VΔLZ 1st LIVE『一唱入魂』
2023年6月9日(金) KT Zepp Yokohama
次から次へと異なるカラーで彩り続ける、様々な趣向に富んだ時間だった。にじさんじ所属の弦月藤士郎、長尾景、甲斐田晴による、2020年デビューの同期3人組ユニット・VΔLZ初の単独ライブ『一唱入魂』。開演前はステージ上の巨大モニターに、リアルタイム配信されていたイベント直前突撃レポートが映し出され、開演直前にはVΔLZの3人による影アナが流れるなど、開場時間中も観客を楽しませる。普段彼らがインターネットを通じて届けていることを、KT Zepp Yokohamaにそのまま持ってきたような演出。会場の高揚は高まると同時に、どこかリラックスしていくようにも感じられた。
オープニングムービーを経てステージに現れた3人は、1曲目にモーニング娘。「恋愛レボリューション21」のカバーを披露する。間奏では3人が「もっと声出して!もっと盛り上がって!」や、「1階も2階もしっかり見えてるからな!」と積極的に観客を煽り、初の単独公演の幕が切って落とされた。
満員の観客に感動を示した3人が、興奮した様子で和気あいあいとトークを展開するとソロパートへ。長尾はオリジナル曲の「Universe」でたくましい歌声を伸びやかかつまっすぐに届け、弦月はVaundy「怪獣の花唄」のカバーで歌詞に合わせてジェスチャーをしたり、ステージを左右に動いて観客からシンガロングを求めるなど、軽やかにパフォーマンスする。甲斐田は彼自身がとても好きな曲というEGOISTのバラード「All Alone With You」のカバーで、バンドの生演奏と一体となり情感たっぷりに歌い上げ、三者三様のボーカルと選曲で魅了した。
たった4曲の時点で、3人全員とそれぞれのソロ、オリジナル曲やカバー曲と、1曲ずつまったく違うステージが展開されている。3人全員が個々で活動を行ってきたこと、音楽以外の活動も行っていること、オリジナルもカバーもフラットに発信してきたこと、3人が同日デビューの同期だからこそのチームワークができていることなど、序盤で3人の特色を存分に生かしたステージであることを痛感する。
3人は第1の重大発表として、VΔLZとしての公式YouTubeチャンネルの開設と、この直後にパフォーマンスする映像が同チャンネルにて公開される旨を告知する。そして彼らが歌唱したのはVΔLZのオリジナル曲「浮世の演舞」。バンドによる生演奏でよりパワフルかつ優雅に変貌を遂げたアレンジに乗せて、3人で熱い歌声を轟かせた。
バンドメンバー紹介を挟み、長尾と甲斐田によるAyase「シネマ」のカバーを皮切りにソロと2人編成パフォーマンスで構成されたセクションへ突入。単身ステージに残った長尾が「みんなが待ってたアレやります!」と告げると、ダンサーが2名登場しNeru「potatoになっていく」のカバーとオリジナル曲「クレマチスの祈り」を披露する。前者ではステッキを手に持ち、後者ではミュージカル風の振り付けで魅せるなどショーの要素を盛り込んだステージを展開。その直後に登場した弦月も「まじでやばくなかった?世界観」と圧倒されるほど、完成度の高いパフォーマンスを見せた。
続いて長尾と弦月が椅子に腰掛け、アイコンタクトを取りながらサスケ「青いベンチ」のカバーでハーモニーを織り成すと、単身ステージに残った弦月が「みんな(それぞれ)が大好きな人を思い浮かべながら聴いてください」とAimerの「カタオモイ」カバー、オリジナル曲「wanderland」を届ける。優しさと激しさを併せ持つボーカルと、愛嬌のある立ち回りで観客に歩み寄った。そして歌い終えた弦月のもとに甲斐田が合流すると、声がよく似ていると言われる両名でナナヲアカリ「チューリングラブ feat.Sou」のカバーを披露する。キュートな楽曲をフレッシュに歌い上げると、弦月が甲斐田に「あとは盛り上げ任せたよー」と告げ、ステージを去った。
ひとりステージに残った甲斐田は、マイクを手に持ち観客にコール&レスポンスのレクチャーをすると、喉を枯らしながら煽り、自身のオリジナル曲「パラレルノー細胞」と「透明な心臓が泣いていた」を畳み掛ける。雄々しいボーカルとロックサウンドに触発されるようにフロアからも熱いコールが湧き、カラフルなソロ&2人編成セクションを堂々と締めくくった。
するとステージに魔物たちが乱入。3人は鮮やかな立ち振る舞いで立ち向かっていく。その迫真の殺陣に観客も声援を上げた。現実世界だけでは成し得ないパフォーマンスを見せられるのもバーチャルアーティストの特権であり、様々な活動をしてきた3人だからこそ、組み合わせを変えることで新しい世界を見せることもできる。VΔLZだからこそ実現できるエンターテインメントがあることを、象徴する一幕だった。
VΔLZとして3年ぶりの新曲「No reason.」、じん「サマータイムレコード」のカバーでさらに3人の結束の強さを発揮すると、弦月と甲斐田が作詞作曲を手掛けたというVΔLZの2曲目の新曲「SHOOTING DELTA」を初披露。3人の友情とユニットの夢が綴られた楽曲を、力強く爽やかに歌い上げた。「今日は来てくれてありがとう!まだまだ突き進んでいくので応援してください!これからもVΔLZをよろしく!」と3人であらためて呼び掛けると、観客もそれに大きな歓声と拍手で応えた。
アンコールでは「No reason.」と「SHOOTING DELTA」を6月10日にデジタルリリースする旨を発表し、「(オリジナル曲の発表が)3年ぶりにして、急に2曲!」と笑わせると、3人はこの日の感想を語り始めた。初ライブを楽しみに会場に赴いたという弦月は、直前に緊張し始めたが、観客がたくさん声を上げてくれたことでそれもすべて吹っ飛んだと話し、「みんな今日たくさんありがとうって言ってくれたけど、僕もここに立てたことがうれしかったし楽しかったし、貴重な経験をさせてもらいました。僕からもめいっぱいのありがとう!」と感謝を告げる。長尾は同じ日にデビューをした3人でこの舞台に立てたことへの喜びと、「これが始まりです。これからもっとでかくなるぞ!」と野望を語り、甲斐田は「このチャンスをくれたのはみんなだと思っている」とこれまでの活動を支えたファンに感謝を告げ、「ここからまだまだ積み重ねていくぞという思いを『SHOOTING DELTA』にも込めました。まだまだ頑張っていくのでこれからもよろしくお願いします!」と呼び掛けた。
そして3人がこの日の最後に選んだのは、にじさんじの「虹色のPuddle」。強い意志が込められた歌声と、最後のサビとともに盛大に舞い上がった銀テープで、初の単独ライブの幕引きと3人のこれからの未来を晴れやかに飾った。ユニットとしての活動がより本格化することを示唆した初ワンマン。様々な手法で観客を楽しませてきた彼らが、今後どんなエンターテインメントを見せていくのか、期待が高まる夜だった。
SET LIST
01. 恋愛レボリューション21 (VΔLZ)
02. Universe (長尾景)
03. 怪獣の花唄 (弦月藤士郎)
04. All Alone With You (甲斐田晴)
05. 浮世の演舞 (VΔLZ)
06. シネマ (長尾・甲斐田)
07. potatoになっていく (長尾景)
08. クレマチスの祈り (長尾景)
09. 青いベンチ (弦月・長尾)
10. カタオモイ (弦月藤士郎)
11. wanderland (弦月藤士郎)
12. チューリングラブ feat.Sou (弦月・甲斐田)
13. パラレルノー細胞 (甲斐田晴)
14. 透明な心臓が泣いていた (甲斐田晴)
15. No reason. (VΔLZ)
16. サマータイムレコード (VΔLZ)
17. SHOOTING DELTA (VΔLZ)
ENCORE
01. 虹色のPuddle (VΔLZ)