「神宿 Summer Trip 2021:YOU ARE KAMIYADO」
2021年8月13日(金) Zepp Tokyo
原宿発の5人組アイドルユニット・神宿が、8月13日(金)に東京・ZEPP TOKYOでアリーナライブに向けた旅と題した、「神宿Summer Trip 2021:YOU ARE KAMIYADO」の東京公演を開催した。
今年9月26日(日)にキャリア史上最大規模となる、ぴあアリーナMMでの結成7周年記念ライブを控える神宿は、7月17日(土)の神戸を皮切りに、特典会とライブを組み合わせて全国15箇所を回る本ツアーをスタートさせた。夏休みの最終日である8月31日(火)に大阪でファイナルを迎えるため詳細は触れずにおくが、8月25日(水)にフィジカルリリースされる通算5枚目となるフルアルバム『THE LIFE OF GIRLS』の収録曲を中心に、昨年、パシフィコ横浜で行われた6周年記念ライブを締めくくった「Summer Dream」で始めたセットリストは、神宿の過去〜現在〜未来をつなぐ構成となっている。彼女たちが今、変化の真っ只中にいるんだということがひしひしと伝わってくる内容構成となっていた。
アリーナ公演を見越して初めてのヘッドセットでパフォーマンスした前半は、彼女たちがこれからどうしていきたいかという未来に向けた視点が込められていたように思う。2019年1月に緑担当の関口なほが勇退し、同年4月に新メンバーとして塩見きらが加入して2年。最年少メンバーで結成当時は14歳の中学1年生だった一ノ瀬みかも20代となり、黒髪ロングだったヘアスタイルは、オレンジやロングの刈り上げ(ツーブロック)を経て、金髪に変化。羽島めいも黒髪ロングからブルーを経て、金髪のショートとなり、メンバーの衣装も担当カラーがわかるお揃いの私服のような衣装から、それぞれの個性に合わせたスタイリッシュなカジュアルファッションへと変化している。
10代から20代へという年齢による変化もあるだろうし、この7年間で数多くのステージを経験してきたことで、表現の幅も広がった部分もあるだろう。R&Bのメロディにトロピカルハウスのサウンドを着せた「Brush!!」では、女性らしい腰を使ったセクシーなフリと、アイドルらしいキュートな両足ジャンプを融合させており、ギターリフが効いた最先端のダンスポップ「Caramel Sweet」は、女の子が憧れる女の子を体現したようなチャーミングなパフォーマンスに、めいのメロラップやみかのフェイクなど、音楽的な充実も満載。清竜人が提供した「グリズリーに襲われたら♡」、みんなでホイップをかき回しながらコミュニケーションを測った「CONVERSATION FANCY」、小山ひなのファルセットによるフェイクときらの<もう離さない>というセリフが印象的で、「神宿です」の挨拶に伴う二拍手がフィーチャーされたスイートなシンセポップ「FANTASTIC GIRL」、これまでにないダークで陰りのあるサウンドでひなが迫力のあるヴォーカルを響かせ、羽島みきが独白する「MAD GIRL」。これらは皆、耳馴染みのあるJ-POPらしいメロディに世界基準のサウンドメイク(特に低音の使い方!)が施された最新のダンスミュージックとなっており、初期の神宿しか知らない人が聴いたらきっと驚くはずであろう。USのヒットチャートやK-POPが好きな人には是非一度、聴いてもらいたいと思う。
メンバーが初めて作詞作曲を手がけたダンスポップで、観客全員が一緒に踊った「Trouble」を経て、ソロコーナーに突入。みきのバレエ、めいのラップ、作詞家としても才能を発揮しているきらのポエトリー。そして、可愛いルックスが見えない暗い照明の中で歌声だけで会場の空気を一変させたみかと、ボカロ曲のような難解で早いパッセージを軽やかに歌いこなすひな。この中盤ではメンバー個々の“現在”を示し、担当カラーの衣装をまとった後半では“過去”を見つめ直す姿勢を示した。めいのラップが炸裂するヘビーなミクスチャーロック「全身全霊ラプソディ」から玉屋2060%による提供曲を繋ぎ、拳が上がり、クラップが沸き起こった「お控えなすって神宿でござる」まで。この日、一番の盛り上がりを見せる中で、5人はステージ中央で空に輝く星を指差すように未来に視線を向けて本編を締めくくり、アンコールでは、リーダーのみきを中心に、サンバに合わせて、夢と希望とワガママの詰まったエールを舁夫さん(ファンの総称)に送った。
MCではライブ中に「本気で今を生きてる奴ら、心が燃えたぎってる奴らが集まっているんだよな?」と煽っていためいは、アンコール後に「2021年の夏は私たちにとって大事な宝物になりました」と感謝の気持ちを伝え、「神宿の存在をもっと知ってほしい」とアピール。みきが「次はアリーナで会おうね」と呼びかけると、めいは頷きながら「私たちの旅はまだまだ続きます。またお会いできる日を楽しみにしています」と再会の約束をしてステージを後にした。
次はアリーナだ。変化に否定的な方もいるかもしれないが、成長や進化のためには、きっと必要なことだ。「褒めろ!」と言われたら、素直に褒めたい。アイドルシーンを席巻した第1期を終えて、彼女たちは今、作詞や作曲、ダンスのフリや動画配信など、自分たち発信でクリエイトしていく姿勢を示している。失ったり、間違ったりするリスクや不安を恐れずに、夢見た未来に向かって、自分たちを信じて前へ前へと突き進んでいく彼女たちを応援したい。