作れるんだなと実感して、感謝の気持ちでいっぱいです。ここから先も皆さんと素敵な人生を生きていきましょう」と笑顔で呼び掛け、客席からは大きな拍手が湧いた。
「まだまだわたしたちは何にでもなれると思っています。いろんな挑戦をして、いっぱいくじけて、ずっとずっと進み続けるので」とmayuが語ると、この日の締めくくりは「Life」。拳を高く掲げる観客のシンガロングとともに響く同曲は、会場一帯を「共に前へと進んでいこう」というまっすぐな愛でたくましく包み込んだ。
様々な緊張を抱えながらも、東京公演を華々しく締めくくった5人。7月30日に控える神戸国際会館こくさいホール公演では、東京公演とセットリストも衣装も変えて挑むという。ガーデンシアターで得た思いを糧に、またニューモードのNEMOPHILAを見せてくれるはずだ。現に2023年に入ってからの彼女たちは、バンドとしての結束を強めるだけでなく、より精力的に自身の培ってきた実力を経験で研ぎ澄ましている。まだまだ5人はその勢いを止めることはないだろう。目覚ましく開花させていくであろう可能性に、これからも期待したい。
SET LIST
01.REVIVE
02.雷霆 -RAITEI-
03.RISE
04.鬼灯
05.Back into the wild
06.STYLE
07.徒花 -ADABANA-
08.Game Over
09.Change the world
10.Blooming
11.Rollin' Rollin'
12.FIGHTER
13.Night Flight
14.MONSTERS
15.ZEN
16.Waiting for you
17.DISSENSION
18.SORAI
19.Seize the Fate
ENCORE
01.OIRAN
02.Life