ソウル!パワー!田島貴男の熱いシャウト。そして彼とTENDREとのあたたかな交流が心に残る一夜だった。

ライブレポート | 2022.01.28 18:00

Original Love presents Love Jam Vol.6
2022年1月22日(土) Zepp DiverCity(TOKYO)

「みなさん、こんにちは。よくいらっしゃいました!」
ライブはまず田島がひとりで現れ、オーディエンスにあいさつするところから始まった。オリジナル・ラブ主催の「Love Jam」はこれが6回目、2年ぶりの開催となる。巷ではオミクロン株による感染が広がっていたが、今夜もその対策について田島およびスタッフ側がかなり気を配っていることが感じ取れた。
「こういう時だからこそ、一生懸命われわれ、今日は演奏をやらせていただきます。そして今日のスペシャルゲスト、TENDREのほうのライブもぜひ楽しんでいただきたいと思います」

紹介されたゲストバンドであるTENDREが田島と入れ替わって登場する。冒頭からメロウなグルーヴ、そしてTENDREこと河原太朗の歌声の柔らかく、優しいこと。彼はかねてからオリジナル・ラブへの敬意を示してきた人で、この1曲目「LIFE」の2コーラス目では歌詞を変えてその意志を表した。♪田島さんと2マンなんて 考えもしなかった……「メッチャクチャうれしいです!」。人生の巡り合いについて唄う曲だけに、その思いがあまりにもハマっている。
TENDREの音楽性はソウルやジャズをベースにしながら現代的な要素も取り入れ、そこで日本語による新たなポップミュージックを開拓するもので、2020年代のシティ・ポップの流れとしても捉えることができる。だから河原がオリジナル・ラブに惹かれることは誰もが納得いくはずだ。このライブの数日前には彼が出演するJ-WAVEの番組に田島が招かれ、そこではふたりが街でバッタリ会った時の写真を田島がInstagramにアップした話が語られたりしたが、今夜のステージでも河原がそのことに触れた。そして田島への謝辞を述べた。

TENDRE

「こうやっていろんな縁をつなげてくれて、ほんとに田島さん、あそこ(舞台袖)にいるんですけど、ありがとうございます!」
「Night & Day」ではAAAMYYY(Tempalay)のキーボードやコーラスも相まって、ストレンジな空間を創出したTENDRE。そしてその後、ライブ前から予告されていたセッションが実現する。
「今日はですね、素敵なゲストがこの会場にお越ししています。ご紹介しましょう。オリジナル・ラブ、田島貴男さんです!」エレキギターを持った田島が現れ、河原の「あの曲やりましょうか」という声かけに「あの曲ね」と返すと、「IT'S A WONDERFUL WORLD」が演奏される。昨年リリースされた公式カバーアルバム『What a Wonderful World with Original Love?』の中でTENDREが唄っていた曲だ。両者によるデュエットの声が豊かに広がり、会場はウォームな雰囲気でいっぱいになった。それも田島が徐々に盛り上げていくことでテンションがどんどん上がっていくのは、まさに今のオリジナル・ラブの流儀だった。アウトロが演奏される中、グータッチして去ろうとする田島。そこで河原が「ムーンウォークできます?」と振ると、田島はおどけるように後退するステップで応えた。曲終わりで河原は「すごい……やっぱり田島さんはすごい」と感嘆した。
そしてセットリストの後半の「hanashi」の曲中で、河原はやはり優しい歌声を響かせながら、今度は田島に問いかけた。♪ラジオでも話したけど 田島さんといつか曲作ろうか……「いいですか?(舞台袖を見て確認) OK出ました!」。恋する相手とつながりたい、話したいという思いを込めたこの曲で、河原は見事に田島の心とつながったのだ。こうしてイベントはスタートから双方のリスペクトが強く感じられる時間となった。

およそ15分のブレイクは場内の換気タイムともなった。そしていよいよオリジナル・ラブの出番である。クラップ音が鳴り響く中、メンバーが登場。ヒックスヴィルの木暮晋也(ギター)と真城めぐみ(コーラス)のふたりに加え、佐野康夫(ドラムス)、小松秀行(ベース)、河合代介(オルガン)の顔触れは昨年からのものだ。
「フランケンシュタイン」で始まったライブは、田島が早々に全開状態となり、会場をまくしたてていく。イス席のお客さんたちは立ち上がり、ゆるやかに身体を揺らす。その温度は曲が進むごとに上昇し、「I WISH」では田島が手拍子を求めた。「クラップユアハンズ! あけましておめでとうございます。よくいらっしゃいました!」。フロアからは歓喜の拍手が起こる。

「ありがとうございます! 暑いなあ……どんな時でも暑いんだね」と言いながら汗を拭く田島、それを見て真城が大笑いする。そりゃ、あれだけの熱演なら汗も出るだろう。
次からは新しい曲が続いた。「まあ作りかけというかね、まだ完成してないような気がするんですが、新曲、ここで無理やりやらせていただきます」と、その曲を披露。これが脳内に広大なイメージが拡がっていくようなサイケデリック・ソウルで、田島のクリエイティヴィティのスケールの大きさを見るかのようだった。さらに「続けて新しい曲」と言って、「ソングライン」を演奏。昨年のデビュー30周年記念日に動画のみで発表されたこの歌はジャズファンク調のナンバーで、近年のひとつの傾向である「人生讃歌」的な歌詞と田島のジャジーなスキャットが印象的だ。

そしてTENDREとのセッションはここにも用意されていた。「朝日のあたる道」のイントロの快活なドラミングが響く中、「スペシャルゲスト、紹介しましょう。TENDREから河原太朗!」と田島。河原はキーボードを弾きながら、曲の1番は田島、2番は河原がメインで唄い、サビでは両者が揃って歌唱する構成だった。会心の演奏が終わりに近づき、TENDREが高い声で「オジキありがとう!」と叫ぶと、田島もハイトーンで「ありがとう!」。さらに田島が「ムーンウォーク! ムーンウォーク!」とコールすると、それに応えて河原が脚を動かし、リズムに乗りながら去っていった。最高にいい雰囲気だ。

ライブも後半に差しかかり、オリジナル・ラブの怒涛の演奏はいよいよ熱量を増していった。「時差を駆ける想い」のグルーヴィーなプレイと、田島がまたも叫ぶスキャットの嵐。強力なソウルバラード「Love Song」ではファルセットボイスと高音シャウトが爆発し、濃密なスウィート成分がドクドクあふれ出す。狂おしく叫び、激しくうねった田島は、最後は「ソウル! パワー!」と何度も咆哮して、曲を終えた。

続く「Two Vibrations」ではその場が華麗なダンス天国と化し、途中からはバンドによるオールドスクールなファンク攻撃がくり広げられた。そのソリッドな演奏は全盛期のジェームス・ブラウン(通称JB)を彷彿とさせるもの。間奏で田島が見せた小刻みなステップ、クライマックスで彼が「7タイムス!」「15回!」「20回!」と次々に要求するキメの回数を全員で合わせるジャムも完全にJBスタイルだ。JBには「Soul Power」という名曲があり、オリジナル・ラブの去年の30周年記念ツアーのタイトルは「Don’t Forget Your Soul Power」だったことを思い出す。

リズムボックスが鳴るイントロからなだれ込んだ「The Rover」はここまで継続されたグルーヴをさらに加熱させ、客席は沸騰しっぱなし。田島は歌も、それにギターソロもとにかく激しい。そして彼がギターをファイヤーバードに持ち替えたラストナンバー「R&R」は、まさに爆走するロックンロールだった。木暮がギターを弾きながら「ガッタ! ガッタ!」と煽り、そのそばで田島も煽る。終盤では田島がTENDREの全員をひとりずつ呼び込み、ここで2バンドが完全に合体した状態になった。
「今年も引き続き、コロナに負けないで、ソウルパワーで頑張っていきましょう、よろしくお願いします!」
ステージ上は怒涛のジャムセッションに突入し、さらに轟音に。田島は歌詞の「バーニングマシンガン!」を連呼。ひたすら熱いパフォーマンスはそのままエンディングへとつながった。オリジナル・ラブとTENDRE、合わせて12名は笑顔とともに舞台から去る。最後に響いたのは田島の「ありがとうございました! 気をつけて帰ってね。ありがとう!」という声だった。

田島と河原がお互いをリスペクトする思いとともに、本当にあたたかく、そして熱いソウルが感じられた夜だった。オリジナル・ラブの初期の傑作『風の歌を聴け』(1994年)からの曲が多めなのは昨年後半からの傾向で、おそらくはそのリリース時のリズムセクションである佐野と小松の存在が大きく、このことがひたすらグルーヴし、高まっていく演奏に直結している。
さらに感じたのは、その90年代当時から現在まで、田島はオリジナル・ラブの音楽性をひたすら煮詰めてきたという事実だ。この道中では時代の音に接近したことも、ルーツに翻ったこともある。そして今は集積されたさまざまな要素がオリジナル・ラブの音楽の中で発酵し、より濃ゆい音になっているのだろう。

30周年を迎えたオリジナル・ラブ、そして田島貴男。しかしそのソウル・パワーは熟成を見せながら、決して落ち着くのではなく、より加熱している。つねに刺激を求め、変化し、つねに動き続ける。それは彼の生き方のようでもある。そして、だからこそそのソウルは多くの人々のハートを惹きつけ、新しい世代にまで訴求し続けているのだろう。

SET LIST

TENDRE

01. LIFE
02. SIGN
03. PARADISE
04. Night & Day
05. DOCUMENT
06. It's a Wonderful World (with 田島貴男)
07. hanashi
08. RIDE

Original Love

01. フランケンシュタイン
02. Xの絵画
03. エナジーサプライ
04. I WISH
05. 新曲
06. ソングライン
07. 朝日のあたる道 (with TENDRE)
08. 時差を駆ける想い
09. LOVE SONG
10. Two Vibrations
11. The Rover
12. R&R (Original Love X TENDRE)

公演情報

DISK GARAGE公演

田島貴男「弾き語りツアー2022」

2022年2月12日(土) ペニーレーン24・札幌
2022年2月13日(日) 名古屋クラブクアトロ・愛知
2022年2月23日(水・祝) 新潟 りゅーとぴあ能楽堂・新潟
2022年3月6日(日) LiveHouse浜松 窓枠・静岡
2022年3月13日(日) 福岡ドラムロゴス・福岡
2022年3月18日(金) 梅田クラブクアトロ・大阪
2022年3月20日(日) 広島クラブクアトロ・広島
2022年4月10日(日) 東京国際フォーラム ホールC・東京

チケット一般発売日:2022年2月19日(土)

  • 青木 優

    取材・文

    青木 優

    • ツイッター
    • Facebook

SHARE

オリジナル・ラブの関連記事

アーティストページへ

最新記事

もっと見る