仙台貨物 トゥアー2022 日本でいちばんアツイ夏
2022年9月15日(木)東京・中野サンプラザホール
今年も夏到来とともに、新作「日本でいちばんアツイ夏」を掲げ、音楽でみんなを笑顔にして、嫌なことを全部吸い取ってくれる癒しの宅急便・仙台貨物が戻ってきた。今年は会社のユニフォームである赤つなぎを猛暑に対応できるように(?)赤いアロハシャツにチェンジして、8月から<仙台貨物トゥアー2022 日本でいちばんアツイ夏>を開催してきた彼ら。トゥアー終了後は、今年3年ぶりに現地開催となったおなじみの夏フェス<氣志團万博2022>にも出演。こうして、全国各地のステージに日本でいちばんアツイ夏をお届け
して回った彼らは、今年も無事その役目を終えて、活動を終了。
ここでは、そのなかから9月15日、彼らがトゥアーファイナルを行なった東京・中野サンプラザホールでの公演の模様をお届けする。
会場のなかに入ると、J-POPのサマーチューンがBGMで流れるなか、ステージには大きなヤシの木とビーチパラソルが3本。その周りにはビーチチェアや浮き輪、ビーチボールなどが転がり、9月でもまだまだ海開き真っ最中のビーチを思わせるセットを観て、気分はいっきに常夏へと逆戻り。
BGMがセミの鳴き声になり、「仙台貨物とあつ~い夏にすましょうね」というイガグリ千葉(Vo)の声を合図に、ライヴは最新曲「日本でいちばんアツイ夏」で幕開け。ギガフレア(Dr)の太陽を思わせる巨大な被り物がセットにもぴったりマッチしていて、曲ととともに夏ムードを盛り上げる。そんなギガフレアがドラムで“ダンダンダダダン”とビートを刻むと、さっそくステージサイドから赤いブーメランパンツ型の水着をつけた4人のマッチョなムキムキダンサーズが登場。“SE・N・ DA ・I・ KA・ MO ・TSU・EVERYBODY SAY!!”のコールも、観客たちは慣れた様子で声の代わりに赤いペンライトを振って楽しんでいる。その観客たちを、次の「トリプル☆ニート」ではフルフェイス(Gt)の明るくご機嫌なロックンロールリフが、楽しく踊らせていった。
「今日はぁ、仙台貨物と日本で一番アツイライブぬすでいごうね~」と観客に先生のような口調で語りかける千葉は、常に顔面全体にキテレツなメイクを施している。メンバーたちはギャグみたいな名前、演奏する曲目も明るくキャッチーなものがメインで、笑いのスパイスがどこまでも効いた歌詞を宮城弁で歌う彼ら。一見すると単なるキワモノとかコミカルに見える彼らだが、王珍々(Ba)がファンキーなフレーズを叩き出して始まった「開運ざんまい」では、千葉がコロナでこれまで辛い思いをしたみんなに向けて“笑う門には福来る”といまだからこそ刺さるメッセージをお届けしていくところなどは、単なるコミックバンドとは一線を画す部分。
そんな一面を持ちつつも、みんながペンラの色を緑にして楽しむパンキッシュな「오이 오이 오이 (オイ オイ オイ)」では、千葉が両手に持っていたペンラの1本の電池がきれて「つかなくなくなった~」といって、ステージ中央でいきなりズボンを脱ぐと、パンツの股間から緑色のきゅうりがぶらり!(笑)。股間にきゅうりをぶら下げ、激しく折りたたみを繰り返しながらサティ(Gt)に近づき、きゅうりを揺らしてぶつけようとする千葉を見て、メンバーは必死に笑いを堪える(微笑)。曲が終わると、すぐに千葉はフルフェイスに「バカ野郎!」と怒られていたが、こんなはちゃめちゃなお笑い要素たっぷりのパフォーマンスを、体を張ってアクトするところも彼らの凄いところ。
KURIHARA(Mnip)が尺八を吹く和風キラーチューン「絶交門」では浮世絵の映像をバックにみんなでタオルを回し、“絶交だもん!絶交だ!!GO ON!!!”のサビがやってくると、観客たちは恥ずかしげもなく、カンチョーポーズを天井に突き上げる。こうして大人になった自分たちを解放しまくって、一線を踏み超えて日常生活ではありえないこんなポーズを楽しくやらせてしまう。これこそ、貨物にしかできないライヴの必殺技であり、彼らが期間限定バンドでもみんなに必要とされている大きな理由なのだ。
千葉が「今日はみんなを元気ぬさせであげるがらね」といってダンサーズを呼び込み、始まったのはサティがワウを効かせたカッティングを鳴らすなか、王珍々とギガフレアがビートをグルーヴィーにうねらせていく「MUKI MUKIさせてよ」。この曲は、Tシャツを脱ぎ、乳首を赤いテープで隠したムキムキダンサーズが作るフォーメーションに楽器を置いたサティとフルフェイスと千葉も加わり、舞台中央でV字を作ってフリを踊るという仙台貨物初の“ダンスパート”で客席を大いに沸かせていく。フリをすでに覚え、一緒に踊るファンの前で、最後はステージ縦一列に並んで、手観音のフリをバシッと決めてみせた。続いてエレクトロなサウンドにのせて「KO・KE・SHI」が始まると、こけしの頭にけん玉の玉の部分を合体させた遊戯を持ち出した千葉が、曲中これの玉の部分を引きずってお散歩させると客席は大ウケ。そうして最後、けん玉の要領でこけしの頭に玉を乗せてみせると、観客からは大きな拍手がおくられた。
場内がいい感じに温まってきたにも関わらず、ライヴはこのあと想定外ハプニングが発生。王珍々が千葉に腹痛を訴えて、ステージからはけ、トイレへ。その間、千葉はサティとフルフェイスを交えて、王珍々がコロナに感染してバンドを離脱したときの話題で間をつないでいく。ここでは、王珍々がいなかった公演で、フルフェイスがベースを担当したり、サティが中国語の発音を勉強して王珍々のパートを歌ったり、王珍々の代わりとなる人形も作成。テレビ収録のとき、その人形を持参したものの「それはテレビでは映せません」と断られたというエピソードが次々と明かされていったのだが、それでも王珍々が戻ってこない。しびれをきらした千葉が「次は、みんなを笑わせようとしても分かってもらえなかったときの千葉さんの悲しみを歌った曲です」という曲紹介をして「誰も笑わない」が始まると、ベースを持った王珍々が足早に出てきてステージに登壇。頭頂部が異様に長く、先がとがったハゲかつらをつけた姿に会場からは拍手の歓声。このサプライズに、サティは舞台上で抱腹絶倒。フルフェイスがその頭頂に王珍々のチャイナハットを被せると、帽子がくるくると回り、それを見てサティもフルフェイスも大爆笑。
演奏が終わると「これ見て笑わないやつはいねぇだろ」とフルフェイスが一言。このサプライズの仕込みを千葉と王珍々はツアーが始まる前から進めていたらしく、王珍々はやる気満々で、いつお披露目するか…その機会をずっと狙っていたのだとか。今回「誰も笑わない」でサプライズを仕掛け、結果は大成功。大喜びの千葉がギガフレアに感想を求めると、普段は寡黙なギガフレアが笑いを必死でこらえながらマイクを通して「前の七福神のときはヒゲがあったけど、ヒゲがないと(見ている)こっちが恥ずかしくなる」とコメントして、ファンを喜ばせた。この後もサティの笑いが止まらず「これだと演奏できない」とメンバーに訴えるも、フルフェイスが「このまま何曲かやりたい!」といってその意見はあえなく却下。千葉が「サティは後ろ(の王珍々)を振り向かないでやって」と提案し、曲は王珍々を大フィーチャーした「珍龍~cheng long~」へ。続けて、今度は麦わら帽子とおにぎりTシャツに虫かごを斜めがけしたKURIHARAが千葉の横に構え、全員が破壊神となり、貨物ナンバーのなかでもデストロイなヘヴィチューン「クリリン・マンソン ツヴァイ」をパフォーマンス。ここではコミカルなルックスからかけ離れたテクニカルなプレイを繰り出し、演奏力でも客席を圧倒していった。
ライヴはいよいよ佳境へ。「みんな、タオル出すて! みんなの腐況を吹っ飛ばしていぐよ」と千葉がいって、まずは貨物のライヴアンセム「腐況の風」を勢いよく投下。ダンサーズも出てきて、ここでは全員で一斉にタオルを投げて、腐況とさよなら。ギガフレアが放つパワードラムで会場のテンションをさらに爆上げへともっていったところで、千葉がフルフェイスに向かって「王珍々と楽器交換して」と指示。王珍々とフルフェイスがポジションをチェンジすると、貨物のライヴには欠かせない「うまなみで。」がスタート。「腐況~」の楽しさが、この曲ではさらに倍増。サティ、千葉、王珍々がステージで楽しそうに追いかけっこをしていると、間奏部分で真っ赤な恐竜が2体が出現。サティを追いかけ回して挟み撃ちした後、恐竜はステージから即撤退。次は恐竜と入れ替わりにダンサーズが飛び出してきて、千葉と彼らが仲良く手をつなぎ、観客は隣の席の人とエアで手をつなぎ、メロコアな「送る言葉2」を楽しんだ。そこに明るく軽快なパワーポップ「チバイズム」を投入して、みんなの悲しみをどんどん吸い取ていって、ダンサーズがステージで三点倒立をきめたところで本編は終了した。
アンコールは今回のトゥアーを振り返るトークタイムで幕を開けた。フルフェイスがまず「今回は千葉さんがずっとすごかった」と語り、名古屋公演では口から産もうとしていた卵が産む前に床に落下。それでも、すかさず落ちた卵を拾って口に入れて食べた千葉を、サティが「千葉さんのプロ根性をみた」と絶讃。福岡ではそんなサティが「うまなみに。」で、ステージにロデオボーイが出てくると、そこに立ち乗りしたこと。さらに、ギガフレアは王珍々人形について「離脱したときに結構活躍してくれたから、愛着がある」など、それぞれにトゥアーの思い出を伝えていった。そして、ペンラをオレンジ色にセットしたところからライヴは再開。千葉がいきなりフルフェイスのリコーダーを投げ捨て、代わりにオカリナを手渡したことで、冒頭がオカリナヴァージョンになった「男たちの晩夏」。次にペンラを黄色にして「珍々的愛情故事」が始まると、曲中、王珍々が千葉から熱々のカップラーメンを食べさせられながらプレイするシーンまで飛び出し、アンコールまで仕掛け満載で観客たちを笑顔にしていった貨物。最後は、千葉が「毎日みんなが笑顔でいられて、世界が平和でいられますように。そして、来年もみんなと会えますように」とお祈りをして「神様もう少しだけ」をダンサーズと組体操でポーズを作りながら歌って、ライヴは客席に笑顔が広がるなか、楽しいムードのままフィニッシュ。
こうして、日本中を“世界でいちばんアツイ夏”にして2022年夏の活動を終えた仙台貨物。世界、世の中の社会情勢がどんなに変わろうが、それでも変わらず、このように日常からすべてを解放して、嫌なことを全部吸い取って、どこまでも笑わせて元気にしてくれる存在の彼らは、貴重な存在といえる。来年の夏、次はどんな姿になって仙台貨物が戻ってくるのか。期待して待っていたいと思う。
SET LIST
01. 日本でいちばんアツイ夏
02. サタデーナイトゲイバー
03. トリプル☆ニート
04. 開運ざんまい
05. 오이 오이 오이
06. 絶交門
07. MUKI MUKIさせてよ
08. KO・KE・SHI
09. 誰も笑わない
10. 珍龍~cheng long~
11. クリリン・マンソン ツヴァイ
12. 腐況の風
13. うまなみで。
14. 送る言葉2
15. チバイズム
ENCORE
01. 男たちの晩夏
02. 珍々的愛情故事
03.神様もう少しだけ