ぜんぶ君のせいだ。47都道府県ツアー「re:voke tour for 47」Day51 Final
2021年3月27日(土)LIQUIDROOM
新たなツアーの発表を聞いた瞬間、思わずマスクから驚きを越えた笑い声が漏れそうになってしまった。3月27日(土)に東京・恵比寿LIQUIDROOMにて、47都道府県ツアー「re:voke tour for 47」のファイナルを迎えた<ぜんぶ君のせいだ。>。昨年夏の活動休止とメンバーの脱退と加入を経て、同年11月3日(火・祝)の東京・Zepp DiverCity公演を皮切りに、ねち、ふふ、かさねを迎えた5人でツアーを開始。年明けには、2021年1月2日にグループを解散した<ゆくえしれずつれづれ>のメイと个喆が加入し、7人体制となった彼女たちは、通算51本目となる本公演のアンコールで、5月5日より半年間に及ぶ47都道府県ツアー「Sicutie & Stupid Tour 2021」を開催することを発表した。常に精力的なライブ活動をしてきた彼女たちであるが、まさか終わってすぐに2周目に入るとは想像してなかった観客からは、声を出せない変わりに大きな拍手が沸き起こった。そこには、この7人による“ぜん君。”をもっと見たいという気持ちが込められていたように思う。
新体制となってまだ3ヶ月足らずではあるが、ライブを重ねるにつれて、それぞれの個性が輝く場面が増えてきたように感じていた。この日は、今年2月17日にリリースされた12枚目のシングルで、7 人体制となって初の新曲「堕堕」でライブをスタートさせたが、オープニングでセンターに位置したねちの佇まいには堂々としたものがあり、前3人、後4人から7人の円となり、おやつを中心とした横一列になるなど、フォーメーションも多彩に変化。さらに、メイ、ねち、めぐみ、かさね、こてつと5人がデスヴォイスを駆使し、フロアの熱気をあげた。その中でも、バンドの爆音を切り裂くようなメイのデスヴォイスと攻撃的なパフォーマンスは、ライブハウスで戦う彼女たちの大きな武器となるだろう。
メンバーがステージ上を所狭しと動き回り、オーディエンスは手を挙げて応戦した「メスゲノムフェノメノン」では、ぶりっ子ポーズでジャンプするねちが目立っていた。彼女は初見の観客も惹きつけるチャーミングさがある。続く、「痛カルマバ◯ス」は、グループの屋台骨でもあるめぐみと、抜群のピッチ感を持つかさねが肩を抱き合ってエモーショナルに熱唱。笑顔でうずくまるふふとめぐみの上をメンバー飛び越えていく「オルタナティブメランコリー」では、後ろ向きになったメンバーが一人ずつ振り向いて歌い継いでいく場面もあり、それぞれの歌声の個性がわかる構成となっていた。また、こてつがセンターに位置してフロアにクラップを煽った「みすふぃっとらゔぁーず」ではふふとおやつが肩を組んで歌うなど、歌い分けや組み合わせによる新たな魅力も2021年ヴァージョンとなった各曲で感じることができた。
7人の個性がバラバラだから、目と耳が忙しく、一瞬たりとも飽きることがない。シリアスに歌って聴かせる「インソムニア」からは、さらにステージを立体的に使っていた。まず、こてつの元に全員が集合して手を重ね、ハイキックをお見舞い。やがて、めぐみを中心に前後で2:1:4というフォーメーションを組み、彼女のソロパートでは、前の二人が座り、後ろの5人は立ったままでパフォーマンス。全員で虚空に手を掲げ、なんとも言えない深い余韻を残すものとなっていた。「革鳴前夜」では、花道で歌うめぐみの元に、おやつとかさねが加わり、他の4人はステージで歌唱。目に涙をため、感極まるめぐみにこてつがそっと手を差し伸べる感動的なシーンもあった。「WORLD END CRISIS」では、めぐみがねちの背中をそっと押して花道へと誘い、デスヴォイスで繰り出すメイに、かさねとねち、さらにめぐみとこてつも加わり、まるでバトルのような様相を見せた。キュートなフリのある「君想ゐ花散りぬ」は横に2:3:2に分かれつつも、各グループは密着してパフォーマンス。めぐみとこてつが君との約束を交わし、ねちをセンターに、戦隊ヒーローのようなポーズを決める「AntiIyours」から、7人全員で<君が絞り出す声や>と歌う「Cult Scream」では、心がグッと揺らされる思いがした。バンドはラウドで重厚なサウンドを鳴らし、メンバーもオーデェンスもジャンプしながら盛り上がっている中ではあったが、彼女たちのファンへの思いが真っ直ぐに伝わってきて、涙が出そうになった。
メイが「ブチ上がれ!」と煽った「Sophomore Sick Sacrifice」、7人が1つとなって踊った「わがまま新生Hominina」、キミの世界に私はいないんだよね? と不安がるメンバーに、おやつが「いるよ〜!」と元気に明るく答えた「キミ君シンドロームX」を経て、ライブはいよいよ終盤戦へ。こてつを先頭に行進する「やみかわぐんぐんか」では、めぐみの提案で急遽、7人が肩を組んで歌い、「僕喰賜君ノ全ヲ」では全員で手をあげて、キミのために変わりたいと決意を表明。「ロマンスセクト」や「せきららららいおっと」は、会場に集まったオーディエンスはもちろん、(チケット即完のために配信決定した)画面越しの一人一人と目を合わせるかのように歌い、ただ君のためを想ってるというメッセージを込めた「唯君論.」を笑顔で歌い継ぎ、こてつとメイが二人で大きなハートを作って本編の幕は閉じた。
全19曲をほぼノンストップでパフォーマンスした彼女たちは、アンコールを求めるクラップに応えて再びステージに上がると、めぐみはマイクを通さずに「アンコール、ありがとうございます!」と大声で挨拶。47都道府県ツアーを無事に完走したことを報告したあと、ねちが「ステージに立ったこともない自分がステージに立って、本当に楽しくて、本当に悔しくて。このツアー。ファイナルまでに絶対に見直させると思ってずっと走ってきて。各地で患いさんやLIVEハウスの皆さん・プロモーターさんたちが温かく迎えてくれて、みなさんがいるから、今、ここに7人で立てて、幸せです。ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えた。ふふは「すごく大事なものに出会えたツアーです。このツアーが終わってしまうけど、雫ふふとしての物語は始まったばかりなので、これからもよろしくお願いします」と語り、かさねは涙を堪えながら、「自分の人生の中でぜん君。に入って、今までみんなで頑張ってきたことが、一番の自慢だし、誇りって言えます」と胸を張って伝えた。
途中からツアーに参加したこてつは、「今までは闘争心とか、争う心とかあんまりなかったけど、ぜん君。にきて、ツアーをやって、闘争心が芽生えたし、みんなでぶつかり合う心にもなれて、自分的にも成長できたと思う」とコメント。同じくメイも「ぜんぶ君のせいだ。とメンバー、患いさんたちをすごく好きになれた2か月半でした。今日はツアーファイナルだけど、まだまだ始まりの日だと思ってます」と決意。加入2年にして2番目に先輩のメンバーとなったおやつは、脱退や新メンバーの加入を聞かされた際に「ぜん君。が好きで、患いさんが好きで、おやつはおやつでいることを選んで本当によかったなと思えたツアーでした」と本音を吐露し、「これからも一緒に夢を追いかけてください」と呼びかけた。最後に2015年5月の結成時からの唯一のメンバーであるめぐみは、活休明けの状況を振り返り、「今、ここにみなさんがいること、見てくれている人がいること、愛されることは本当に奇跡だなと思います。みんながいなかったら、ここには本当に立てていません。辛かったし、大変だった時期があったからこそ、今、このメンバーと会えて、ライブができることがとても幸せです」と素直な気持ちを述べながら深々とお辞儀をすると、フロアには温かい拍手が広がった。
47都道府県ツアーの開催の発表を経て、めぐみの「まだ満足してないよね? まだ一緒に遊べますか?」という呼びかけに応え、「When you 2 WANT」ではオーディエンスはこぶしをあげて盛り上がり、おやつとこてつ、めぐみとメイは抱き合って歌唱。続く「ぜんぶ僕のせいだ。」では何度でも立ち上がる強い姿勢を表現し、めぐみとおやつ、新メンバーの5人に分かれて歌った「独唱無題」は、まるでメンバー間で会話をするかのようにアイコンタクトを取りながら歌い、「無題合唱」は、ふふ、かさね、おやつ、ねちが、同じ<どうして?>というフレーズにそれぞれの激情を込め、まもなくライブが終わるという寂しさでいっぱいになりながら全員で床に崩れ落ちた。最後にめぐみが「ぜんぶ君のせいだ。は止まりません。この先もどんどん進んでいきます。一緒にたくさん笑って、泣いて、最終的に武道館で遊んで、ツアーもたくさん回って、本当に楽しかった! っていう、その時まできみがずっといてくれるように、私たちもがんばります!」と叫んで締めくくった。4ヶ月に渡った47都道府県ツアーのファイナルであると同時に、新たな47都道府県ツアーの初日へと一歩を踏み出したライブ。新メンバーたちが口々に「これから」と言っていたように、7人のぜん君。は未来に向けて、今、走り出したばかりだ。
SET LIST
01. 堕堕
02. メスゲノムフェノメノン
03. 痛カルマバ◯ス
04. オルタナティブメランコリー
05. みすふぃっとらゔぁーず
06. インソムニア
07. 革鳴前夜
08. WORLD END CRISIS
09. 君想ゐ花散りぬ
10. AntiIyours
11. Cult Scream
12. Sophomore Sick Sacrifice
13. わがまま新生Hominina
14. キミ君シンドロームX
15. やみかわぐんぐんか
16. 僕喰賜君ノ全ヲ
17. ロマンスセクト
18. せきららららいおっと
19. 唯君論.
ENCORE
01. When you 2 WANT
02. ぜんぶ僕のせいだ。
03. 独唱無題
04. 無題合唱