剣持刀也リアルソロイベント【虚空大戦】で見せた、新しいエンターテインメントの未来と可能性【にじさんじ4daysライブレポ】

ライブレポート | 2023.07.04 17:01

剣持刀也リアルソロイベント 【虚空大戦】
2023年6月11日(日) KT Zepp Yokohama

6月8日から4夜連続でKT Zepp Yokohamaにて開催された、にじさんじ所属バーチャルライバーによるリアルイベント。初日は緑仙、2日目はVΔLZ、3日目は星川サラと、3組それぞれが個性や特色を生かした音楽ライブを繰り広げるものの、その最終日を飾った剣持刀也は3組とはだいぶ異なる趣向で観客を楽しませた。

2020年12月に開催された自身初のリアルソロイベント「虚空集会」以来、約2年半ぶりのリアルソロイベント第2弾「虚空大戦」。剣持が掲げる架空の宗教「虚空教」をモチーフにした、ライブあり、トークあり、クイズあり、芝居ありのエンターテインメント性溢れるイベントである。
“人々はみな虚空(ゼロ)から生まれてくるのだから物や財を失ってもゼロに近づくだけでマイナスではない。万物の祖たる虚空を崇拝している”という信念を持つ虚空教。会場内はスタッフも揃いの白いローブを身に纏い、フロアには虚空教のモチーフである“T字架(※剣持のイニシャルであるTを模したペンライト)”を所持した観客ならぬ“教徒”がひしめく。ステージだけでなく会場が一丸となり、虚空教のリアリティを高めていた。
剣持本人による影アナで「虚空教最高~!」のコール&レスポンスを行い士気を高めると、多数の虚空教新聞が舞うオープニングムービーの後に、剣持が単身ステージに現れる。彼がほか3組とイベントの毛色が違いすぎることに触れるとフロアからは笑いが起き、満員の会場を眺めながら「いや~宗教やってて良かったなと思います」など冒頭から軽妙なトークで湧かせた。

剣持刀也

最初のコーナーはおたより企画の「リアル剣持が斬る!」。観客のお悩みに剣持が答えていくのだが、出てくる質問は大喜利のお題のようなものもあれば、真剣かつユーモラスなものまで幅広い。それをあの手この手でテンポよくそれらしい回答をしていく様子には、教祖の威厳を感じさせる。すると「虚空教って一体なんですか?」の質問が出た瞬間に、会場が暗転。歌唱パートに入り、心地よいリズムと憂いのあるメロディが小気味よい、ぬゆり「ロウワー」のカバーをエレガントに届けた。

この後も生配信的なトークと演劇的な演出を織り交ぜたステージを展開していく。ミュージカルのようでミュージカルではない、バラエティのようでバラエティとも言い切れない、境目があやふやなエンターテインメント。それはなんだかリアルとバーチャルのいいとこ取りをするバーチャルライバーのスタンスとも重なって見えた。

腕を広げてTの字を作り、架空のメロディを歌いながらゆらゆら歩き回る“祈りの儀式”の最中、急に炎が燃え始めると場面は一転、裁判所に。証言台に放り出された剣持を、黒尽くめの衣装に身を包んだ3人の裁判官が取り囲む。この日のゲストである叶、椎名唯華、伏見ガクの登場だ。彼らの発言に事細かにツッコミを入れるものの、あれよあれよと死刑宣告をされてしまった剣持だったが、間一髪で剣持のデフォルメ着ぐるみ・モチダヨーにより救出された。安堵するのも束の間、突然サイレンが鳴り響き警告が入る。叶、椎名、伏見がそれぞれ宗教を設立するという名目で、対戦を申し込んでいく“虚空大戦”の開幕である。
最初に現れたのは叶。「究極の調和 エクストリームだるま落とし」と題し、クイズとだるま落としで競ってゆく。だるま落とし未経験の剣持に対し、叶は経験があるとのことで、どうやら挑戦者に有利な勝負を持ちかけられるようだ。だが不利な状況を剣持は頭脳をフルに使って回避し、叶に勝利。叶は虚空教幹部に任命され、和解と友好の証に両名はkemu「イカサマライフゲイム」のカバーを披露する。スリリングなツインボーカル、威勢のいいコールなど、付き合いの長さから生まれるチームワークで観客を魅了した。

2番手は椎名唯華。彼女との対戦は「どっちを許す!? 許されシチュエーションバトル」という、失敗したときの許され力、もとい“いいわけ力”を競うエチュードである。人の情に訴えかける椎名と、狡猾に状況を潜り抜けていく剣持の、接戦の末に剣持が勝利。叶に続き椎名も虚空教幹部に任命され、和解と友好の証にふたりでKanaria「QUEEN」のカバーを披露する。女性とともに歌うがゆえか、普段よりハイトーンな剣持のボーカルも印象に残った。

ラスボスは剣持と同期で、†咎人†として剣持とコンビを組んでいる伏見ガク。「知性と運の激突!!クイズofギャンブル」と題し†咎人†関連のクイズにコインを賭けて競った結果、剣持がクイズ力と鋭い判断によるベットで圧勝。前2名に続き伏見も虚空教幹部に任命され、和解と友好の証に剣持とともに1曲披露する。歌唱曲に選ばれたみきとP「ロキ」はツインボーカル曲であり、歌詞にも“教祖”や“信者”などが出てくるなど、イベントや両者の関係性とも親和性が高い。お誂え向きのカバーで3つの大戦を痛快に締めくくった。

再びステージに4人が集まり、このままハッピーエンドを迎えるかと思いきや、様々な伏線が回収され剣持が黒幕との戦いの末に命を落とすという予想だにしない展開に。そこで伏見が「虚空教徒のみんなで剣持刀也に声援を送ろう!」と呼び掛けると、観客が一斉に思い思いの言葉を叫び出した。すると教徒の祈りと“導きの石”の力によって、新たな衣装に身を包んだ剣持が奇跡の大復活を遂げる。剣持が黒幕を打ち負かし、虚空教に迎え入れると、その英雄ぶりに会場からは大きな歓声が湧いた。

「万事解決ということで、記念に最後に1曲お届けしたいと思います!」と剣持が告げると、4人でOxT「HOLLOW HUNGER」のカバーを披露する。振り付けを交えながら4人でハーモニーを作るなどしてクライマックスを盛大に彩った。

最後にゲスト3人が一人ひとり剣持に声を掛けステージから去り、ひとりステージに残った剣持は「素晴らしい集会になったんじゃないかと思います」と感謝を語り、この日を振り返る。そして「ただね、やっぱりソロイベントでございますので。最後はひとりで1曲歌わせていただきたいと思います」と続けると、自身のイメージソング「Sharpness...」を堂々と歌唱。なかでもエモーショナルなラップ、エアギターへの駆け上がりと、その勢いのまま突入したラスサビの力強さは、大輪の花火のように華やかだった。

終演後はオープニングムービーに登場した「虚空教新聞」の号外が配られ、会場を出る瞬間まで虚空教と虚空大戦の世界観を体感することができた。この4日間で、バーチャルを飛び出したにじさんじの面々が、リアルの場で様々な手法をフルに使うと、バーチャルとリアルの秀でたところを掛け合わせ、新しいエンターテインメントを作り出すことができることを証明したように思う。なかでも「虚空教」という架空の宗教を軸に様々な表現を展開した「虚空大戦」は、その異端性を示すうえでは象徴的一夜だったのではないだろうか。とはいえ4組ともそれぞれの個性を十二分に発揮したステージだったことに他ならない。エンターテインメントの未来と可能性を感じる4日間だった。

SET LIST

01. リアル剣持が斬る!
02. 歌唱「ロウワー」
03. 虚空教儀式
04. 宗教裁判
05. 宗教法人アブソリュートソサエティとの衝突
06. 歌唱「イカサマライフゲイム」 (ゲスト:叶)
07. えらい教との衝突
08. 歌唱「QUEEN」 (ゲスト:椎名唯華)
09. ピース教との衝突
10. 歌唱「ロキ」 (ゲスト:伏見ガク)
11. モチダヨーの復活
12. 剣持の復活
13. 歌唱「HOLLOW HUNGER」 (ゲスト:椎名唯華/伏見ガク)
14. 歌唱「Sharpness...」

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