Chilli Beans.のバトンを受け取り、登場したのはリーガルリリー。たかはしほのか(Vo/Gt)、と海(Ba)が、ゆきやま(Dr)の前に集まって息を合わせる。そして、バックライトに照らされながら「若者たち」をプレイし、重厚感あるアンサンブルで静寂を切り裂く。どっしりとしたサウンドと対比するように、軽やかで自由に、時にあどけなさを携えたたかはしの歌声が、その上にそっと乗る。「GOLD TRAIN」では、柔さと疾走感がたっぷり含まれたメロディと伸びやかなボーカルに呼応するように、オーディエンスの手が自然と挙がる。そこからエッジィなベースとギターが鮮烈な「1997」へと畳みかけていく。この曲のように、歪みとピュアさのコントラストが効いた、強いのに優しい、というこの絶妙なバランスは、リーガルリリーだからこそ保てる感覚のように思う。
漫画原作のドラマParavi「隣の男はよく食べる」の主題歌として書き下ろした「ハイキ」もまた、恋愛における不安定になりがちな情緒ややきもきした想いを歌詞として描いた曲ではあるのだが、軽やかなメロディに対して<廃棄処分寸前だった君が好きなやつを/廃棄処分寸前だった私が拾った>というヒリヒリした状況として描くところがまた凄い。恋のキラキラした面だけではなく、人間同士の関わり合いの中で生まれるリアルな感触をなぞるような歌詞だからこそグッと胸を打ってくる。
そうした恋愛観ももちろんだが、リーガルリリーの真骨頂とも言える死生観に対する躊躇なき、それでいて途方もなく美しい描写力は、続く「トランジスタラジオ」、「ぶらんこ」、「蛍狩り」、さらに「ノーワー」までの流れの中で遺憾なく発揮される。「蛍狩り」では、柔くて幼さを残したたかはしの声が、蛍の一生をテーマにした物語をつらりつらりと紡いでいったのだが、ストーリーが進むに連れてバックステージに点々と配置された電球がそっと点滅し出し、<輝きを放て。>というフレーズに合わせて最後の力を振り絞るかのように煌々と光り出した。その景色も相まって、まるで映画を観ているかのような気持ちになった。
しかし、この物語は、決してファンタジーや映画の中の話ではなく、自分たちの生活の話でもあるんだということにハッとする。「そんなことが起こる訳がないよ」と笑って話していた不安要素は、私たちの足元、一寸先に潜んでいる。それは命の終わりの話だけでなく、「ノーワー」で歌われるように、人間同士の対立が生み出す悲劇もまさにそうだ。受け入れようとするが、どうしても受け止められない。それは心の広狭や覚悟の度合いではなく、机上で理解していた物事を、現実として目の当たりにした時の人間的な本能的な反応だと思う。そしてそれらの感情を、リーガルリリーは歌と音にし、自分たちの音楽として残した。それをしないという選択肢ももちろんあったのだろうけれど、彼女たちはそれをした。その誠実さ(彼女たち自身はそうもっと自然的に生み出したのかもしれないが)こそが、リーガルリリーをロックバンドたらしめる大きな要素なのではないだろうか。
そうして彼女らの精神性を全身に浴びたタームを終えた後の後半は、エネルギッシュな「たたかわないらいおん」、「地球でつかまえて」と続け、ラストは初期からのキラーチューン「リッケンバッカー」を鳴らして堂々と締め括った。
その後も興奮の熱が引かず、呼び止まないアンコールに応えて再びステージに戻った3人は、「本当に良い日でした。一緒に作ってくれて本当にありがとうございます!手拍子って打楽器の中で一番好きなんですよ。みんなの手拍子が重なり合って、わーって鳴る時が大好きで……本当にありがとうございました!」と感謝を告げてから、疾走感溢れる「はしるこども」をプレイ!大きな歓声と拍手に見送られながら、清々しくステージを後にした。
SET LIST
リーガルリリー
01. 若者たち
02. GOLD TRAIN
03. 1997
04. ハイキ
05. トランジスタラジオ
06. ぶらんこ
07. 蛍狩り
08. ノーワー
09. たたかわないらいおん
10. リッケンバッカー
ENCORE
01. はしるこども
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